タイガー・ウッズは マスターズに出る?出ない? その可能性と移りゆく存在感

昨年マスターズの練習ラウンド風景。今年、ウッズのこんな姿は見られる?見られない?(写真:ロイター/アフロ)

【来週はマスターズ】

いよいよ来週はシーズン最初のメジャー、マスターズが開催される。毎年、この時期はマスターズの優勝候補とされる選手たちの名前が上がり、話題になるのだが、この20年、たとえどんな形にせよ、この時期にこの名前が上がらなかったことは一度たりともない。

誰の名前か?

もちろん、タイガー・ウッズだ。

そして、その状況は今年も例外ではない。とはいえ、言うまでもなく今年のウッズは優勝候補としてではなく、別の形で話題に上がり続けている。

果たしてウッズはマスターズに出るのか、出ないのか。

米ゴルフ界とウッズ・ファンは、今なお、その答えを待ち続けている。

昨年大会ではアプローチ・イップス克服の度合いが注目されていた(写真/舩越園子)
昨年大会ではアプローチ・イップス克服の度合いが注目されていた(写真/舩越園子)

【人々の一縷の望み】

普通に考えれば、ウッズが来たるマスターズに出る可能性はあまりにも低い。「出るわけがない」「出られるはずがない」と考えるほうが自然であろう。

というのも、昨夏に突然、腰の手術を受け、その後にすぐさま追加手術を受けたウッズは、8月のウインダム選手権を最後にツアーから離れ、リハビリに励む日々。すでに7か月以上も戦線離脱の状態にある。

そんな中、3月始めにはウッズ番記者の一人からSNSで「タイガーの腰は悪化の一途」「戻ってこれそうにない」と発信され、そんなにも酷い状態なのかと人々は驚き、騒然となった。

だが、ウッズのマネージャーがすぐさまそれを否定するコメントを出し、ウッズ自身はシュミレーションゴルフのスクリーンの前で9番アイアンを振る動画をツイッターで発信してユーモラスに“反撃”。

「いい感じで前進しているよ」

動画に付されていたのは、その一言だけ。だが、その一言こそが、今なおウッズのマスターズ出場を心待ちにする人々の一縷の望みになっている。

「いい感じで」どのぐらいまで「前進」しているかは不明のままだ(写真/平岡純)
「いい感じで」どのぐらいまで「前進」しているかは不明のままだ(写真/平岡純)

【初日の朝まで可能性はある】

腰の状態がいい感じで回復しているのなら、ウッズは大好きなオーガスタを復帰の場に選ぶのではないか――そう期待する声がどこからともなく聞こえてくる。

通常、試合にはエントリーのデッドラインというものがある。米ツアーのレギュラー大会なら前週の金曜日の東部時間の午後5時と決められている。

しかし、独自路線を歩むマスターズにはエントリーのデッドラインは無い。初日のスタート時間までにレジストレーションを行ないさえすればOK。

つまり、ウッズが「出場しない」と事前に明言しない限り、初日の朝までウッズ出場の可能性は残されることになる。

今年のマスターズ招待者(Invitee)のリストを見ると、そこには確かにタイガー・ウッズの名前がある。

その下には「今年の大会でプレーしない過去の優勝者」のリストがあり、そこにはアーノルド・パーマーやジャック・ニクラスといった大物たちの名前がずらりと並んでいる。

現実的には、ウッズの名前はその「プレーしない過去の優勝者」リストに載っているほうが自然と言えば自然だ。

しかし、ウッズが「プレーしない」と言わない限り、ウッズ出場への望みは捨てないし、捨てたくはない。米ゴルフ界も、マスターズも、ファンも、心の片隅でそう思っている。

【移りつつある存在感】

とはいえ、やっぱりそれはファンをはじめとする人々の一縷の小さな望みに過ぎないのかもしれない。

現実の世界におけるウッズは、マスターズでプレーする準備をしているとはとても思えないほど、きわめて精力的にビジネスに精を出している。

ゴルフコースの設計監修、然り、

そして米国時間の今日29日、米PGAツアーはウッズとの新たな協力体制を整えたことを誇らしげに発表した。

1926年にロサンゼルス・オープンとして創設され、近年は名門リビエラCCを舞台にノーザントラスト・オープンの名前で親しまれてきた大会の冠スポンサーが、来年からはヒュンダイに変わるのだが、そこにタイガー・ウッズ財団がホスト・オーガナイゼーションとして加わり、ヒュンダイとともに大会スポンサーを務めることが正式に決まったという。

今年バッバ・ワトソンが優勝した大会は来年から「ウッズの大会」(写真/舩越園子)
今年バッバ・ワトソンが優勝した大会は来年から「ウッズの大会」(写真/舩越園子)

これで、既存のクイッケンローンズ・ナショナル、ヒーロー・ワールド・チャレンジに続く、3つ目の「タイガー・ウッズの大会」が創設されることになる。

かつてニッサンオープンと呼ばれた時代もあった同大会がヒュンダイの名に変わり、かつてビュイックと契約していたウッズがヒュンダイと協力して大会をスポンサードすることには時代の変遷を感じるが、同時にウッズの存在感の変化も感じさせられる。

そう言えば、先週と先々週、アーノルド・パーマー招待とマッチプレー選手権を続けざまに制し、世界ナンバー1に返り咲いたジェイソン・デイは、毎日のようにウッズと携帯メッセージのやり取りをしていたそうだ。

「自分らしくあれ、自分の世界に居続けろとタイガーからアドバイスをもらった」

それがメンタル面の大きな支えになったとデイは言っていた。

それを聞いたとき、かつてゲーリー・プレーヤーの激励の手紙をゴルフバッグに入れてオーガスタを制したチャール・シュワーツェルのマスターズ優勝秘話を思い出した。

ウッズの存在感は、もはや試合という戦いの舞台の上では縮小し、別の場所ではこれまで以上に大きくなりつつある。ちょっぴり淋しいけれど、それは紛れもない事実であり、それが現実だ。

しかし、それでもなお一縷の望みを捨てる必要はない。最後の最後まで期待するのも、それはそれで、いいではないか。

ウッズがマスターズに出場するか、しないか。初日の朝まで、ホープだけはある。

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て、89年に独立。93年渡米。以後、米ツアー選手たちと直に接し、豊富な情報や知識をベースに米国ゴルフの魅力を独特の表現で発信し続けている。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。26年間の米国生活に区切りを付け、2019年から日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、さらには武蔵丘短期大学客員教授を務めるなど活動範囲を広げている。

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