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無料か有料か、中高生のインターネット利用事情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 間もなく日本にも展開するアレも基本料金は無料だが……

子供達の間にも確実に普及しつつあるスマートフォン。インターネットの利用機会を別次元のレベルで押し広めたが、多様な機能をもたらすアプリケーションやウェブサービスには、無料で使えるもの以外に対価が求められるものがある。子供達はネットの利用でどこまで対価を支払っているのだろうか。金融広報中央委員会「知るぽると」が5年おきに実施している、小学生から高校生を対象にした金銭に係わる様々な問題への調査「子どものくらしとお金に関する調査」(2015年12月から2016年3月にかけて、小中高生に対して学校を通して調査票による無記名自記式の記述方式で実施。有効回答数は小学生1万6329件、中学生1万3131件、高校生2万0689件。地域分散済み)の調査公開結果をもとに、その実情を確認していく。

昨今ではデジタルコンテンツを中心に、無料で利用できるスタイルのものが増えたため、その環境に慣れてしまい、特に若年層において物理的存在で無いもの、目に見えないものに対価を支払うことを嫌う、無料が当たり前であるとし、創り手の労力を無視する、ないがしろにする傾向が強くなっているとの指摘がある。その実情が分かるのが今回スポットライトを当てる項目。

インターネットで利用できる各サービスに関して、無料で使っているか有料で利用しているかを聞いた結果(小学生には設問自身が無い)。該当サービスを利用していない人は当然無料・有料の区別のしようがないため、利用率が把握できるグラフと、有料・無料の仕切り分けを認識できている人に限定した利用実態を再計算したグラフを併記する。

まずは中学生。

↑ インターネットの利用目的(中学生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)
↑ インターネットの利用目的(中学生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)
↑ インターネットの利用目的(中学生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)(各サービス利用者限定、「分からない」を除いて再計算)
↑ インターネットの利用目的(中学生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)(各サービス利用者限定、「分からない」を除いて再計算)

これらの回答はあくまでも回答者の認識によるものであることに留意しなければならない。中には思い違いによるものと見られる回答もある。例えば「調べものをする」は検索エンジンの利用ならば原則無料であるが、何か勘違いして有料と回答した人も少数確認できる。「ツイートする」も明確回答者内で3.7%が有料のみ利用、21.6%が無料・有料双方との結果が出ているが、ツイッターの利用は無料で行えるため、首を傾げてしまう。一部有料のクライアントアプリが出ているのでそれを使っており、その点で有料と判断したのか、あるいは広告が出ているのを覚えておりそれで有料と考えたのかもしれない。

ともあれ、サービス利用者の大部分は無料で利用していることに違いは無い。課金をしないと閲覧できないものもある映画や動画、音楽、小説などの芸術系コンテンツ、有料サービスや課金によるアイテム取得のケースがあるゲーム、恐らくは購入時の支払いを有料利用と認識して回答したオークションの参加では有料のみ・無料と有料双方の回答率がそれなりにあるが、それでも5割を超えることがない。

高校生でも状況はさほど変わらない。

↑ インターネットの利用目的(高校生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)
↑ インターネットの利用目的(高校生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)
↑ インターネットの利用目的(高校生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)(各サービス利用者限定、「分からない」を除いて再計算)
↑ インターネットの利用目的(高校生)(インターネット利用者限定、複数回答、2015年)(利用料金別)(各サービス利用者限定、「分からない」を除いて再計算)

コミュニケーションを多用するため「電話をする」はやや有料利用が多くなるが、それ以外は大よそ無料の利用率が中学生よりも高くなる。誤認回答が少なくなっているのだろう。また、数少ない例外として「ネットショッピング」では有料利用率が中学生よりも高いが、これは閲覧のみで終えたり冷やかしの利用では無く、実際に商品のやりとりをするケースが高校生では多いと見れば納得はできる。

インターネットでは多彩な機能を無料で取り扱えることから「サービスは無料が当たり前で自分達の権利」「有料は許し難い暴挙である」と刷りこまれていると考えられる事例が増えている。インターネットの普及浸透は間違いなく創作者にとってはプラスではあるが、対価の点ではマイナスに働いている可能性は高い。

たとえ物理的なモノが目の前に無くとも、デジタルによる情報の集合体であっても、それを創るのには多くの人の労力が注ぎ込まれており、空から降ってきたものでは無く、相応の対価が必要になることを、改めて啓蒙する必要性があるのかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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