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ゴルフ界も動き出した。「R&A」がロシアとベラルーシのゴルファー「除外」「拒絶」を決定

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 ついにゴルフ界も「制裁」に向けて動き出した。

 欧州ゴルフの総本山「R&A(ロイヤル・アンド・エインシャント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)」は、ロシアのウクライナ侵攻に対する「制裁」を呼びかけたIOC(国際オリンピック委員会)とIGF(インターナショナル・ゴルフ・フェデレーション)に呼応する形で、ロシアとベラルーシからのすべてのゴルファーを除外することを発表した。

 R&Aが主催する全英オープンや全英女子オープン、全英アマチュアといった大会、それらの出場権を競い合う予選会、あるいは団体戦を含めた世界大会等において、「ロシアとベラルーシ出身の選手が参加する予定は、現状ではない」という。

 しかし、今後、ロシアとベラルーシの選手からエントリーがあった場合は、「いかなる場合も拒絶する」。

 さらにR&Aは、国際的なランキング・システム、ハンディキャップ・システムもすべて見直し、ロシアとベラルーシの選手が含まれていた場合は、そこからも除外する方針だ。

 それと同時に、ウクライナの5つのゴルフクラブが所属しているウクライナ・ゴルフ・フェデレーションに対しては「直接的なサポートをしていきたい」と、R&Aは声明の中に綴っている。

 ゴルフ界では、これまでロシアとウクライナの出身選手の参加や活躍はほとんどなく、私自身も米国や欧州の試合会場でロシア人選手、ウクライナ人選手に出会った経験は一度もない。R&Aの声明が示す通り、現状では、R&A主催大会や予選会にロシアとウクライナの出身選手は一人も含まれていない。

 しかし、R&AやUSGA(全米ゴルフ協会)、PGAツアーやLPGAといった世界のゴルフ団体は、ゴルフの裾野を広げ、「ゴルフに国境はない」世界を作り出し、ダイバーシティを促進、実現していくことに、これまで精力的に取り組んできた。

 本来なら、ゴルフが盛んではない国や地域にゴルフを普及させていくことを目指していきたいと願う中で、特定の国籍のゴルファーを除外しなければならなくなったことは、ゴルフ界にとってもR&Aにとっても、とても残念な状況だ。

 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻という現状を鑑み、R&Aは「ゴルフの大会と世界中のスポーツを維持、発展させるため、ゴルフをガバナンスする団体としての直接的責任を果たしたい」。

 これからゴルフ界全体がR&Aの動きに追随する形になると予想される。広がるべきゴルフ、広げたいと願ってきたゴルフが、広げられなくなったこの状況が、あまりにも残念でならない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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