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「ゴルフ界の世界制覇を狙っている?」PGAツアー首脳陣にZOZOチャンピオンシップで直撃

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
写真提供/ZOZOチャンピオンシップ(向かって右端がリー氏、中央がハーディー氏)

日本で開催される唯一のPGAツアーの大会、ZOZOチャンピオンシップは、日本のエース、松山英樹が単独首位に立ち、大いなる盛り上がりを見せている。

その3日目を迎えた23日の朝、PGAツアーのアジア市場を率いる首脳陣、クリスチャン・ハーディー氏(インターナショナル上級副社長)とクリス・リー氏(アジア太平洋社長)のインタビューがアコーディア・ゴルフ習志野CC内のメディアセンターで行なわれた。

コロナ禍ながら対面形式のインタビュー。アットホームな雰囲気も手伝い、日ごろは口が堅い首脳陣が笑顔を交えながら歯に衣着せぬ返答をしてくれた。

インタビューを通じて、明らかに感じ取れたことは、これからPGAツアーが日本のゴルフ市場にもっと深い関わりを持とうとしていること。日本市場を足掛かりにして、アジア全体にPGAツアーの手を伸ばそう、広げようと考えていること。

そこで単刀直入に尋ねた。

「それは、PGAツアーがゴルフにおいて世界制覇を狙っているという理解で、よろしいですか?」

彼らの反応は、非常に興味深いものだった。

【一緒に成長したい】

当然ながら、欧米社会では「制覇」とか「支配」とか「君臨」といった言葉は好まないし、好まれない。もちろん、それを承知で、あえて「世界制覇」と言ってみたのだが、そこを否定したハーディー氏とリー氏は、PGAツアーが日本へ熱視線を向け、すでに数々の具体策を検討していることを明かしてくれた。

「東京五輪の成功は、私たちに大きな自信を与えてくれた。日本でもPGAツアーの大会ができると確信することができました」

「冠スポンサーのZOZOの方々の協力姿勢は、本当に稀に見るほどのもので、非常にありがたいと感じています」

「日本はアジアの中でも特別な国。まさにスペシャル・カントリーです。PGAツアー・メンバーの中にも、日本で開催する試合なら是非とも行きたい、出たいと意欲を見せる選手がたくさんいます」

そんなふうに日本を特別視するようになったPGAツアーは、今後、日本でZOZOチャンピオンシップに続く「第2の日本におけるPGAツアーの大会」の開催を、すでに考えているという。

「日本で、まずプレジデンツカップをやりたい。すでにシニアのチャンピオンズツアーの大会を2017年に日本で初開催しましたが、今後はチャンピオンズツアーも含めて、是非とも日本でやりたい」

そこまで言ったあと、日本のゴルフ界関係者の視線が気になったのか、「もちろん、JGTO(日本ゴルフツアー機構)やJGA(日本ゴルフ協会)と連携しながらやりたいという意味ですよ」と補足した。

【世界戦略の一環】

昨年11月、PGAツアーは欧州ツアーと戦略的提携関係を結ぶことを発表した。

この提携は、欧州ツアーのTV制作やウエブコンテンツ制作を行なう「欧州ツアープロダクション」の株式をPGAツアーが取得し、PGAツアーのジェイ・モナハン会長が欧州ツアーの理事会のメンバーに加わること、ツアーの日程や賞金、ポイント配分、試合出場の条件に関しても米欧両ツアーが協力体制を取っていくといった内容の、いわば部分的な提携である。

欧州ツアーのキース・ペリー会長は「ゴルフ界にとって、この提携は歴史的な瞬間だ。私たちはたくさんのシナジーを見出した」と喜びのコメントを出した。

PGAツアーのモナハン会長も「私たちの協力体制がより強固になっていくことに興奮を覚える。男子プロゴルフ界とファンのために、頑張っていきたい」と意気込みを語った。

これと同様、あるいはこれに近い提携関係を日本とも結べば、将来的には米欧日がアライアンスを組む格好になり、世界のゴルフ主要市場がすべてPGAツアーの色に染まることになる。

さらにPGAツアーは、米ツアーの下部ツアー的な位置付けでPGAツアー・チャイナ、PGAツアー・カナダ、PGAツアー・ラテン・アメリカなどを展開しており、日本がこちら側に位置付けられる可能性もないとは言えないが、いずれにしても、PGAツアーが「ジャパン・ラブ」を膨らませていることは確認できた。

「PGAツアーが世界制覇を狙っているという理解で、よろしいですか?」

すると、ハーディー氏は、少々困惑しながらも「制覇という言葉は適切ではない。(日本やアジア諸国のゴルフを)成長させたい、一緒に成長したいと考えています」と、私の意地悪な質問をスマートに交わした。

だが、「世界制覇」は、「ズバリ」ではなくても「遠からず」には違いない。

世界市場においては、すでにPGAツアーの向こうを張る新たなツアー創設の動きが活発化しており、本家本元のPGAツアーであっても、早急に対抗策を講じる必要に迫られている。日本へのラブコールやアジア市場を活発化する戦略は、そのための1つでもあると考えるのが妥当だ。

そうした小難しい背景はさておき、エキサイティングなPGAツアーの大会が、ZOZOチャンピオンシップに続いて、さらに1つ、2つと日本に創設され、シニアの大会も日本で開かれるようになる日が、近い未来に到来することは、ほぼ間違いない。

それは、日本のゴルフファンとゴルフ界、選手たちにとって、朗報であることも間違いない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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