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ゴルフ界の注目。刑期を終えて出所した「元メジャー覇者」のPGAツアー復帰の願いは叶うのか!?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 約2年半の刑期を終えて出所した元メジャー・チャンピオン。

 「ツアーに戻りたい」という彼の願いは、果たして叶うのか。米ゴルフ界や PGAツアーは、それを許すのか。今、注目が集まっている。

 アルゼンチン出身で54歳になったアンヘル・カブレラは、2007年全米オープン、2009年マスターズを制し、メジャー2勝を含むPGAツアー通算3勝を挙げた「元トッププレーヤー」だ。

 PGAツアー以外でも、世界で通算31勝を挙げ、プレジデンツカップには4度、ワールドカップには9度も出場。紛れもなく彼は実力者の一人だった。

 しかし、2021年1月、滞在先のブラジルで逮捕された。理由は、2016年から2018年の間に元パートナーだった女性に対し、恐喝や暴行等を働いたこと。起訴され、有罪となったカブレラには懲役2年の判決が下され、メジャー・チャンピオンは刑務所入りとなった。

 その後、2022年11月には、カブレラが別の元恋人に対しても暴行等を行なったことが明らかになり、彼の刑期は延長された。

 そして、ブラジルとアルゼンチンの双方で通算30か月の刑期を終えたカブレラは、今年8月4日に刑務所から出所。現在は母国の自宅に戻っているという。

 米ゴルフウィーク誌はカブレラの「長年の友人」から伝え聞いた話として、「カブレラはPGAツアーに戻ることを切望している」と報じている。

 「長年の友人」いわく、カブレラはアメリカ入国・滞在に必要となるビザ(査証)やPGAツアーのメンバーシップを復活させたいと願い、「その願いが叶うかどうかは自分の姿勢やあり方次第だと信じて、自分を律している」という。

「カブレラは刑務所でたくさんのことを学んだ。体重は激減し、今はすっかり痩せている。毎日、神に祈りを捧げ、酒は控え、とても謙虚になっている」

 出所後、アルゼンチンでカブレラと一緒に5ラウンドしたという「長年の友人」は、「カブレラは5ラウンドすべて、アンダーパーで回った。ドライバーショットは以前と変わらず、とても力強かった。彼は今でも全米シニアオープンで優勝できる」と語ったそうだ。

 カブレラが逮捕される前に最後に試合に出たのは2020年9月。PGAツアーのシニア部門であるチャンピオンズツアーのピュア・インシュアランス・オープンがラスト大会だった。

 逮捕されてからは、ゴルフからも一般社会の生活からも遠ざかってきたはずだが、出所後、早々に5ラウンドすべてでアンダーパーで回ったという話には、さすがに驚かされた。

 しかし、ゴルフの腕前や感覚が失われていないとしても、逮捕され、収監されたカブレラに対する社会的信頼は、少なくとも、その時点では失墜したと言わざるを得ない。だが、服役し、刑期を終えて出所した今のカブレラは、果たして米国や米ゴルフ界、そしてPAGツアーから受け入れられるのだろうか。

 カブレラのPGAツアーのメンバーシップは、彼の友人は「すでに停止されている。それを復活させてもらいたい」と語ったが、PGAツアーは「現状を確認中」と返答しているそうだ。

 また、マスターズ優勝者は生涯を通じてマスターズに招待されることになっているが、果たしてオーガスタ・ナショナルは、刑務所から一般社会へ戻ってきたカブレラに来年のマスターズ招待状を送るだろうか。USGAはカブレラを全米オープン覇者として来年以降の全米オープンに出場させるだろうか。

 刑務所から社会復帰し、PGAツアーにも復帰した過去の例は、実はある。脱税の罪で逮捕されたジム・ソープは、1年の刑期を終えて出所後、2009年にシニアツアーに出場することが許可された。

 仮に、カブレラのチャンピオンズツアーへの復帰をPGAツアーが許可したとしても、外国人であるカブレラは米国の査証を取得できない限り、米国入国はできず、米国開催の大会には出ることができない。しかし、彼の母国で開催されるPGAツアーの下部ツアー(コーンフェリーツアー)の大会、アルゼンチンオープンなら、母国で査証は不要ゆえに出場は可能となる。

 そして、カブレラは同大会の過去の優勝者ゆえに、そもそも出場資格も有している。もちろん「PGAツアーが許可すれば」の話だ。私自身の意見としては、刑期を終え、心を入れ替え、ツアー復帰を心の底から願っているのであれば、そんなカブレラには、再起のチャンスが授けられたらいいなと思っている。

 果たして、カブレラは米国や米ゴルフ界、PGAツアーやメジャー大会から受け入れられるのか?大きな注目が集まっている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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