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PGAツアー選手がリブゴルフ予選会に挑戦できる!?ゴルフ界の「奇妙なOK」が浮上した背景

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ゴルフ界に「奇妙なOK」が浮上した。米ゴルフチャンネルによれば、PGAツアーのメンバーがリブゴルフの来季の出場権を競い合うオープンQ(予選会)を受けても「お咎めなし」になることが、ほぼ間違いないという。

 今年6月にPGAツアーのジェイ・モナハン会長とリブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・ルマイヤン会長が統合合意を発表し、両者が笑顔で握手したことで、PGAツアーとリブゴルフの対立は終わると見られていた。

 しかし、その後、PGAツアーとリブゴルフが協調の道を歩む具体的な方策は何一つ発表されていないと言っても過言ではない。

 リブゴルフの大会に1度でも出場したPGAツアーの選手は、いまなお出場停止処分に科されたままの状態にあり、自らPGAツアーのメンバーシップを放棄した選手もいる。

 そうやってPGAツアーから離れた状態にあるリブゴルフ選手を「いずれはPGAツアーにカムバックさせる方法を決める」とモナハン会長は語っていたが、その具体策もいまなお示されてはいない。

 要するに、統合合意の発表後も「何も変わっていない」「何も決まっていない」状態にあり、プレーヤーがPGAツアーとリブゴルフの間を行き来することはできない状態ということができる。

 そんな中、米ゴルフチャンネルの調べによると、12月8日から10日に開催されるアラブ首長国連邦で開催されるリブゴルフのオープンQならPGAツアーの選手が挑んでも出場停止や罰金を科さられることはないという。

 PGAツアーが公表している「規定」には、リブゴルフのシーズン内の大会は「PGAツアーが認可していない大会」ゆえに、これらに出場したPGAツアー選手は処分の対象となると記されている。

 だが、リブゴルフのオープンQに関しては認可、不認可といった記載がなく、その意味では「宙に浮いた位置づけ」ということになるため、PGAツアー選手が挑んだところで何のペナルティも科されないということになるという解釈ができるのだそうだ。

 今年、初めて実施されるリブゴルフのオープンQでは、トップ3に来季のリブゴルフのフル出場資格が付与され、4位~10位にはアジアツアーのインターナショナル・シリーズのフル出場資格が授けられる。

 しかし、PGAツアーの選手は、仮にトップ3に入ったところで、現状ではリブゴルフの来季の大会に出ることはできない。それなのに、オープンQを受ける意味や理由はあるのだろうか?

 ちなみに、オープンQのトップ3には、賞金も出る。1位は20万ドル(約2987万円)、2位は15万ドル(約2240万円)、3位は10万ドル(約1493万円)。

 目指すはトップ3の賞金のみ?「出稼ぎ」「お小遣い稼ぎ」には十分すぎる金額である。

 こんな「奇妙なOK」は、PGAツアーとリブゴルフの「膠着状態」の副産物と言えそうだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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