「新大会創設」は何のため?誰のため?世界のゴルフ界が驚いた米ツアーの恐るべき行動力

新大会の候補地はフロリダをはじめ、ミシガン、オハイオ等々、数か所が上がっている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月半ばからの再開が予定されている米ツアーだが、再開5試合目として開催されるはずだったジョンディア・クラシックが、ここへ来て突然、開催中止を発表し、米ゴルフ界を驚かせた。

 しかし、米ツアーは間髪を入れずに、同大会に代わる新大会を創設すると発表。世界のゴルフ界を驚かせている。

【苦渋の決断】

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月のプレーヤーズ選手権以降、休止状態に陥っている米ツアーは、チャールズ・シュワッブ・チャレンジ(6月11日~14日)からの再開へ向けて、アクティブに準備を重ねている。

 再開から4試合は無観客で開催することがすでに確定しており、5試合目に当たるジョンディア・クラシックからは観客を入れての開催が期待されていた。

 だが、29日(米国時間)に今年の大会を中止すると発表。

「感染防止上、観客を入れて開催することは難しい。しかし、観客がいない大会を開催しても意味がない」

 トーナメント・ディレクターのクレア・ペターソン氏は苦渋の決断を口にした。

 ジョンディア・クラシックの開催地であるイリノイ州は感染がいまなお深刻なエリアが広がっており、州政府は今年の夏が終わるまでは50人以上の集会を禁止している。

 州内の人々の意識調査を見ても、スポーツ観戦より感染への恐怖や感染防止のほうへ傾いているようで「招待チケットをもらったとしても観戦には行かない」と大半が答えたそうだ。

 そんな中、リスクをおかしてまで大会を開催することには「意味がない」とペターソン氏は言う。

 だからと言って無観客で開催したらチケット収入などがゼロになるため、収益が取れず、「地域社会への寄付ができなくなる。それならば、開催しても意味がない」。

 折しも今年は同大会の50周年という記念すべき節目の年。だからこそ、ジョンディア・クラシックの人々は、あえて苦渋の決断をした。

そして、人々の命と健康、さらには社会還元、社会貢献を最優先した彼らの決断は、英断だったと私は思う。

【5週間で新大会創設?】

 その発表とほぼ同時に、米ツアーはジョンディア・クラシック開催が予定されていた週を埋めるための「代替大会」を検討し始めた。しかも、これからわずか5週間のうちに新しい大会を創設しようとしていると聞いて、仰天させられた。

 第一報では、新大会は米ツアーの本部が置かれているフロリダ州ポンテベドラビーチのTPCソーグラスで開催することになるのではないかと言われていた。

 だが、翌日には他の開催候補地が続々上がってきている。

 無観客試合の4試合目に当たるロケット・モルゲージ・クラシックがミシガン州デトロイトでの開催のため、新大会もデトロイトに創設するのが最善ではないかという案が1つ。

 いやいや、再開6試合目のメモリアル・トーナメントと同じオハイオ州コロンバスで創設すれば、同地で2週連続の開催が可能になるという案もある。

 同じオハイオ州内のアクロンにあるファイアストーンなら、米ツアーの「馴染み」のコースゆえ、スムーズに新大会の舞台になりえるのではないかという案も出ているそうだ。

 それ以外にも、ケンタッキー州やインディアナ州も候補地に挙げられており、現在、急ピッチで新大会創設プランが練られている様子だ。

 まさに米ツアーの莫大な資金力に裏打ちされた恐るべき行動力であり、世界中のどこを探しても、わずか5週間のうちに新大会を創設することを発案し、実行するツアーは存在しないと断言できる。

【お手並み拝見】

 しかし、それは果たして何のためなのか、誰のためなのか。

 もちろん、選手やキャディの「戦いの場=職場」を維持するため、確保するためであることは間違いない。パンデミックによって中止になった米ツアー大会はジョンディア・クラシックが11試合目。再開後は1つでも多くの大会を用意したいと願っていることは疑いようもない。

 だが、6月の再開に際しても、会場に入る全員へのPCR検査などの安全管理は「本当に十分な体制が整えられるのか?」「大丈夫なのか?」と首を傾げる選手もいる。マスターズ覇者のアダム・スコット(豪)はその1人。だから彼は「しばらくは出場しない」と発表している。

 観客を入れる形での開催に関しても、詳細な対策プランは、まだ発表されておらず、ジョンディア・クラシックが案じたように、観客がどれほど来場するかは、まったくわからない。

 そんな中で、大急ぎで新大会を創設するのは、少々、勇み足が過ぎるのではないかと首を傾げる人々がいるのは当然である。

 だが、それでも前進するのが、世界一の米ツアーの姿勢である。いつも強気で前向きで、だからこそ彼らは世界一のプロゴルフツアーになったのだ。

 果たして、新大会は創設されるのか。7月9日からの開催に間に合うのか。米ツアーのお手並み拝見だ。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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