「4週間ぶりの試合が全英オープン」というタイガー・ウッズの「備え方」の是非!?

昨年は惜敗した全英オープン。「今年こそは優勝を!」と期待するファンは多い(写真:ロイター/アフロ)

 今週は、今季最後のゴルフのメジャー大会、全英オープン(18日~21日)が開催される。今年の戦いの舞台は北アイルランドの名門ロイヤル・ポートラッシュ。由緒ある全英オープンを迎え入れるのは1951年以来とあって、現地のゴルフファンは今週を心待ちにしていた様子だ。

 そんな中、世界のゴルフファンが心待ちにしているのは、言うまでもなく、タイガー・ウッズの活躍である。今年4月にマスターズを制し、奇跡の大復活優勝で世界中を沸かせたウッズだが、その後は全米プロで予選落ちを喫し、全米オープンでは21位タイどまりだった。

 今週の全英オープンを制してメジャー16勝目を挙げることはできるだろうか。ラスベガスのブックメーカーが発表した優勝予想のオッズを見れば、その筆頭はローリー・マキロイで8倍、2位はブルックス・ケプカで10倍、3位はダスティン・ジョンソンで12倍、そしてウッズが16倍で続いており、ファンの期待は高まるばかり。

 だが、欧米メディアの間では、ウッズの優勝は難しいと見る向きが強まっている。

【いきなり出れば、予選落ち?】

 14日の日曜日(現地時間)、8時間ほどのフライトを経て米国から北アイルランドに到着したウッズは、その足でロイヤル・ポートラッシュに向かい、パトリック・リードとともに練習ラウンドを行なった。

 詰め寄せた大勢のファンと握手やサインも行ない、余裕を感じさせる笑顔も見せたウッズだが、欧米メディアの中には「ウッズが全英オープン優勝に向けて本気で備えてきたとは思えない」と見る向きもある。

 その最大の理由は、ウッズが6月の全米オープン終了直後からタイへ家族旅行に出かけ、試合に1つも出ることなく、この全英オープンを迎えていることだ。

 クラブを握るのは15日ぶり。ラウンドするのも試合に臨むのも4週間ぶり。「実戦でウォーミングアップせずにメジャーに挑むなんて、優勝を目指しているとは到底言い難い」と批判的な記事が出回っている。

 確かに、今年のマスターズには、それ以前に5試合をこなし、徐々にギアアップした上で挑み、そして勝利した。だが、マスターズ優勝後は1試合も出ることなく、ぶっつけ本番で全米プロに出て予選落ちした。その全米プロのときと同様、今週の全英オープンも、いきなり出れば、あえなく予選落ちするのではないか。批判的な記事は、そう書いている。

【自分にとってベストな備え方】

 だが、必ずしも、試合に出ることだけが勝利への道ではないだろう。それがウッズなら、なおさら一般論は当てはまらない。

 生涯4度に渡る膝の手術と腰の手術を受け、長い戦線離脱や私生活上のトラブル等々、いろんな苦境や苦難を乗り越え、そして見事に復活したウッズなのだから、そのときどきに自分が何をしなければならないか、何をすべきかを誰よりも熟知しているはずである。

 試合に出なかったこの4週間、ウッズが何もしなかったわけではない。まず家族旅行で心身を癒し、リフレッシュした。そのことだけでも意義はある。

 旅行後は、ゴルフそのものの技術的な練習やラウンドや試合より、まず肉体づくりを優先して行ない、そのあとは、ショットよりパットを優先して練習したという。

 そして大会10日前からは、北アイルランド時間の午前6時に合わせて、自宅のあるフロリダの時間(米東部時間)の午前1時に毎日起床し、時差対策もしっかり行なってきた。

 そうやって心身に無理のない調整を、自分なりに段階的に行なうこと。それが、度重なる手術を経た43歳の自分にとって最善のメジャー対策になるのだとウッズは信じているからこそ、そうやっている。

「今年は去年ほどゴルフをしないつもりだと言っただろう?それは、こういうことだ」

 欠場後、戦線離脱後の復帰・復活の仕方、調子の戻し方。それらすべてを幾度も経験し、乗り越え、成功してきたウッズだからこそ、彼が信じる挑み方が彼にとっての最善の道であると信じたい。

 コースをチェックする目は言うまでもなく長けている。

「ティグランドに立てば、あらゆるアングルから、いろんな攻め方が考えられる。風が変われば、今日練習するショットは無意味になる。グリーンはとても難解だ。ミスしていい場所に外すことが大切だ」

 たくさん球を打たずとも、試合に1つも出ずとも、ウッズは今のウッズなりに着々と開幕に備えている。そう信じつつ、来たる全英オープンを眺めようと思う。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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