Yahoo!ニュース

市原弘大を見習って、日本のゴルフ界でも起こしたいチャリティのための即行動!

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
昨冬は千葉から埼玉までハンドルを握り、クラブを小学生に贈った市原弘大(筆者撮影)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で困窮している人々や感染者治療の最前線で戦ってくれている医療従事者たちを支援するため、米国のプロスポーツ界では未来の夢体験をネット・オークションに出品するチャリティ活動が行なわれ始めている。

 この「夢体験オークション」は、米ゴルフ界では、かなり以前から自然災害などが起こるたびにこの手法によるチャリティ活動が行なわれてきた歴史があり、今回のコロナ禍においても、米ゴルフ界の動きは迅速だった。

 ノース・カロライナ州の名門パインハースト・リゾート&カントリークラブは3月下旬に豪華な夢体験パッケージ15種類を独自のネット・オークションに出品。すると、開始からわずか2時間半で4万ドル(約428万円)以上の値が付き、慌ててさらに5種類ほど夢体験パッケージを追加するほどの大好評を博した。

 最高値が付いたのは「パインハーストNo.2の3番グリーン脇にある名匠ドナルド・ロスが暮らした家に宿泊し、パインハーストNo.2とNo.4をラウンドする夢体験を4名様で!」というもので、2万5000ドル(約270万円)で落札された。

 わずか3日間限定だったこのネット・オークションでは、最終的には25万9230ドル(約2800万円)が集まり、リゾートの従業員救済ファンドに寄付されたそうだ。

【よくできたチャリティ手法】

 この「夢体験オークション」は、世の中が落ち着いて実施可能になったときに実施することが大前提。そして、夢体験に登場する人物が無理なく「できることをやる」ことが大前提となっている。

 

 つまり、元手や経費をほとんどかけることなく実施可能でありながら、それが体験できるのなら高いお金を払ってでも買いたいと人々が思うような垂涎ものをパッケージ化する仕掛けになっている。

 4月に入ってからは、米国のゴルフ用品やウエア、アクセサリーなどのメーカー各社が主催する、さまざまな「夢体験オークション」が行なわれている。

 たとえば、アクシネット傘下のフットジョイやタイトリストは、同社と契約しているスタッフ・プレーヤー、ウエブ・シンプソンやイアン・ポールターと一緒にラウンドする夢体験のほか、「全米プロ覇者で元世界一のジャスティン・トーマスとともにラウンドし、彼の父親で名インストラクターでもあるマイク・トーマスからレッスンを受ける夢体験」を出品。

 さらには「世界屈指の名コーチ、ブッチ・ハーモンのレッスンを受ける夢体験」「ジョーダン・スピースをメジャーチャンピオンに導いた名コーチ、キャメロン・マコーミックのレッスンを受ける夢体験」「名匠ボブ・ボーケイからウエッジのフィッティングを受ける夢体験」「名匠スコッティ・キャメロンからパターのフィッティングを受ける夢体験」なども出品している。

 有名選手や有名コーチ、クラブづくりの名匠たちと直接会って一緒にゴルフをしたり、レッスンやフィッティングを受けたりできるとなれば、ゴルフファンにとってはまさに夢の体験となる。

 そして、その体験を授ける側の選手やコーチ、名匠たちは、いわば自分の専門領域のことを一緒に行なうだけで人々に喜ばれ、寄付金を寄せていただけることになるのだから、この「夢体験オークション」は実によくできたチャリティ手法だと私は思う。

【即行動が大事】

 昨日、日本の男子ツアー選手である市原弘大が、クラウドファンディングサイト「READY FOR」に創設されている「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」へ個人的に寄付したことが日本のいくつかのメディアで報じられた。

 実を言えば、数日前、市原から電話があり、彼は昨冬に個人的にジュニア用のクラブをチャリティとしてプレゼントした埼玉県内の小学生の自粛生活の日々を気遣い、「パター練習用のマットとかなら、部屋の中でできるから、いいかなあと思って」と申し出た。

 市原は、そういう人柄の選手なのだ。

 そのとき市原は、もっと誰かのために役に立ちたい、チャリティのための何かをしたいという想いを熱く語っていたのだが、「僕はあんまりアイディアが浮かぶ方ではないので、、、」と言葉に詰まり、具体的に何をしたらいいのかを思案している様子だった。

 結局そのときは「何か考えましょうね」と言って電話を切り、私も私なりに考えていたのだが、市原は居ても立っても居られない気持ちになって既存のファンドへの寄付という形でアクションを起こしたのだと思う。

 緊急事態下のチャリティ活動は、アイディアを練るより動くこと、即行動することが大切であることに今さらながら気付かされた。

 だから私は、今、この原稿を書いている。米国で盛んに行なわれている「夢体験オークション」は、すぐにでも着手できる絶好の例ではないだろうか。日本のゴルフ界、ゴルフ関係者、ゴルフファンの方々が、それぞれの得意分野や得意技、あるいは知恵や優しさを持ち寄ることで、必ずや大きな支援が実現できるはずである。

 そう信じて、私はこの記事を発信したい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

舩越園子のゴルフここだけの話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週2回程度(不定期)

米国ゴルフ取材歴20年超の在米ゴルフジャーナリストならではの見方や意見、解説や感想、既存のメディアでは書かないことがら、書けないことがら、記事化には満たない事象の小さな芽も含めて、舩越園子がランダムに発信するブログ的、随筆風コラム。ときにはゴルフ界にとどまらず、アメリカの何かについて発信することもある柔軟性とエクスクルーシブ性に富む新形態の発信です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

舩越園子の最近の記事