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「結論は近い」が現実化。リブゴルフの世界ランキング申請は正式却下。だが「おしまい」ではない #ゴルフ

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「結論は近い」と言ったOWGR(世界ゴルフランキング)のピーター・ドーソン会長の言葉は、その通り、現実になった。しかし、答えは「イエス」ではなく「ノー」だった。

 サウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」の支援を受けて創設されたリブゴルフは昨年6月、「世界ランキングの対象ツアーとして認めてほしい」とする申請書を提出。OWGRからの正式承認を心待ちにしていた。

 PIFのヤセル・ルマイヤン会長は、10月5日からスコットランドで開催されたDPワールドツアーのプロアマ形式の大会、アルフレッド・ダンヒル・リンクス選手権に「アンドリュー・ウォーターマン」なる偽名でエントリーし、アマチュア選手として出場。

 初日は欧州ゴルフの総本山R&Aのマーチン・スランバーズ会長、2日目はOWGRのドーソン会長と同組でプレーした。

 リブゴルフに世界ランキングのポイントを付与するかどうかという問題に関係する要人たちが結集していたその大会が、「交渉の場」と化していたことは、誰の目にも明らかだった。

 ドーソン会長は大会開幕前から「ルマイヤン会長と初めて言葉を交わすのが楽しみだ」「結論は近い」と語っており、米欧メディアや関係者は、ルマイヤン会長とリブゴルフにとってポジティブな結論を予想していた。

 しかし、10月10日(米国時間)、OWGRはリブゴルフからの申請を正式に却下。リブゴルフは世界ランキングの対象ツアーとしては承認されず、リブゴルフ選手がリブゴルフの大会で世界ランキングのポイントを稼ぐことはできないことが確定した。

 ドーソン会長いわく、「私たちは(リブゴルフと)戦争状態にあるわけではない」と前置きし、「ポリティカルな問題はない。テクニカルな問題だ」として、リブゴルフに世界ランキングのポイントを付与できない理由は、技術的・構造的な問題であることを示した。

 「世界ランキングを付与している世界の他のツアーのプレーヤーたちと、リブゴルフで予選落ちのない54ホールをショットガン形式で戦っているプレーヤーたちを、フェアに比較することができない」

 ドーソン会長は、リブゴルフの存在そのものを否定するものではないことを強調。

 「(他のツアーとフェアな比較ができるよう)リブゴルフがソルーション(解決策)を見い出してくれることを期待している」

 OWGRの発表を受け、リブゴルフは怒りを込めた長い声明文を発信し、「プロゴルフ界は、真のランキングシステムを失った」と激しく批判。

 「私たちは、これからも闘い続ける」

 ルマイヤン会長が偽名を使ってまでスコットランドに出向き、臨んだ「秘密交渉」は完敗に終わったが、これですべてが終わりではない。ドーソン会長の言葉が示す通り、期待はある。リブゴルフが怒りをおさめ、新たな解決策を見い出すことに期待したい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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