「タイガー・ウッズのための変更か?」と忖度も指摘され、揺れ始めた世界ゴルフ殿堂

いつ殿堂入りしようとも、どこからどう見てもタイガー・ウッズはグレートだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「ワールド・ゴルフ・ホール・オブ・フェーム」、日本語なら「世界ゴルフ殿堂」といえば、ゴルファーあるいはゴルフに関わる人々にとって、最高の栄誉とされている。

 そのゴルフ殿堂入りを巡り、米ゴルフ界が突然揺れ始めた。

「タイガー・ウッズのための規定変更ではないか?」

 

 そんな批判の声が上がり始めている。

【いつかの規定変更】

 1月21日、世界ゴルフ殿堂の理事会は殿堂入りに関するいくつかの変更点を発表した。

 ゴルフ界への長年の貢献、功績によって選ばれる「ベテラン」カテゴリーを廃止し、「ライフタイム・アチーブメント」カテゴリーを「コントリビューター(貢献者)」へ変更して、いわば統廃合するという規定変更は、なるほどと誰もが頷ける。

 だが、殿堂入りのための資格年齢を、これまでの50歳から45歳に引き下げるという規定変更が、さまざまな憶測や批判を膨らませている。

 世界ゴルフ殿堂の理事会チェアマンであり、米ツアー会長でもあるジェイ・モナハン氏は「ゴルフの偉大なるプレーヤーや貢献者を認識し、賞賛することはとても大切。この規定変更は殿堂入りしているメンバーたちのみならず世界のゴルフファンにとって、素晴らしいものになる」と語っている。

 同理事会メンバーであり、自身も殿堂入りしているゴルフ界の元女王、アニカ・ソレンスタムも「殿堂入りは私のキャリアにおいても特別な瞬間だった。45歳からの殿堂入りは素晴らしい」と規定変更に胸を張っている。

【いわゆる、忖度?】

 その一方で、この規定変更は「忖度だ」「ご乱心だ」と激しい批判が上がり始めている。中でも、米ゴルフウィーク誌のアダム・シューパック記者が即座に報じた批判の内容は、手厳しい。

 同記者によれば、世界ゴルフ殿堂はわずか4年前、殿堂入りの資格年齢を40歳から50歳に引き上げたばかりにも拘らず、今回は50歳から45歳へ引き下げ、それがゴルフ界にとって「すばらしいものになる」と語っており、「彼ら(世界ゴルフ殿堂)は、正気を失ったのではないか?」と論調は激しい。

「この規定変更は、たった1人の選手のためのものである」

 たった1人とは、タイガー・ウッズのことだ。というのも、今年12月30日にウッズは45歳になるため、年齢規定を「45歳から」と変更すれば、2021年にウッズを殿堂入りさせることが「ちょうど」可能になる。

 2021年の殿堂入りの式典は、6月の全米オープン・ウィークにその会場であるトーリーパインズ(米カリフォルニア州)で行なわれることがすでに内定しており、トーリーパインズといえば、ウッズが過去8勝を挙げた場所でもある。

 ウッズにとって特別な場所であるトーリーパインズでウッズが世界ゴルフ殿堂入りするとなれば、世界ゴルフ殿堂にとっては最高のストーリーになる。

 さらに同記者は、世界ゴルフ殿堂のCEOが、かつてタイガー・ウッズ財団のCEOを14年間務めた人物であることも指摘し、いわゆる「忖度」があったのではないかと疑問視している。

【誰もが頷ける明解な説明を!】

 だが、米ツアー勝利数やメジャー勝利数のように数字で示される功績は誰の目にも明白である一方で、世界ゴルフ殿堂のように一定の人々の推薦や投票で選出される功績は、その時点で「選ぶ側」の主観が少なからず入り込むことは確かであり、考えようによっては、それさえも「忖度」と呼ばれかねない。

 大切なのは、誰が誰をどういう基準で「グレート」と思うかということ。それぞれがそれぞれの判断基準に基づいて「あのプレーヤーこそはグレートだ」と思う。それが世間の評価というものだ。

 すでにメジャー15勝を挙げ、歴史に並ぶ82勝をマークし、今なお絶大なる人気を誇るウッズを、世界中の人々がすでにあらゆる判断基準に基づき、「最もグレートなゴルファーだ」と認めている。その事実は、ウッズがいつ世界ゴルフ殿堂に選ばれようとも変わることはない。

 むしろ、気になるのは、今回の規定変更が本当にウッズのための「ウッズ・ルール」だとしたら、1人の選手のためにコトが動く世界ゴルフ殿堂というもの自体の存在価値や存在意義が低下し、ひいては、これまで殿堂入りしてきたレジェンドたちの名誉をおとしめる結果になるのではないかということだ。

 その意味では、資格年齢を安易に上げたり下げたりするのは、決して得策ではない。

 なぜ「40歳から50歳へ」引き上げられたものが、今回は「50歳から45歳へ」引き下げられたのか。その部分だけでも、誰もが頷ける明解な説明が求められる。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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