Yahoo!ニュース

残業を減らす方法とその実行度

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 上司が残っているので帰れない事例も多い。上司が率先して定時帰社すればとの話も

残業を減らすのに効果的な取り組みは? そしてどれだけ…

日本ではとかく残業を美化する傾向にある(「残業が多い人ほど「上司は残業を評価してくれる」と思っている」)。しかし法令上の問題はもちろん、効率上、そしてライフバランスの問題でも、職務が定時の就業時間内に終了した方が良いことは、誰にも疑うことの無い事実である。また長時間労働の日常化は就業者、企業の双方に多くのリスクをもたらすことになる。

それではどのような取り組みが、職場からの残業の削減には効果的だろうか。次以降のグラフは内閣府男女共同参画局が2013年12月に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」の結果を基にしたものだが、20歳から59歳の男女で就業者(被雇用者)から成る調査対象母集団においては、「残業削減に有効だ」ともっとも多くの人に思われている取り組みは「計画的な残業禁止日の設定」だった。28.8%の人が同意を示している。

↑ 残業削減に効果的だと思う取り組みは/その取り組みは実際に行われていると感じるか
↑ 残業削減に効果的だと思う取り組みは/その取り組みは実際に行われていると感じるか

残業がなぜ起きるのかを考えると、「職務の多さ」「関係他部門や顧客との時間調整の失敗」「アクシデントの発生」「周囲が残業しているので定時に帰りづらい」「残業代稼ぎ」など、多種多様な理由が想定される。仮に「残業禁止日」を設定しても、多くの場合はそれ以外の日に職務が振り分けられて余計に残業時間が伸びてしまうものだが、そうだと分かっていても半ば強制的に禁止日を設けない限り、残業を無くすことは出来ない状況下に多分にあることを、今件は示唆している。

次いで「上司からの声掛け」「短時間で質の高い仕事の評価」「担当不在でも他の人が仕事を代替できる体制」が続く。具体的に各職場に導入する際には臨機応変な対応、微調整が必要になるが、確かに残業を減らすことにはプラスとなりそうだ。特に後者2つは、「職務の多さ」そのものを減らす可能性を秘めており、「残業が無い日が設けられても、他の日の残業が余計に増える」という不毛な結果を導かなくても済むようになる。

一方、それらの取り組みが自分の職場で実行されているか否かでは、あまり芳しくない結果が出ている。「計画的な残業禁止日の設定」は効果的だとの回答率に対して7割程度、「上司からの声掛け」は6割強が実際に行われているとの回答だが、その他は「入退時間のシステム管理と警告」が比較的高い実行率で、他は押し並べて「有効だ」とする回答率に対し1割から2割程度に留まっている。

残業削減施策に対する「地団駄」度

これについて「有効な取り組み」から「実導入」の値を引いた、「残業削減には有効な手立てのようだが、自分の職場では導入されていない」人の割合を算出したのが次のグラフ。いわば「地団駄踏まれている度の高低」を示したもの。

↑ 残業削減に効果的だと思う取り組みに対する、その取り組みの実行「されてない度」
↑ 残業削減に効果的だと思う取り組みに対する、その取り組みの実行「されてない度」

最高値を示したのは「短時間で質の高い仕事の評価」。調査対象母集団の22.8%が「職場が短時間で質の高い仕事を高く評価してくれれば、残業を減らすことができるはず。しかしうちの職場では評価されない」と苦い思いをしていることになる。他には「担当不在でも他の人が仕事を代替できる体制」「業務時間外会議の禁止」「部下の長時間労働を減らした上司を評価する仕組み」「長時間労働をさせた上司への罰則・ペナルティ」「会議の時間や回数制限」などが高い値を示している。いずれも改めて見聞きすると「効果的なのはわかっていても導入されていないな」とうなづける取り組みばかり。

これらの取り組みは職場環境次第で導入が事実上不可能、困難なものも多い。すべてを一度に適用するのは困難で、結果として会社の事業に悪い影響が及ぶようなら取り消しもありうる。しかし残業が賛美されるような職場が好ましいとは考えにくい。少しずつ、一つずつでも良いので、各職場で導入を検討してほしいものだ。

■関連記事:

残業を断るための5つの決めゼリフ

意外と多い? 少ない!? 時間外労働の状況

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事