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メディアもプラットフォームも信頼度が低いが、フェイクニュースへの危機感は乏しい日本

藤代裕之ジャーナリスト
調査を説明するエデルマン・ジャパンのロス・ローブリー社長

PR企業エデルマン(Edelman)が世界28カ国を対象に行っている信頼度調査「エデルマン・トラストバロメーター」。2018版の日本における調査結果のセミナーが15日行われました。調査テーマは「真実のための戦い (The Battle for Truth)」。日本はメディアもプラットフォームもどちらの信頼も低く、フェイクニュースを危惧する人の割合は少ない、という不思議な結果が明らかになりました。

進む信頼の二極化

セミナーはスマートニュースのイベント会場で行われ、エデルマン・ジャパンのロス・ローブリー社長が調査結果を説明しました。

「中国とアメリカを比べると、中国は政府に対する信頼は非常にある。よりよい未来に導いてくれると期待されているのはアメリカではNGO/NPOだが、7割の人達が中国政府に期待している。日本は2割が政府、企業で、メディアへの期待は低い」(ローブリー社長)

日本国民の自国に対する信頼度ランキングは27位(最下位はロシア、1位は中国)です。2017版に比べ極端に信頼度が上昇したのは中国など6カ国、極端に低下したのはアメリカなど6カ国、日本は中間ぐらいです。調査全体については、以下の記事がまとまっています。この記事ではメディア関連の部分について掘り下げて紹介します。

フェイクニュースへの危機感は乏しい

「虚偽の情報やフェイクニュースが武器として利用される可能性を心配している人の割合(%)」が最も高いエリアはメキシコやアルゼンチン、次にアメリカ、韓国、中国、ロシアのエリアです。日本は62%で、世界的に見ると低いエリアといえ、危機感が乏しいようです。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からフェイクニュースへの危惧
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からフェイクニュースへの危惧

メディアの信頼度はワースト3位

メディアに対する信頼度で日本は調査国中ワースト3位(32%)。最下位はトルコ(30%)、次いでオーストラリア(31%)。1位は中国(71%)、インドネシア(68%)、インド(61%)です。50%以下が22カ国あり「メディアへの不信は調査対象国で蔓延している」としています。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からメディアに対する信頼度
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からメディアに対する信頼度

メディアとは何か?

興味深いのは、「メディア全般」という言葉はどのようなものを指すと思われましたか?という質問項目です。

ソーシャルメディアの登場で誰もが発信できるようになり、スマートフォンはいつでも、どこでも、情報を得られるようになり、メディア=新聞・テレビ・雑誌・ラジオの4マスメディア、という構図が崩れています。フェイクニュースの問題は、プラットフォームもメディア的な責任を追うべきだという議論を引き起こしています。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からメディア全般とは何か
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からメディア全般とは何か

世界と比べると、日本はソーシャルやインフルエンサーの割合が低く、ジャーナリストの割合が高くなっています。

「日本の場合はジャーナリストが高く、ソーシャルは26%でメディアだと思われていない。インフルエンサーは他の国に比べて低い。メディアというのは堅いと考えられているのではないか」(ローブリー社長)

プラットフォームも信頼されてない

検索エンジンとソーシャルメディアというプラットフォームに対する信頼も日本は低く(37%)、2017版より1ポイント上昇していますが、ワースト5位にとどまっています。最下位はアイルランド(33%)、最も高いのはインド(73%)です。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」

ジャーナリズムの期待は高まるものの…

トランプ以降のアメリカやヨーロッパでは、フェイクニュースの温床としてプラットフォームが批判されています。GoogleやFacebookは、ロシアのプロパガンダを議会で追及されています。そこで、新聞の有料購読者が増え、ジャーナリズムへの注目が高まっているのですが…

日本におけるジャーナリズムへの期待は41%で、2017年の36%から5ポイント上昇しています。ただし、プラットフォームとの比較で見るとそれほどでもなさそうです。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」から信頼度のギャップ
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」から信頼度のギャップ

日本はニュースに無関心?

「社内でも議論になった」とローブリー社長が紹介したのがニュースの消費に関する項目。会場にも小さなざわめきが広がりました。

日本はニュースに無関心な人の割合が最も高いという結果になり、消費する人や拡散する人も非常に低くなっています。これは質問に「大手報道機関」という言葉があったことが要因の可能性があるとのこと。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からニュースの消費や拡散の国別表
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」からニュースの消費や拡散の国別表

ローブリー社長は、海外と比較したメディアの好みのギャップの資料を提示しながら、「メディアに期待しているのはファクトだけ。意見を求めてない」と傾向を分析しました。

「2018 エデルマン・トラストバロメーター」から人々が好むメディアの条件
「2018 エデルマン・トラストバロメーター」から人々が好むメディアの条件

メディアが信頼を構築するために

信頼を構築するために政府、企業、NGO/NPOがそれぞれの役割を果す必要があるとし、メディアは「情報の質を監視し、検証された、真実の情報のみがシェアされて流れるようにする」「人々が必要とする情報にアクセスして、生活に関して正しい判断ができるようにする」「他の社会の組織や機関が権力を持ち過ぎないように監視したり、バランスをとったりする」という役割を果す必要があるとプレゼン資料は締めくくっています。

<注>「2018 エデルマン・トラストバロメーター」は、28カ国を対象としたオンライン調査で、実施期間は2017年10月28日~11月20日。詳細なデータはエデルマンのサイトに掲載されています。著者はセミナーにおける「信頼とメディア」をテーマにしたパネルディスカッションの参加者です。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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