メジャー14勝の元王者、タイガー・ウッズが今ごろ「ドリーム・カム・トゥルー」と感無量なのは、なぜか?

メジャー14勝の元王者が思わず「夢が叶った」と表現した背景を考えてみた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「ドリーム・カム・トゥルー」(夢が現実になる)という言葉をプロゴルファーが使うとしたら、多くの場合、初優勝を挙げたとき、あるいはメジャー優勝などビッグな勝利を挙げたとき。

いずれにしても、幼少時代から夢にまで見てきた大きなことをついに現実化したときに使うもの。その言葉を、あのタイガー・ウッズが今ごろになって使ったのを知って、「ちょっと大袈裟なんじゃない?」と最初は思った。

昨年11月下旬から開催されたヒーロー・ワールド・チャレンジで10か月ぶりの試合復帰を果たしたウッズ。

その後、「2018年はフルスケジュールで出る」と公言し、まずは2月15日~18日のジェネシス・オープン出場を表明。続いて、1月25日~28日のファーマーズ・インシュアランス・オープンにも出場することをツイッターで明かした。

ファーマーズ・インシュアランス・オープンの舞台となるサンディエゴ郊外のトーリー・パインズ(カリフォルニア州ラホヤ)はウッズが同大会7勝と2008年の全米オープンも制した大得意コース。昨年も同大会から戦線復帰した。

大好きなそのコースで1年ぶりの米ツアー復帰を果たし、翌月はジェネシス・オープンへ。その舞台、ロサンゼルス郊外のリビエラ(カリフォルニア州パシフィック・パリセーズ)は1992年にウッズが16歳のアマチュアにして米ツアー初出場を果たした思い出の地。当時の大会名はニッサン・ロサンゼルス・オープンだった。

ただし、過去11回出場したリビエラで、ウッズは何度も勝ちかけながら勝つことができず、そうこうしているうちに彼は同大会には出場しなくなった。そのため「リビエラはウッズとは相性の悪いコースだ」と、米ゴルフ界では長年、言われ続けてきた。

しかし、タイガー・ウッズ財団が同大会のサポートを開始したため、42歳になった今年のウッズは、久しぶりにリビエラに舞い戻るばかりでなく、大会ホストとして、そしてプレーヤーとして、この地の土を再び踏むことになる。

「僕がアマチュアとして、ジュニアとしてプレーした場所、そしてゴルフの最も歴史的な地で、大会ホストとしてプレーできることは素晴らしい。ドリーム・カム・トゥルーの思いだ!」

こうしたバックグラウンドを知っても、「大袈裟なんじゃない?」と思う方々は、やっぱりいると思う。メジャー14勝を挙げ、世界ナンバー1に君臨してきた王者が、大会ホストとして同地に戻ることを「そこまで言うの?」と思うかもしれない。いや、私も最初はそう思ったのだ。

だが、ふと気が付いた。

以前、私が子宮頸がんで手術を受けた翌朝、目が覚めると、ナースから「生まれ変わった気分しますか?」と尋ねられた。最初はそこまで感じなかったが、それから刻一刻と、その意味が実感できるようになるのが不思議でたまらなかった。

一時は命の限界さえ意識させられた者が、その恐怖から解放されたとき、気分は心底、一新される。何もかもが以前とは異なって見え、異なって感じられる。見慣れた景色さえもが、まったく異なる美しくて新鮮なものに思えた。

今、ウッズもそんな気分なのかもしれない。腰の悪化。痛みと苦悩。手術後の長いリハビリと戦線離脱。一時は「先が見えない」と言って、引退も示唆する発言さえしていた。

そんなウッズが心身ともに元気になり、大好きなコースで復帰戦、思い出の地で大会ホストとなって復帰第2戦を迎えようとしている。

こんな未来が僕に開けるなんて信じられない。夢みたい、、、、、という気分なのではないか。それが「ドリーム・カム・トゥルー」という、傍から見れば少々大袈裟な表現になってしまったのではないか。

そう考えると、「とにかく、頑張れ!」と、ウッズにエールを送らずにはいられない。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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