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漂白剤でシャツが変色 洗濯時の「あるある」事故とその注意点を解説

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
洗濯物にガッカリする女性(写真:政処 裕介(まろけ)/アフロイメージマート)

 「白いワイシャツの襟汚れに漂白剤をかけたら真っ赤に染まっちゃった!」というツイートが先日話題になりました。白いものをより白くするつもりが赤く染まってしまったら、それは誰しも驚くことでしょう。

 ただこういった例は総数としては少ないことかもしれませんが、真っ赤ならずとも、漂白剤をかけたり漬けたりした夏の白物衣類が「ピンク」や「薄ピンク」に変色してしまった、という経験のある方は、もう少し多いのではないかと思います。

 実はこの事例、衣類用漂白剤メーカーサイトの「衣類のトラブルSOS」https://www.kao.com/jp/soudan/sos/bleach_07.html 

でも取り上げられていますので、意外と「あるある」な事故のようす。白い衣類に、肌に塗った「日焼け止め」成分が移って染み込んだ部分に、塩素系漂白剤を使うと化学反応でピンク(赤)色に変色してしまうという理路のようです。

 こう変色してしまった場合の回復方法なのですが、案外単純で、通常の洗濯用洗剤(洗浄力の強い液体洗剤推奨)を、この変色部分に塗布して「日焼け止め」成分をしっかりと洗い、濯ぎ流すことで落とせるのだそう。

 塩素系漂白剤が染み込んだ部分を、先によく水で濯いだその後に洗剤をしみこませるほうがより効果的で、一度で落ちない場合には再度繰り返すこともポイント。もしうっかりこういう事象に出くわしてしまった場合には是非試してみてください。

 さて、まさか肌の方に塗ったつもりの日焼け止めが原因で衣類が変色するなんて想像もつかなかったという方。他にも、洗濯に際しては思いもよらぬ禁忌があります。すでに知っている方にとっては「当たり前」かも知れませんが、その中の代表例をご紹介します。

「しっかり汚れを落とそうとお湯を使ったら血のシミが取れなくなっちゃった!」

toraemonさんによる写真ACからの写真
toraemonさんによる写真ACからの写真

 海外製のドラム式洗濯機は高温のお湯で洗うので洗浄力が高い…という「前知識」があったため、子どもが多量の鼻血で汚したシーツを良かれと「湯洗い」したらしっかりシミが残ってしまった。というご相談を受けたことがあります。

 確かに血液というのは、付くと怖いし厄介そうな汚れです。より強いお湯の力で落としたいと考えてしまうのも無理はありません。しかし血液の主成分はたんぱく質で、熱を加えると凝固変性してしまうという性質があります。

 「お湯」は50度ほどでも血液を変性させてしまうので、洗濯に使うなら40度以下が目安のぬるま湯にとどめましょう。また血液は付着して時間が経てば経つほどやはり凝固して落としにくくなります。なるべく血が乾く前に水でよく揉みながら洗い濯ぎ、それでも残ってしまったシミには「液体の酸素系漂白剤(過酸化水素)」を塗布して洗濯しましょう。

「色落ちしないって書いてあった漂白剤を使ったのに、服が変色してしまった!」

toraemonさんによる写真ACからの写真
toraemonさんによる写真ACからの写真

 いわゆる衣類用の一般的な「漂白剤」には、大きく分けて「塩素系漂白剤」「酸素系漂白剤」の二系統があります。

 「塩素系漂白剤」の主成分は次亜塩素酸ナトリウム。いわゆる塩素の臭いが強いタイプの液体で、漂白力も強力です。汚れと一緒に色柄まで落としてしまうため、基本的に綿やポリエステルといった強めの「白物繊維」にしか使えません。

 「酸素系漂白剤」には、これにも二系統あり、「液体の酸素系漂白剤」、この主成分は過酸化水素。そしてもう一つが「粉末の酸素系漂白剤」、こちらの主成分は過炭酸ナトリウムで、液体と粉末いずれの「酸素系漂白剤」も「塩素系漂白剤」までの漂白力はありません。基本的に「白物のほか色柄繊維にも使える」ことが謳われています。

 そのため、「塩素系漂白剤」には(強い臭気があることから)警戒心があっても、比較的マイルドな「酸素系漂白剤」なら何をしても大丈夫、というような油断が生じがちなのかも知れません。

 しかし、実は「塩素系漂白剤」も「酸素系漂白剤」も、汚れの色素を「酸化」させて壊し、薄く、白くするというしくみであるため、衣類の染料によっては酸素系漂白剤による酸化によっても色素が壊れ、脱色してしまうことがまま起こります。

レモンウォーターさんによる写真ACからの写真
レモンウォーターさんによる写真ACからの写真

 残念ながら色素が壊れ脱色してしまった場合には、回復させようがありません。また、ウールやシルクといった動物性の繊維は、「粉末の酸素系漂白剤」を使うと縮みが生じたり変形、変色してしまうことがあります。過炭酸ナトリウムの水溶液は(弱)アルカリ性になり、やはり動物性繊維のたんぱく質を変性させてしまうためです。この場合も失敗してしまったらリカバリのしようはありません。

 ウールやシルクといったデリケートな繊維の衣類に付いてしまったシミには、過酸化水素が主成分の「液体の酸素系漂白剤」が使えます。こちらの液性は(弱)酸性なので、同じ「酸素系漂白剤」といっても、性質が異なるためです。

 また「粉末の酸素系漂白剤」は、綿やポリエステルといった比較的強い繊維であっても、「草木染」「生成り(草の元々の色合い)」「金属系の染料」などで染められたものでは化学反応が起こり、やはり変色、退色するので使用しないようにしてください。

 まとめると、以下のようになります。

「塩素系漂白剤」…非常に強力な漂白力。基本的に綿やポリエステルなど、強い繊維の「白物」にのみ使用可能。

「液体の酸素系漂白剤」…基本的に水洗いできる衣類であれば使える(金属製のボタンやファスナーは除く)。ウールやシルク繊維のシミでも使用可能。ただし漂白力は弱め。

「粉末の酸素系漂白剤」…基本的に水洗いできる白物、色柄繊維の衣類に使える(金属製のボタンやファスナーは除く)。ただしウールやシルク繊維は変形や変色の恐れがあるので使ってはいけない。綿やポリエステルなど強い繊維でも、「草木染」「生成り(草の元々の色合い)」「金属系の染料」などで染められたものにも使ってはいけない。

 最後に、汚れの色素を「酸化」させて壊す(酸化型漂白剤)「塩素系漂白剤」「酸素系漂白剤」のほかに、「還元」させて白くする(白くもどす)還元型漂白剤というものがあります(主成分は二酸化チオ尿素など)。これは主に鉄サビ汚れや、塩素系漂白剤を使ったさい黄色く変色させるなど酸化汚れした繊維に使うなど、ごく限られた用途で使用されるものになります。あまり使用するシーンはないかも知れませんが、頭の片隅に留めておいてください。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

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