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マキロイ出遅れも挽回宣言。「僕にはできる」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
笑顔で登場したマキロイだが、初日は大幅出遅れ。しかし……(写真/舩越園子)

【マキロイは、ついにエネルギー切れか?】

米ツアーのフェデックスカップランク上位125名が集結するプレーオフ・シリーズの第1戦、バークレイズが始まった。

その初日。6アンダーの単独首位に立ったのはボー・バンペルト(米国)。5アンダーの2位グループには8名がひしめく団子状態。そして、その“団子”の中にはハンター・メイハンやジム・フューリックなど、そこそこ知られた名前もあるものの、どちらかと言えば地味な選手ばかりが集まったのは、ちょっとした驚きだった。

だが、それ以上に人々が驚かされたのは、全英オープン、全米プロを続けざまに制し、世界ランク1位の王座に君臨するローリー・マキロイ(英国)が3オーバー、102位と大きく出遅れたことだった。

10番からスタートしたマキロイは12番でダブルボギーを喫すると、13番と18番でボギーを叩き、前半は「40」。後半は5番で初バーディーを奪ったが、それ以上の巻き返しはならず、下位に沈んだ。

「グリーンの外してはいけない側にばかり外し、そこからパーを拾えなかった。なんとか流れを変えようとしたが、できないうちに終わってしまった」

ブリヂストン招待で優勝した世界選手権シリーズ初制覇をはさみ、メジャー2連勝を達成する快挙を達成したのだから、肉体的にも精神的にも疲労が激しいのではないか。さすがのマキロイも、プレーオフ・シリーズに突入したところでエネルギー切れなのではないか。

そんな懸念の声が上がり、会場のリッジウッドCCには暗雲が立ち込めた。

【巻き返せるかどうかが意味するもの】

だが、マキロイは「疲労」をきっぱり否定した。

「違う場所へ行って試合をしてという転戦生活には慣れている。いまさら何も新しいことはない。疲労は(今日の出遅れの)問題ではない。問題は、先週あたりにやっておくべき練習ができていなかったことだ」

米メディアの追求はストレートで手厳しい。「要するに、練習不足のまま、この大会に臨んでいるということか?」

まるで、マキロイが有頂天になって練習を怠ったかのごとく、それを批判するかのように尋ねた。

「それは……それも問題ではない。あんなにグレートな数週間を得たのだから、そのあとの祝福は不可欠だ。だから僕は僕自身、それを楽しんだ」。

文句あるかと言わんばかりの返答ぶり。自分が思うままに言い返すマキロイの姿勢は、以前のマキロイよりやっぱり強気で、王者ならではの自信が溢れていた。

ただし、アスリートは結果が命。マキロイ自身、出遅れは出遅れで認めざるを得ず、その原因は真摯に見つめた。

「試合に挑むまでの時間が、もうちょっと必要だった。これから(ランチを)急いで食べたら、練習場に行って、先週のうちにやるべきだった練習をして、僕のゴルフを実戦レベルへ引き揚げ、追い付いてみせるよ」

出遅れても、焦っては見せなかった。いや、多少の焦りは本当はあったのかもしれないが、残る3日間で巻き返せる、追い付ける、追い抜けるという自信を漲らせていた。

「このスコアで発進した状況は厳しい。でも、まだチャンスはある。このコースならバーディーを重ねていくチャンスはある。僕なら、それができると感じている」

「僕ならできる」と言ったマキロイの言葉は「勝つためだけにプレーする」を常套句にしていたかつてのタイガー・ウッズを思わせる一言だった。

首位と9打差の102位から巻き返して大逆転優勝したら……。

かつてのウッズは、そんな「お話みたいなストーリー」を次々に現実化していった。マキロイの今季の成功は、すでに「お話みたいなストーリー」ではある。が、メジャー大会のみならず、米ツアー大会やどこのどんな大会でも離れ業を披露し続けることで、ウッズ時代にとって代わる揺るぎないマキロイ時代を構築できるのではないか。

明日の2日目、マキロイが巻き返せるかどうかには、そんな時代の行方、時代の見通しもかかっている。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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