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なぜ非正規社員として働くのか、その理由とは

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 就業スタイルは多種多様。非正規を選ぶその理由は?

「正規はダメ、仕方なく非正規」男性3割近く・女性1割強

就業状態の一様式「非正規社員」については、労働条件の格差問題の中心要素としてしばしば話題に取り上げられる。他方、論争のネタとして悪用され、事実を伝えていないとの話もある。非正規社員自身に、その立場にいる理由について、総務省統計局の労働力調査から実情を確認していく。

直近2014年においては非正規社員は1962万人。これは前年比で56万人の増加。雇用者全体に占める比率は25.7%と、こちらは0.3%ポイントの上昇。この非正規雇用の人達に、なぜ現職についているのか、その主な理由を聞いた結果が次の図。男女それぞれの回答者に占める比率と、回答実数をそれぞれグラフ化する。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(万人)(積み上げ型)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(万人)(積み上げ型)

比率では男性は「正社員としての仕事が無い」がもっとも多い。「正規雇用の椅子が減らされ、その分非正規雇用の椅子が増やされる。非正規の椅子に座らざるを得なくなる」との指摘は、男性では3割近くが同意を示すことになる。そして「自分の都合の良い時間に働きたい」「専門的な技術などを活かせる」「家計の補助・学費などを得たい」とするポジティブ、自発的な意見が続く。

女性は「自分の都合の良い時間に働きたい」がもっとも多く、ほぼ同率で「家計の補助・学費などを得たい」が並ぶ。いずれも兼業主婦のパート・アルバイトでよくありがちなパターン。男性で最上位についた、ネガティブな理由「正社員としての仕事が無い」は1割強に留まる。

人数別に見ると合計では、女性と男性とを比較すると女性の方が非正規社員は多いことから、「自分の都合の良い時間に働きたい」が最上位に、次いで「家計の補助・学費などを得たい」が続き、「正社員としての仕事が無い」は3番目の理由に落ち着く。ちなみに「正社員としての仕事が無い」は合計で331万人となるが、これは非正規社員全体(1962万人)の16.9%に留まる。

世代別に見ると……!?

続いて計算を行うのは、回答者の世代別動向。

↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)(男性、世代別)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)(男性、世代別)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)(女性、世代別)
↑ 現職の雇用形態についた主な理由(非正規職員・従業員)(2014年)(理由明確者限定)(女性、世代別)

男性の「家計のサポート」「時間の都合」が若年層と高齢層、「正規が無い」が中堅層に多いのは興味深い。「専門技能を活かせる」はやはり歳を経るごとに多くなる。

女性は逆に若年層ほど「正規が無い」が多い。「育児や介護との両立」も同様。昨今急増しているシニア層の女性非正規社員は多分に「時間の都合がよい」「家計の補助」がメインであることが分かる。また女性も男性同様、中堅層は「正規が無い」がいくぶん多めなのが特徴的。あるいは中途採用、再雇用の面で正規採用が難しいのかもしれない。

「正社員になりたいけれどなれなかったので」が全員では無い

労働力調査において今件項目は2013年分から新設されている。社会の実情を受けてのものだろう。少なくとも現状においては、「非正規社員の男性3割近く、女性1割強は『正社員になりたかったがなれず、仕方なく』非正規社員として働いている」との現状は、認識しておくべき。

一方で「正規の職員・従業員の仕事が無い」とする理由については、単に「正社員としての受け皿が少ない」と判断するのは早急。完全失業者などの失業理由でも、雇用する側とのミスマッチが指摘されている以上、非正規社員の「正社員の仕事が無い」とする意見においても、類似の傾向があるものと考えた方が道理は通る。

また昨今では中高齢層が退職後に再雇用制度の適用で非正規社員として再雇用される事例が増えており、これが正規雇用の場が増えない一因としても挙げられる(駐車場に長時間止まっていた車両が一度出たかと思いきや再びその場に戻り、スペースが空かないようなもの)。

本当に「正社員としての受け皿縮小が、正社員を望んでいた非正規社員の増加につながっている」のか否か、そして事実ならばどれ程までに影響を及ぼしているのか、今後複数の視点から検証する必要があろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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