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高齢層は何歳まで対価のある就業を望んでいるのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 定年・早期退職した後に顧問や嘱託の形で再雇用される事も増えている

「働ける限りずっと働きたい」は3割

年金受給歳の引上げや健康状態の改善、労働市場の変化に伴い、定年年齢の延長や退職後の再雇用など、高齢者の対価就業が盛ん。高齢者自身は何歳まで収入を伴う仕事をしたいと考えているか。内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年12月4日から26日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた国内に住む60歳以上の男女に対して実施)の結果を元に、確認していく。

次のグラフは、その調査対象母集団に「何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか」と尋ねた結果。「働ける限り」が最多回答となり、男女とも3割近い結果が出た。なお「収入を伴う」とは一般的な就労を意味し、ボランティア活動や地域活動などの無報酬労働、交通費程度の必要経費のみの支払いが成される就業は該当しない。あくまでも対価を得るのを目的とした仕事に限定されている。

↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)
↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)

「働ける限り」が具体的にどのような状況を意味するかは設問には無い。回答者の解釈次第となる。雇用する側が許容する限り、回答者自身の肉体に無理を感じない限り、自分の現状で働ける場所においてコストパフォーマンス的に容認できる限り(例えば時給1000円・一日3時間労働でも職場と自宅の往復にタクシー移動が必要となり、その交通費が自腹で毎日3000円かかったのでは、事実上タダ働きとなる)、色々と状況は想定できる。とはいえ、就労意欲が旺盛なことに違いはない。

「可能な限り」以外では65歳から70歳がボリュームゾーンとなるが、一方で「したくない(望まない)」「分からない」との回答も多い。定年退職の年齢以降は、再就職はしたくない、しても数年で終えたいとの意見も多い。

男女別では男性の方が就労意欲は強い。具体的な年齢区分ではほぼ男性の方が回答率が高く、「したくない」「分からない」では女性の方が多い。もっともこれは家事を任される・する必要があるなどの都合も影響していると考えれば道理が通る。

年齢別と今の仕事別で見てみると

続いていくつかの属性に区分した上で、回答の違いを確認していく。まずは回答者の年齢だが、同じ高齢者でも現時点の年齢で、大きな違いが生じている。

↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)(年齢別)
↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)(年齢別)

「働ける限り」がどの年齢でも最多回答に違いない。他方、年齢がかさむに連れて回答率が減っているのは、自身の現状を認識しての結果だと考えられる。ただし逆の動きを示すのが「したくない」ではなく「分からない」「無回答」なので、気力の問題では無く体力や雇用する側の事情で就業できないかもしれないとの発想が優先されているようだ。

具体的な年齢区分では60~64歳時点では「65歳」がもっとも多く、65~69歳では「70歳」が最多回答。自分の現在の年齢からプラス数年位は働きたいが、最長でも5年以内に留めたいとの思惑が見て取れる。

↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)(就業形態別)
↑ 何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいか(2014年)(就業形態別)

現在の就業(収入を得られる仕事)形態別では明確な違いが出ている。農林漁業や自営業など、回答者自身の力量・状況で仕事を判断できる職種では、「働ける限り」の回答率が群を抜いて高い。年齢による定年が無いのが、これらの職種の特徴でもある。他方、勤め人では65歳・70歳といった区切りのある年齢までの就労を望む人が多い。ただし役員の場合は定年制が無いことが多く、(例えば非常勤などで)負担も軽いことから、特定された年齢は75歳がもっとも高い値を示し、「働ける限り」の回答率も大きめなものとなる。

もともと回答時点で仕事をしていない人は、働けるとしても65歳ぐらいまで、できれば働きたくない、あるいは分からないとの回答が多い。事情は人それぞれだが、すでにリタイアをしている人、せざるを得ない人が多く、その状況から仕事を手掛けたいとは思わないようだ。

生活費の補てん、安心感の底上げなど、(定年)退職後に新たな対価のある就業を求める高齢者は多い。雇用する側もそれを求めている事例も少なくない。実際、労働力調査などでも、高齢層の非正規における雇用人口が急増しているのが確認できる。

他方、マッチングの問題があるとはいえ、公的支援も含めて高齢層への就労需要・サポートへの注力が進むと、相対的に若年層への就業支援はおろそかになりかねない。将来性を考えれば、むしろ若年層への支援こそ優先順位は高い。バランスの良い対策を願いたいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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