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「元ビッグ2」は今、、、。「祭典」に挑むタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの可能性

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
米ゴルフ界の元ビッグ2。注目の的は、今なお、この2人だ(写真:ロイター/アフロ)

 昨今の米ゴルフ界は、23歳のコリン・モリカワが全米プロを制し、巨漢と化したブライソン・デシャンボーが全米オープンを圧勝するなど、それなりに話題が多い一方で、やっぱり気になるのは、元ビッグ2、タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンの動向だ。11月に「ゴルフの祭典」マスターズを控えた今、2人はどんな状況にあるのだろうか。

【シニアでマスターズ制覇を狙う?】

 今年50歳になり、シニア入りしたフィル・ミケルソンは、今、快走を続けている。

 2020年の年明けごろ、ミケルソンは6月の誕生日を迎えた後もシニアのチャンピオンツアーに出ることを躊躇っていた。だが、コロナ禍で試合が激減したことや8月のチャールズ・シュワッブ・シリーズ・アット・オザークス・ナショナルでシニア・デビューしていきなり初優勝を挙げた快感が彼の気持ちを一変させた様子。

 10月のドミニオン・エナジー・チャリティ・クラシックでは、同じレフティでマスターズ・チャンプのマイク・ウィアを3打差で抑え、早くもチャンピオンズツアー2勝目を挙げて、あのミケルソン・スマイルを満足そうに輝かせた。

 同大会は、悪天候による不規則変更となり、土曜日には1日36ホールのプレーを強いられた。齢を重ねたシニア選手たちには、雨天の中で賞金を賭けて戦う1日36ホールは強行軍だったが、こうなると50歳になったばかりで「若い」ミケルソンが有利になることは、ある意味、当たり前だ。

 だが、ミケルソンの強さの秘密は、他選手より少々若いことだけでは、もちろんない。36ホールを回った土曜日の夕暮れどき、誰もがそそくさとホテルへ引き返し、少しでも早く休もうとしていたのだが、ミケルソンだけは練習場へ直行。

「思ったように打ててない。これを明日までに絶対に直さなければ、、、、」

 そういう必死さとひたむきさが、ミケルソンのゴルフをいまなお日々向上させている。そこに他選手より「少々若い」というプラス要素が加わった結果、今、シニアの世界で誰よりも強いミケルソンが生まれている。

 しかし、ミケルソンが一番望んでいることは、やっぱりPGAツアー、そしてメジャーで勝利をすることだ。いまなお、それができると彼は信じている。

 今週はZOZOチャンピオンシップ、そして11月には過去3勝を挙げているマスターズに挑む。

「もう1年半も勝ってない。米ツアーで優勝争いし、勝利するあのフィーリングが恋しい」

 恋しい気持ちを勝利へつなげるミケルソンの姿を是非とも見たいと心底、思う。

【再び、奇跡の復活優勝?】

 勝利するフィーリングを恋しく思っているのは、きっとタイガー・ウッズとて同じであろう。

 ウッズが最後に勝利を味わったのは、ちょうど1年前のことだった。日本で初開催された米ツアー大会、ZOZOチャンピオンシップの舞台は千葉県の習志野CC。そこで故サム・スニードの記録にならぶ通算82勝目を挙げ、達成感に満ちた笑顔で万歳のように両手を上げてガッツポーズを取ったウッズの姿が、今では遠い昔のように感じられる。

 あの82勝目以降、今日までの1年間で、ウッズはわずか7試合しか出ておらず、自身が大会ホストを務めたヒーロー・ワールド・チャレンジで4位、今年1月のファーマーズ・インシュアランス・オープンで9位までは悪くなかったが、やはり大会ホストを務めたジェネシス招待で最下位に沈んで以降の成績は、すべて下位どまりだ。

 8月の全米プロは37位に終わり、それが昨今の彼の順位の中でベストだった。シーズンエンドのプレーオフ・シリーズでは最終戦のツアー選手権への進出が叶わず、9月の全米オープンでは予選落ちした。

 そんな具合ゆえ、彼がここ1年間、ずっと不調であることは明白だ。しかし、長い戦線離脱と絶不調を覆して2018年ツアー選手権を制し、2019年マスターズで勝利した奇跡の復活劇を披露したウッズだからこそ、現在の不調が彼の終わりではないことを誰もが期待している。

 もちろん、それを一番願い、一番信じているのはウッズ自身だ。

 今週、ZOZOチャンピオンシップの会場は、日本ではなくロサンゼルス郊外のシャーウッドCC。かつてウッズの大会であるヒーロー・ワールド・チャレンジが2000年から2013年まで開催されていたウッズ馴染みの場所だ。

「日本でプレーできないのは残念でならない。でも、シャーウッドはグレートな場所。だからきっとグレートな大会になる」

 その後に挑むのは11月のマスターズ。過去5勝を挙げたオーガスタ・ナショナルは、ウッズが隅々まで熟知している「庭」のような場所だ。

 懐かしい場所で、恋しい想いを勝利につなげることはできるのか。絶好調のミケルソンも、不調のウッズも、最後の切り札となるのは、勝利への想いだ。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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