老後に向けた引越し先は地方都市が一番人気
望みの地域は地方都市
居住地域の過疎化、自身の高齢化などに伴い、老後に向けて引越しをしたいと考えている人は、内閣府が2015年10月に発表した国土形成計画の推進に関する世論調査によると、大よそ2割存在する。
それらの人々はどのような場所への引越しを望んでいるのだろうか。一番人気の場所は地方都市部となった。大よそ5割強の人が望んでいる。
大都市部は14.0%のみ。自然が豊かだとのイメージがある農産漁村地域は2割。海外は1割にも満たない。男女別では女性の方が都市部への移住希望度が強く、合わせて約3/4。
世代別ではややぶれがあるが、大よそ歳を経るに連れて都市部への移住希望が強くなり、農山漁村への移住を拒むようになる。特に70歳以上は4割近くが大都市部を望んでおり、各種商業施設・公共機関利用を重視する観点で、便宜性の高い大都市部を望んでいる実態が見えてくる。
現在の居住地域別では「都市部」の区切りではあまり違いはないものの、東京都区部に現住している人は大都市部への移住を望む人が多い。今項目は現在住んでいる場所から移住を望む人に限った話なので、東京都区部のより人口密集地域や、例えば名古屋や大阪といった別の地域の大都市部への引越しを望んでいるのかもしれない。
ともあれ、老後に向けて引越しを考えている人の多くは、都市部、しかも単なる都市ではなく、地方都市への移住を望んでいることに違いは無い。それなりに便宜性が高い地域を希望するが、同時に完全な都心では無く、そこそこの自然も確保されているであろう地方都市を望んでいると考えれば良いのだろう。
自然環境と医療の両方が欲しい
利便性とそこそこの自然、その両立を求めているからこそ、地方都市を選ぶ。その心境は次の項目で具体的に確認できる。これは移住をしたいと考えている理由を選択肢の中から選んでもらったものだが、最上位には気候や自然環境に恵まれた場所、次点として医療・介護環境が整備されたところ、そして買い物などの利便性の高いところが上位に入っている。
心身共に安らぎを得られるであろう自然環境の良いところであると同時に、医療関連でも不安の無い、さらに買い物などの便宜性でも心配しなくて済む場所。前項目の選択肢の中では地方都市がもっとも当てはまるイメージがある。
男女別動向を見ると、男性と女性の老後に対する意気込み、心構えの違いが透けて見える。男性は気候・自然、治安、買い物などの便宜性、病院医療の順だが、女性は病院医療、気候・自然、買い物、そして家族や親せきがそばにいる。男性は個人ベースでの楽しみが優先され、女性は実用的な面での便宜性や、他人との交流をメインに据えている感はある。特に病院医療や買い物などの便宜性、そして家族などとの距離関係で、男女の差異が大きく出ており、「老後」の生活に対するイメージの違いがよく分かる結果となっている。
「現在の」居住地域別では現状の生活に対する不安が反映される形となっている。
東京都区部に現在住んでいる人は、特に気候や自然に恵まれた場所、物価や家賃などの生計費が安いところ、治安の良さ、新しい人間環境の構築、地域貢献活動の値が、他地域よりも高い。逆に考えれば現在住んでいる場所、すなわち東京都区部では、これらの項目に関してあまり満足していないことがうかがえる。
他方、地方に至るにつれて、自然環境や生計費の安さへの注力は減り、利便性の高さや医療設備の充実をより一層望むようになる。現状では満足のいくサービスが得られないであろうことを想像しての結果だろう。
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