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新チャイナ・セブンが習仲勲の創った「革命の聖地」延安へ

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
出典:新華社

 10月27日、新チャイナ・セブンが揃って延安を視察。習近平がいかに父の敵討ちのために新政権を創ったかの証拠だ。NHKは反腐敗で投獄した一派からの報復を恐れるために権力の座にい続けると解説していたが、真相を見る勇気と視点を持っていただきたい。

◆27日、新チャイナ・セブンが「革命の聖地」延安に

 10月27日、新チャイナ・セブンは最初の視察地として、習近平の父・習仲勲が創った「革命の聖地」延安を選んだ。

中華人民共和国中央人民政府のウェブサイトが伝え、中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版「人民網」も、短い動画で伝えている。

 27日午前中、習近平を先頭にした新チャイナ・セブンは、「中国共産党第七回党大会跡」や「毛沢東の旧居」を視察したあと、延安革命祈念館の≪偉大なる歴史工程—中共中央の延安における13年間の歴史陳列≫なども参観した。

 下記に示すのは「中国共産党第七回党大会跡」に立ち、スピーチをしている習近平の姿である。

出典:新華社
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以下に示すのは新チャイナ・セブンが延安革命祈念館を参観している姿だ。

出典:新華社
出典:新華社

拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述したように、習近平は父・習仲勲が鄧小平の陰謀によって1962年に失脚させられ、16年間も監獄・軟禁・監視生活を送らせられたことを心から恨んでいる。

 このたびの三期目は、「父のために仇を討つためだ」と何度も書いてきたが、それを理解してくれる人が多くはなかった。

 しかし10月23日のコラム<習近平と新チャイナ・セブン>に書いたように、10月23日に誕生した新チャイナ・セブンは、拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の縮図のようなものだ。

 このたびの延安訪問は、まさにそれを、余すところなく証明してくれたと思う。

◆NHKは習近平三期目の理由を「反腐敗運動の報復への恐れ」と解説

 ところが、第20回党大会前日、10月15日のNHKの「サタデーウォッチ9(ナイン)」は、「習近平はなぜ三期目をめざすのか」に関して、ゲストの教授(江藤名保子・学習院大学教授)に「習近平は反腐敗運動で、あまりに多くの政敵を逮捕してしまったので、権力を失うと今度は自分が捕まってしまうから、できるだけずっとトップにいて捕まらないようにしている」という趣旨のことを言わせてしまっているのである。

 NHKは中国に関しては、頻繁に間違ったことばかりを報道しているが、このような視点を日本全国に誘導していくのは罪作りなことだ。

 与野党が交代しては政権を奪い、政権を奪うと前政権の大統領を逮捕投獄するということが慣わしのようになっている韓国政治と勘違いしていないだろうか?

 事実を着実に踏むことなく、想像(あるいは期待?視聴者への迎合?)のようなものだけで全国の日本国民の世論を誤誘導していくのは適切ではない。視聴料を国民に支払わせているからには、独断と偏見による報道は慎むべきではないだろうか?

 日本の他のメディアは、「NHKが言ったのだから正しいだろう」あるいは「NHKが言ったのだから、自分たちの報道が間違えてもNHKのせいにできる」とばかりに、一斉に「右へならえ!」をして、間違った概念が日本に根付いていく。

 NHKに警鐘を鳴らしたい。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。2024年6月初旬に『嗤う習近平の白い牙』を出版予定。

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