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歳と共に増える持ち家率と公営住宅住まい率…世代別住宅種類の現状

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 実は歳を経ると公営住宅住まい率は増えていく

歳を取るにつれて蓄財が成され、世帯持ちとなる事例も増え、そして遺産相続を受ける場面も生じ、持ち家に住む人は増えてくる。他方、定年退職後の世帯では定年離婚の事例や配偶者に先立たれるパターンなどで、賃貸集合住宅に引越して独り暮らしとなる場合も少なくない。今回は総務省統計局が2014年7月に発表した最新の住宅・土地統計調査の速報集計結果などから、家計主の世代別・居住住宅の種類について確認していく。

日本全体では持ち家率は約6割。これは30年ほど変化が無く継続している。

↑ 世帯の種類、所有の関係別普通世帯数(1978-2013年、住宅・土地統計調査)(割合)
↑ 世帯の種類、所有の関係別普通世帯数(1978-2013年、住宅・土地統計調査)(割合)

家計主(世帯の家計を主に支える者。単身世帯も含む)の世代別では、歳を経るほど持ち家率は増える傾向にある。理由は冒頭で触れた通り、取得できる機会や財力が経年的に増えるから。

↑ 家計主の世代別、持ち家世帯率(割合)(2013年、住宅・土地統計調査)
↑ 家計主の世代別、持ち家世帯率(割合)(2013年、住宅・土地統計調査)

それでは「持ち家」以外では、世代別でどのような住宅に住んでいるのだろうか。「借家」の部分を少し細かく分類したのが次のグラフ。

↑ 家計主の年齢階級、所有の関係別普通世帯数比率(2013年、住宅・土地統計調査)
↑ 家計主の年齢階級、所有の関係別普通世帯数比率(2013年、住宅・土地統計調査)
↑ 家計主の年齢階級、所有の関係別普通世帯数比率(2008年→2013年の変移)
↑ 家計主の年齢階級、所有の関係別普通世帯数比率(2008年→2013年の変移)

前回調査結果との差異を算出すると、中堅層で「持ち家」などの比率が減り、全世代、なかでも中堅層で「民間借家・非木造」の比率が増加している。民間賃貸住宅への需要が増加していると考えられる。

「持ち家・その他」の「その他」は「同居・住宅以外の建物に居住する世帯」を指している。これは「会社や学校などの寮や寄宿舎」「一時滞在者のための旅館・宿泊所」「臨時応急的に建設された建物で、住宅に改造されていないもの」が該当する。

「持ち家・その他」が歳と共に増加するのは前述の通りだが、「給与住宅」(社宅)の20代における利用率が1割近くと高めなのが目に留まる。一般賃貸住宅市場と比べれば格安の社宅は、手取りが少ない若年勤労層には有りがたい存在であるのが分かる。もっとも最近では社宅そのものを持たない企業も増えており、使いたくても使えないとの事例も多分に考えられる。

もう一点注目したいのは「公営借家」「UR・公社借家」の動き。「公営借家」の定義は”都道府県、市区町村が所有又は管理する賃貸住宅で、「給与住宅」でないもの。いわゆる「県営住宅」、「市営住宅」などと呼ばれているものがこれに当たる”とある。そして「UR・公社借家」とは「UR賃貸住宅」「公社住宅」「公団」などの住宅。後者は1%強程度でほぼ横ばいの動き、そして前者は歳と共に増加する傾向を見せている。

実際、全公営借家194.7万世帯のうち、65歳以上の高齢者がいる主世帯は92.3万世帯で、実に47.4%。公営借家の2世帯に1世帯近くが「定年退職を迎えている高齢者がいる世帯」との計算になる。そしてその少なからぬ世帯(47.7万世帯、全公営借家の24.5%)は高齢者による一人住まい(「「お年寄りがいる家」のうち1/4強・552万世帯は「一人きり」」)となる。この高齢者における住宅の特殊事情の話は、別の機会に詳しく解説する。

「買物困難者」や「電力需給問題に端を発する、冷暖房と高齢者の健康問題」など、今後増加が予想される事案は、多分に公営借家が高リスクとなる。このことに改めて留意しておかねばなるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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