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米PGAツアー、ボーナス15ミリオンへ、大幅値上げ!やっぱり出元は「埋蔵金」?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
米ツアーのジェイ・モナハン会長。斬新な変革を次々発表する(写真/舩越園子)

【お金の出元は、埋蔵金?】

一体どこから、それほどの大金が出てくるのだろうか。思わず、そう首を傾げたくなるほどの豪勢な新システムが、18日(米国時間)、米PGAツアーから発表された。

2007年からシーズンエンドに行なわれてきたフェデックスカップ・プレーオフは4試合に亘るサバイバル戦。最終戦のツアー選手権終了後にフェデックスカップのポイントランクで最終的に1位になった選手が年間王者に輝き、10ミリオン(=1000万ドル=約11億円)のビッグボーナスを手に入れるシステムで、今週20日から、その最終戦、ツアー選手権が開幕する。

しかし、この現行システムは今年限りとなり、来年からは、新しいシステムに変わることが発表された。

何より驚かされたのは、年間王者に贈られるビッグボーナスが10ミリオンから15ミリオン(約16.5億円)へ、一気に引き上げられること。さらに、ボーナスは最終ランクに基づいて参加者全員に贈られるのだが、その総額も、これまでの25ミリオンから一気に60ミリオンへ拡大されるという。

昔から、「米ツアーのどこかには埋蔵金が隠されている」という噂がある。もちろん、それは、極端なほどの右肩上がりで拡大成長を続け、あのリーマンショックの後遺症さえモノともしなかった米ツアーのサクセスストーリーに対する尊敬の念から生まれたもので、噂というより、例え話のようなもの。

「たとえば、どこかに埋蔵金が隠されていて、それを必要に応じて、小出しにして活用しているのではないか?」という例え話。

それほど、米ツアーの歩みは潤沢な財力に裏打ちされ、豪華な魅力を常に提供し続けている。

【年間王者の決戦はポイント方式からスコア方式へ】

来季からのプレーオフの変化をもう少し詳しく説明すると、現行のプレーオフ4試合は来季からは3試合に減らされる。

第1戦のノーザントラストにはポイントランクの125位まで、第2戦のBMW選手権には70位まで、そして最終戦のツアー選手権には30位までが進出。

現行システムでは、最終戦を迎えた段階でこのトップ30人の手持ちのポイントがリランキングされるなど難解な部分が多々あり、ツアー選手権という大会で優勝しても、ポイントランクでは1位にはならず、年間王者は別の選手というケースは何度もあった。

たとえば昨年は、大会優勝者がザンダー・シャウフェレ、年間王者はジャスティン・トーマスで、「2人の優勝者」が表彰式に並ぶという光景をすんなり理解できないファンはもちろんいただろう。

だが、来季からは、ツアー選手権に出場するトップ30に「持ち点」としてスコアを付与し、そこから大会を戦うシステムになる。

ポイントランク1位でツアー選手権を迎えた選手は「10アンダー」の持ち点。2位から5位までは、それぞれ「8アンダー」「7アンダー」「6アンダー」という具合にアンダー数を減らしていき、ランク6位から10位は「4アンダー」、11位から15位は「3アンダー」、16位から20位は「2アンダー」、21位から25位は「1アンダー」、そして26位から30位は「イーブンパー」から大会をスタート。

4日間をベストスコアで戦い終えた選手がツアー選手権の優勝者となり、同時にそれが年間王者になることを意味し、15ミリオンを手に入れることになる。

もはや、表彰式で「2人の優勝者」が並ぶことはない。ツアー選手権で勝ったものがすべてを制し、その決着はスコアのみだから、難解なポイント計算はもはや不要。

今回の大幅チェンジは、そんな「簡単明瞭」が売りである。

【レギュラーシーズンの奮闘も評価する新システム】

さらに驚かされたのは、来季からもう1つ、新たなレースが新設されること。

「ウインダム・リワード・トップ10レース」と名付けられた新システムは、プレーオフ3戦が始まるまでのいわゆるレギュラーシーズンに最も頑張ったトップ10に、ご褒美を与えるというものだ。

現行システムでは「レギュラーシーズンの頑張りがプレーオフ4試合でひっくり返る」という不平不満も聞かれていた。そうした声に応える形で新設されたのが、このウインダム・リワード。

レギュラーシーズン最終戦のウインダム選手権終了後、ポイントランク1位には2ミリオン、2位には1.5ミリオンという具合にボーナスが支給され、10位でも50万ドルがもらえるという魅力的な話。選手のモチベーションが上がることは疑いようもない。

選手たちの反応も、当然ながら良好だ。昨季の年間王者、ジャスティン・トーマスは、ツアー選手権4日間を持ち点を付与した上で戦えば「72ホールでベストスコアを出しても優勝できないケースもあるよね」と指摘した上で、「でも、完璧なシステムなんてありえない。米ツアーは僕らのために本当によく力を尽くしてくれている。とてもいいシステムだと思う」と高評価。

もちろん、「とてもいいボーナスだ」という意味も、含まれていないはずはない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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