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タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンが同組で回ることの意味と意義

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
今年のマスターズでは一緒に練習ラウンドしたが、試合で同組は今週が4年ぶりとなる(写真:ロイター/アフロ)

今週は「第5のメジャー」、プレーヤーズ選手権がフロリダ州のTPCソーグラスで開催される。そして、開幕前の話題は予選2日間のペアリングに集中している。

タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンが2014年の全米プロ以来、4年ぶりに同組で回るからだ。ウッズとミケルソンと言えば、ひと昔前なら、しばしば同組で回り、熱い死闘を演じていたが、最近では4年間も同組が無かったのだなあと、今さらながら、つくづく思う。

もちろん、そうなった最大の理由は、ウッズが腰の手術を受け、戦線から離れた日々が続いたからではあるのだが、よくよく考えてみれば、ちょうど4年前ぐらいからウッズもミケルソンも優勝争いを演じる機会が減っていき、仮に2人が同じ試合に出ていたとしても、2人をあえて同組にするスリルや面白みが減っていたために、米ツアーやメジャー大会主催者側は、わざわざ2人を同組にしなくなっていたのである。

ともあれ、「過去にウッズとミケルソンが一緒に回ったのは36回(25大会)もあり、その中でウッズの平均スコアは69.66、ミケルソンのそれは 69.88と僅差。だが、勝利数はウッズが7勝も挙げたのに対し、ミケルソンは2勝だけだ」という記録が米メディアによって記されている。

【ミケルソンの記憶】

その36回の中で、ミケルソンが最も強く印象に残っていると語ったのは、2000年の全米オープンだった。ペブルビーチで開催されたあの全米オープンは、最終的にはウッズが2位に15打差を付ける圧勝となり、ミケルソンはウッズから21打差の16位タイに終わった。

当時、ミケルソンはウッズと同じ時代にプロゴルフの世界に居合わせてしまった自身の運命を深刻に考えたりもしたそうである。

「2000年の全米オープンが一番、僕の心に残っている。一体どうしたら、このウッズとの戦いに勝てるのかと、あのころは本気で思い、自分が直面していた現実が信じられず、信じたくないと思った。15年前は、それが本当に心に突き刺さった」

【私の記憶】

だが、ウッズとミケルソンの戦いと聞いて、私がすぐさま思い浮かべるのは2002年のべスページでの全米オープンだ。

2000年のペブルビーチでミケルソンはウッズの圧倒的な強さに絶句させられたと今になって明かしたが、当時の2人はいろんな面で激しく競り合っており、そのせいもあって2人は犬猿の仲だとまで言われていた。

そして、2人はべスページで勝利を競い合い、どちらも本当に本当にいいプレーを見せ、そして勝利したのはウッズ。ミケルソンはまたしても全米オープン優勝のチャンスを逃し、全米オープン優勝は彼の悲願となった。

だが、3打差で惜敗したミケルソンにベスページの大観衆は本当に優しく、ギャラリースタンドからバースデーケーキを掲げ、ミケルソンのためにみんなが「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」とバースデーソングを合唱し、ミケルソンは悔しさを噛み締めながら一生懸命に笑顔で頷き、、、、そんな光景が今でも鮮やかに思い出される。

ミケルソンは負けてしまったが、あの2002年の全米オープンは本当にいい戦いで、ファンにとっても、私にとっても、忘れがたき大会になった。

【一味違うドラマ!?】

ウッズとミケルソンがともに回るということ――それは、ひと昔前なら熱い闘志をぶつけ合う死闘だったが、その中にお互いのリスペクトがあったからこそ、人々の心を打つ戦いになった。

そして今、ウッズは42歳、ミケルソンは47歳。経験と齢を重ねた2人は、今週のTPCソーグラスで、ひと昔前とは一味違うドラマを披露してくれそうな予感がする。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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