65歳以上の96%が「元気なうちは働き続けたい」 うってつけの仕事を紹介する

(写真:ロイター/アフロ)

 11月7日、花王の生活者研究センターは「働く実態・働く意識・健康意識と行動・生活価値観」の調査結果を発表した。

 調査によれば、元気なうちは働き続けたいと考えている65歳から74歳までの高齢者男性は、なんと96%。ほとんどの高齢者が、晩年においても働く気満々なのだ。記事にもあるように、現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っている。それなのに、65歳の定年になれば仕事がなくなるという現状は、むしろ高齢者に優しくない。

 65歳までの高齢者男性が仕事をしている理由は「生活維持のため」が72%にものぼる。しかし、65歳を超えると52%、70歳を超えると45%にまで減少していく。それに対して「健康のため」や「ボケ防止になるから」「人との交流ができるから」「生きがいになるから」といった理由が急上昇する。お金のみならず、老後の充実した日々を送るための手段として、仕事は必要とされているのである。

 とはいえ、高齢者がいつまでも仕事にしがみついていたら、若者にはよい仕事が回ってこない。また、せっかく生活の資を得る必要が少なくなったのだから、別の楽しくてやりがいのある仕事に就くことも検討したほうがよいだろう。そこで、高齢者の皆様にうってつけの仕事がある。健康で、ボケ防止になり、人との交流ができて、生きがいにつながる仕事である。

高齢者は子育てに適任

 昔の家族形態は、多くが3世帯以上の同居する拡大家族であった。しかし時代は移り変わり、仕事を求めて都市部に移る若者が増えたため、親子2世代の核家族が増えてきた。そのため高齢者夫婦は、単独で暮らすことになる。また、共働きの若い夫婦は保育園に子供を預けたいと願うものの、ご存知のように都市部などでは、保育士は足りない。例えば東京では、保育士の有効求人倍率は5倍を超えているほどだ。もちろん地方でも、保育士が足りないという声は少なくない。

 そこで注目を集めているのが、高齢者による子育て支援である。高齢者は社会経験も豊富だし、様々な知識を持っている。とりわけ昔の遊びなどは、子供たちにも受け入れられやすく、情操教育の効果もあるようだ。多くの高齢者は自分の子供を育てた経験もあるから、子供の扱いにも慣れている。

 とはいえ保育士になるには、大学や専門学校など所定の学校を卒業するか、国家試験に合格する必要があり、ハードルが高い。したがって国は、2015年度から子育て支援員という制度を設けた。子育て支援員の認定は、20時間ほどの研修を受講するだけで得ることが出来る。しかもほとんどの自治体では、研修費は無料だ。せっかく無料で勉強できる機会があるのだから、受けられたほうがよいと思われる。

 また、子育て支援を行うシニア人材のことを、特別にグランドシッターという。これは、一般社団法人日本ワークライフバランスサポート協会が認定する、民間資格である。こちらの場合、税抜き43,000円の研修費用はかかるが、研修期間は2日間の10時間でよい。より短い時間で資格を得ることができる。

 内閣府の調査では、高齢者のうち「生きがいを感じている」と答えた人の割合は、すべての高齢者では81.7%だが、小さな子供の世話をしている高齢者では91.3%という結果が出ている。生きがいとは人生の意味や価値のことであり、それらが生きる喜びや楽しみにつながる。子育てに関わることは、自らの人生を意味のあるものへと変えることになるのである。

 人生を有意義なものとするためには、人生の目的を新たに見出すことだ。ミシガン大学でパブリックヘルスを研究するヴィクター・ストレッチャー教授によれば、生きる目的があれば、健康で長生きもできるようになる。アメリカの中年男性7000人の生きる目的を7段階に分けたとき、生きる目的が1段階上がっただけでも、死亡リスクは12%減ることが明らかになっている。心臓疾患のリスクが減り、アルツハイマーやがん、脳卒中などの病気にかかる確率も、生きる目的の強さに応じて大きく変わっていく。病は気から、というが、生きている実感が得られることによって、病気もまた改善されるようである。

みんなで子育てする社会に向けて

 誤解しないで頂きたいのだが、なにも筆者は、足りない保育士に代わって経験豊富な高齢者が子育てを担うべきだ、などとは言っていない。たしかに保育士は専門性の高い仕事であり、正しい知識や見識のもとに業務が行われなければ、子供に悪影響が及ぶことになるだろう。

 しかし一方で、保育士の資格を保有する者が、子育て支援員やグランドシッターを適切に促すことができれば、シニア人材はよい影響を与えることができる。人を育てるためには、様々な経験が必要である。そのような経験を高齢者が補うことができれば、子供たちはより深いレベルで知見を身につけ、成長することができるようになるだろう。

 ようするに、専門人である保育士が柱となり、一般の教養人が子育てに関わることができれば、多様な二―ズに応じた子育てができるようになる。一口に高齢者といっても、すべての高齢者は個々の経験を積んでいる。よって様々な高齢者と関わることは、多様性を育む機会にもなる。そういった機会を多く設けることは、たしかに創造性の求められるこの時代において、人の育成に向けた最善策の一つだと言えるのである。

 かつての日本は、家族のみならず地域社会全体で子育てをしていた。そうした仕組みがあったからこそ、骨太の日本人が生まれたのである。子供たちを健全に育て上げるには、高齢者の力が必要だ。どうか日本の未来のために、これからも力を貸して頂きたいと切に願うばかりである。