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「マスターズ開催中止とボイコット」の呼びかけに、オーガスタ・ナショナルとPGAツアーはどう対応する?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:ロイター/アフロ)

 今年のマスターズ(4月8日~11日)開幕が目前に迫ったこの時期に、その開催可否をも左右しかねない問題が浮上した。

 3月25日に米ジョージア州で投票制限法の法案が可決されたことを受け、米国の公民権運動団体が同州内で開催されるゴルフや野球の大会の開催中止や選手たちの出場ボイコットを呼びかけ始めたのだ。

 公民権運動団体「ナショナル・ブラック・ジャスティス・コーリション(NBJC)」のデビッド・ジョンズ氏は、このたび可決された投票制限法は郵送による不在者投票の際の身分証明の厳格化など黒人やマイノリティの人々の投票の権利を制限しかねない差別的な内容であるとして、「PGAツアーとマスターズはゴルフの多様性を重んじ、我が国における人種的不平等に立ち向かう姿勢を示しているのだから、その意志を示すアクションを起こしてほしい」と語り、同州内で開催されるマスターズの開催中止とマスターズを含めた同州内で開催される大会への選手の出場ボイコットを求めている。

 マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルは、かつては閉鎖的なプライベート・クラブと見られていたが、2012年に初の女性メンバーを受け入れ、2019年には同クラブ史上初の女性の大会としてオーガスタ・ナショナル女子アマチュアを初開催した(2020年はコロナ禍で中止)。

 史上初の11月開催となった昨年のマスターズ開幕前には、オーガスタ・ナショナルのフレッド・リドレー会長が、1975年に黒人選手としてマスターズに初めて出場したリー・エルダーを2021年大会に招いてジャック・ニクラスやゲーリー・プレーヤーとともに名誉スターターを務めてもらうことを発表。

 さらにリドレー会長は、エルダーの名を冠した奨学金制度を創設し、オーガスタ市内にある黒人主体のペイン・カレッジのゴルフ部の男女各1名に奨学金を授けることも誇らしげに発表したばかりだ。

 そうやって、ジェンダーや人種などに基づくあらゆる差別や不平等を撤廃しようと精力的に動き出しているオーガスタ・ナショナルやPGAツアーを筆頭とする米ゴルフ界が、今回の法成立とNBJCの呼びかけにどう対処するのかに注目が集まっているが、現状では、いずれもコメントはしていない。

 すでにメジャーリーグ(野球)のプレーヤーズ・アソシエーション(選手協会)のエグゼクティブ・ディレクター、トニー・クラーク氏は、7月にアトランタで開催予定となっているオールスターゲームの開催地変更の可能性を示唆しており、米メディアの報道によると、アトランタに本拠を置くコカ・コーラ社の製品のボイコットを呼びかける動きが、すでに米国内では出ているという。

 黒人差別撤廃を訴えるBLM(Black Lives Matter)運動が米国から世界へと広がった今、そしてマスターズ・ウィークが1週間後に迫っている今、オーガスタ・ナショナルとPGAツアー、そして選手たちは難しい対応を迫られている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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