10億円のドリームマッチに込められるタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンと大勢の子供たちの夢

長年、ゴルフ界を担ってきたウッズとミケルソンが抱く夢は未来を担う子供たちの育成だ(写真:ロイター/アフロ)

タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンが9ミリオン・ダラー(約10億円)を競い合うドリームマッチ、その名も「ザ・マッチ」の詳細が24日(米国時間)に、ようやく発表された。

以前から決まっていたのは、ウッズとミケルソンがサンクスギビングのホリデーに高額賞金を競い合う一騎打ちを演じ、勝者がすべてを手にするということだった。優勝賞金は9ミリオン、一般ファンは課金方式の有料TV(ペイ・パー・ビュー)による観戦となるといった概要は、すでに報じられていた。

このほど発表されたのは、さらなる詳細だ。

「ザ・マッチ」はサンクスギビングデーの翌日の11月23日、午後3時(米東部時間)からラスベガスのシャドウクリークで開催される。

タイトル・スポンサーは米金融王手の「キャピタルワン」。9ミリオンの優勝賞金のほか、ドラコン、ニアピンといった副賞も提供されることになった。

一般ファンが開催コースに足を踏み入れて観戦することはやはりできず、入場チケットの販売は行なわれない。マッチの観戦は課金方式の有料TV(ペイ・パー・ビュー)に限定され、料金は19.99ドル。有料放送は米国内のみならず、一部の海外地域でも視聴可能と記されているが、日本で視聴可能かどうかは、現段階では発表されていない。

だが、今回の詳細発表の中で米国の人々が強い関心を示しているのは、日時や有料放送の料金はさておき、勝者が手にする9ミリオンの行方だ。

ミケルソンはファンサービスに常に熱心だが、とりわけ子供たちに優しく、声をかけながらサインや握手をする(写真/舩越園子)
ミケルソンはファンサービスに常に熱心だが、とりわけ子供たちに優しく、声をかけながらサインや握手をする(写真/舩越園子)

【銃乱射事件の犠牲者の子供たちのために】

「優勝賞金の一部をチャリティに回す」

ウッズもミケルソンも、それぞれのマネジメント会社を通じて、寄付の意志を表わした。

ミケルソンは若いころから米ツアーで最も熱心にファンサービスを行なう選手として親しまれてきたが、同時に彼はチャリティ活動にも昔から熱心だった。

とりわけ2004年のマスターズで悲願のメジャー初制覇を達成してからは、経済的に困窮し、教育が受けられない子供や若者が必要な教育が受けられるようにという願いを込めて、愛妻とともに「フィル&エイミー財団」を創設し、精力的に貢献してきた。

2006年にはバーディーを1つ取るたびに100ドル、イーグルなら500ドルを寄付するという仕組みを考案。当時はゴルフ界における画期的なアイディアとして大きな注目を集め、「バーディー・フォー・ザ・ブレイブ・プログラム」と名付けられた。

以後、このプログラムは米ツアーが行なうチャリティ活動へと拡大され、現在も続けられている。

「教育」以外にも「軍隊への感謝とサポート」「乳がん撲滅」「ジュニアゴルファー育成」など、さまざまな目的のチャリティ活動を次々に考え出しては実施しているミケルソン。

「ザ・マッチ」で9ミリオンを手に入れたら、その多くを自身の新しいチャリティ基金「チルドレン・オブ・ザ・58ファンド」へ回すつもりだという。

「チルドレン・オブ・ザ・58・ファンド」は、2017年にラスベガスのカジノで起こった銃乱射事件の犠牲者の子供たちの奨学金などをサポートするために、ミケルソンが新しく立ち上げたチャリティ基金だそうだ。

メジャー5勝、米ツアー通算43勝、48歳のミケルソンは、勝利数や年齢を積み上げながら、チャリティ活動とその成果も積み上げている。

社会の動きに常に目を向け、助けを必要としている人々に積極的に救いの手を差し延べている。

「ザ・マッチ」の賞金額を最初に耳にしたとき、ミケルソンは「バカげていると思うぐらいビッグな金額だ」と、ひどく興奮していた。

あのとき彼は、それを手に入れれば、どれだけの子供たちを救えるかを考え、興奮していたのだと思う。

2018年2月のジェネシス・オープン開幕前の会見で、自身のチャリティ活動や「TGRラーニングラボ」について熱く語ったウッズ(写真/舩越園子)
2018年2月のジェネシス・オープン開幕前の会見で、自身のチャリティ活動や「TGRラーニングラボ」について熱く語ったウッズ(写真/舩越園子)

【未来を担う何百万人の子供たちのために】

ウッズが「ザ・マッチ」で勝利したら、彼は賞金の多くを彼自身が創設した「TGR財団(旧・タイガー・ウッズ財団)」へ回すつもりだそうだ。

ウッズの社会貢献も、ミケルソンのそれと同様、息が長い。そして近年は、よりシステマティックに活動範囲を大幅に拡大している。

その中で特に目を引くのは、やはり未来の担い手である子供たちへの教育のサポートだ。

「僕は以前は、子供たちを育てるためにゴルフを活用しようと考えていた。でも今は、ゴルフより、スポーツより、教育こそが優先されるべきものだと思っている。だから僕の財団も教育にフォーカスしている」

今年2月に目を輝かせながらそう語ったウッズは、経済的理由で高度な教育を受けたくても受けられない子供たちを米国のみならず世界中から集め、これからの未来を支える学問としてSTEM(S=サイエンス、T=テクノロジー、E=エンジニアリング、M=マセマティクス)を中心に学ばせる学校施設、「TGRラーニングラボ」を開設している。

その始まりはカリフォルニア州アナハイムだったが、すでにワシントンDCやフィラデルフィア、ニューヨーク、フロリダにも支部を広げ、世界中から集めた優秀なプロフェッショナルたち5000人がSTEM教育に従事。2006年以来、卒業生は16万5000人を超えている。

「これから何百万人もの子供たちを育てることを僕は誇りに思う」と、ウッズはうれしそうに胸を張る。

ウッズもミケルソンも、自分のためではなく未来を担う子供たちを助け、育成するチャリティのために9ミリオン獲得を目指す。

そのために戦う「ザ・マッチ」は、2人の夢、大勢の子供たちのビッグな夢を乗せた「ドリームマッチ」になりそうだ。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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