コンビニの雑誌や本の売上はどれだけ落ちているのか
コンビニ全体で落ちる印刷物売上高
先日「客引きの役目を終えつつあるコンビニの雑誌たち」で、かつて雑誌や書籍などの印刷物が担っていた集客効果が減退し、従来のように客引きの役割を存分には果たせなくなった現状をお伝えした。雑誌そのものの勢いや社会環境整備における規制強化も一因だが、ともあれコンビニ全体における出版物の売上高は毎年確実に減りつつある。
コンビニでは店舗数が増えているにも関わらず、店舗全体の出版物売上高は減っている。当然の話だが、これは1店舗あたりの出版物売上高が減っているのが原因。コンビニの全商品の売上は順調に伸びているので、総売り上げに対する出版物の売り上げ比率は加速度的に縮小していく。
21世紀初頭には売上全体の7%前後を占めていた印刷物だが、今や2.3%、43分の1でしかない。「雑誌などの影響力が減る」「売上が減る」「効果が薄くなってきたので取り扱いを減らす」「ますます影響力が減る」「売上が減る」の逆スパイラル状態が続いている。
コンビニ各社で方針は…?
この「売上高から見た出版物取り扱いの減少」について、大手コンビニ(ここでは年間売上1000億円以上とする)それぞれの動きを見たのが次のグラフ。ここ数年の挙動を明確にするため、2009年から2012年に至る変移を計算したグラフも併記する。
ファミリーマートがわずか1割程度の減少に留まっているのに対し、ローソンは3割を超える減少が確認できる。各コンビニにおける戦略の違いが値として出ているのだろう。ちなみに両社とも「一番くじ」やタイアップ商品の展開など、エンタメ系素材との共同企画には積極的で、その積極姿勢に出版物を絡めるか否かの姿勢が一因にあるようだ。
ローソンとファミリーマートに限れば、店舗数そのものの違いも差異の一因にある。そこで1店舗あたりの出版物売上高を換算すると、両社の順位は逆転する。
ファミリーマート全体としての経年による減少幅の小ささと、1店舗あたりの売上高の大きさは、少なくとも出版物に限れば同社がローソンよりも注力している様子がうかがえる。「ファミマでコンプティーク2013年10月号確保」でも伝えている通り、ファミリーマートでコンプティークを取り扱うようになったのが象徴的な出来事ではある。
コンビニから出版物が完全に無くなることは考えにく、展示物として、そして立ち読み客の存在による外部からの見た目による集客は、今後も行われ続けるはず。コンビニ大手各社が印刷物の取り扱いを減らし、売り上げが減少していることに違いは無いが。また遠い将来には印刷物のコーナーが無くなり、代わりに電子書籍向け端末がずらりと並ぶ「電子本コーナー」が取って代わるかもしれない。
一方でコンビニの立ち位置の変化(今まで以上の多様化、地域密着型店舗化、マルチメディア化が求められ、それを体現化しようとしている)を見ると、今後さらに出版物の取扱額が減少する可能性は多分にある。また印刷物の最大の効用「集客効果」ですら、最近ではコンビニ内で販売される淹れたてコーヒーと、それを味わうためのイートインコーナーに代替される場面も出てきている。
「時代の流れ、変化」という言葉で片付けるには少々もの悲しい部分もあるが、コンビニにおける印刷物の売上の減少は、その効用の縮小と合わせ、事実として受け止めねばなるまい。
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