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高松経済新聞の記者、イベントに入場できず「記事を削除する」と発言した後に記事削除

藤代裕之ジャーナリスト
予告記事公開時にシェアしたフェイスブックOGPに残る「開催される」の文字

みんなの経済新聞ネットワークの一つ「高松経済新聞」(編集部所在地は、香川県高松市の一般社団法人高松地域情報コンソーシアム内)の記者が「予告」記事を掲載したイベントに訪れたが満席で入場できず受付でトラブルになり、その後「予告」記事を削除していたことが分かった。記者側は削除したのは別の理由だと説明している。

関係者によると、高松経済新聞の記者が会場に訪れたのは開演時間を過ぎてから。満席で入場出来ないとスタッフが伝えたところ、「記事を削除する」種の発言を行い会場を後にした。その後、記事はサイトから削除された。

高松経済新聞は問い合わせに対し、発言(関係者や主催者の説明とは異なるニュアンスだったと主張)とトラブルがあったことを認めたが、記事を削除したのは、入場者数の制限があることが分かり、記事に掲載していないことで読者や主催者に迷惑がかかると考えたからという。追記や修正ではなく非公開(仕様上は非公開と説明)にしたのは「判断ミスだった」と話している。なお、記者は取材ではなくプライベートで訪れていた。

その後、当事者間で話し合いが行われ、記事は再公開され、謝罪が追記された。時系列としては、予告記事は5 月15 日に掲載。19日に削除され、23日に再公開、24日に謝罪が追記された。イベントは19、20日に行われていた。

しかしながら、記事の再公開方法にも問題があった。

高松経済新聞は、同じURLで「予告」記事を、イベントが行われたという「実施」記事に書き換えた。ニュースサイトでは、記事のタイトル変更や記事の追記が行われることがあるが、予告記事(未来)を、実施記事(過去)に書き換えることはあり得ず、別の記事だとみなされる。

この記事はみんなの経済新聞ネットワークを通してヤフーに配信され、ヤフーニュースの地域コーナーに掲載されていた。書き換えを確認したヤフーは記事を削除対応した。

ヤフー広報室によると、ヤフーニュースに対して同一のURL(ヤフーはIDと呼ぶ)に再配信は可能だが、ユーザーへの混乱を避けるために再掲載を行う際は新たなURLで入稿するように配信社に求めている。ヤフーは、みんなの経済新聞ネットワークに対し、別URLで配信することを求め、記事は削除された。

主催者・関係者は、高松経済新聞側の謝罪や説明には納得できない点もあるとし、「あまりに稚拙な対応だった」と述べた。

みんなの経済新聞ネットワークは「無断で記事をいったん削除したのは明らかに正しくない判断だと思います。本来は加筆修正で済んだと思います。また、再掲載時点が公演前から公演後に変わったにもかかわらず、同じ公演が主題だったため同じURLで記事を公開したのも軽率だと思います。当ネットワークでは、いったん公開した記事は原則として削除しないことを基本としていますが、今回の件を踏まえ、取材~記事配信におけるルールの徹底を図りたいと思います。この度は、関係者の皆さま、読者の皆さまに多大なご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます」とコメントした。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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