2014年度「中国人クズ番付」――今年はなんと、削除されてない!

毎年年始に発表される「中国人クズ番付」が、2015年1月3日に中国のネットに公開された。驚くべきは、毎年、即刻削除される大陸のネット空間で、今年は削除されていない! それは腐敗党幹部番付とほぼ一致したからだろう。

◆2014年度、中国人クズ番付

2015年1月3日に、中国人が選んだ「中国人クズ番付」が公開された。いつもは大陸のネット空間で公開されたあと、即刻削除されるので、中国大陸以外の中文海外ネットで見るしかないのだが、なんと、今年は削除されてないことを発見した。

まずは、ランクインしている者の中から、すでに摘発されている人物を拾ってみよう。

1位:徐才厚

胡錦濤政権時代の中央軍事委員会副主席。2014年3月15日、党紀律違反で落馬。同年6月30日、党籍を剥奪され、賄賂などの腐敗問題で最高人民検察院に手渡される。同年10月27日、軍事検察院による腐敗問題調査を終え、起訴された。

徐才厚の2000平方米の豪邸には、「1トンもの現金!」が隠されていたという。取調官が札束を数えようとしたが、とても数えきれなくて、秤(はかり)ではかったため、現金が重さで表現された。豪邸に隠されていた貴金属の数も半端でなく、十数台のトラックでようやく運び終わったとのこと。

徐才厚の「クズ明言」は「私の最大の欠点は、あまりに清廉すぎることだ」。

3位:令計画

胡錦濤・前国家主席の側近中の側近で、中共中央弁公室主任を務めていた。2014年12月22日に落馬。今年1月1日に本コラムhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20150101-00041961/ でも書いたように官商聯盟である「西山会」を創り利権集団となった 。

5位:馮(ひょう)志明

内蒙古自治区呼和浩特(フフホト)市公安局副局長(中国共産党委員会委員)。2014年12月17日、内蒙古自治区人民検察院に摘発され取り調べを受けている。嫌疑は職務怠慢(サボタージュ)、刑具を用いて拷問し自白を強要したこと、および収賄などの罪である。

6位:王某

山西省太原市公安局小店分局龍城派出所の警官。妻が病院の受付で診察を受ける順番札をもらうために患者が並んでいる列に割り込んで、「自分を特別あつかいしろ」と言ったので、看護婦が「みんな順番よく並んでいるのだから順番を守るように」と言った。すると受付が終わってまもなく、暴漢がいきなり受付窓口の内側に入り込んできて、担当の看護婦を殴りつけてきた。同僚がすぐに警察を呼んだところ、なんと、その暴漢は警官だったことがわかった。一部始終が防犯カメラに映っていてお縄。

7位:●(草冠の下に内の文字。ただし内の中は「人」ではなく「入」)(ぜい)成鋼

中央テレビ局CCTVのキャスター。英語が堪能で経済関係の番組を持つなど、バリバリのイケメンだった、2014年7月11日、突然、当局に捕まりテレビの画面から消えた。理由は公けにはされてないが、どうやらスパイ活動をしていたらしい。習近平国家主席が2012年11月の第18回党大会で中共中央総書記になる前に、習近平や温家宝・前国務院総理の不正をアメリカの「ニューヨーク・タイムズ」や「ブルームバーグ」などの大手新聞に(捏造して)密告していたとも言われている。目的は薄熙来や周永康とタイアップして、習近平が総書記に選ばれないように画策したとのこと。

中国人クズ番付の3位にランクインしている令計画の妻、谷麗萍とはただならぬ関係となり、彼女から多くの内部情報を取得したと、本人が白状したという情報もある。

自分がイケメンであることを利用して、多くの政府高官の妻と関係を持ち、トップ・シークレットを聞き出してはアメリカに流していたらしい。その意味での「情婦」の数が、中国語で「排」(軍隊の一個小隊)くらいはいたと言われ、彼よりも20歳から30歳年上でも「落とした」そうだ。

エピソードとしては2010年韓国で開催されたG20閉幕式で、英語を使ってオバマ大統領に記者席から質問。「私は全アジアを代表できると思っている(I think I get to represent the entire Asia)」と発言して不評を買った。

あまりの鼻息の粗さにネットユーザーはこのイケメンのキャスターを嫌ったため中国人クズ番付の7位にランクインしているのだろうが、習近平にとっては、ありがたいことなのかもしれない。 

第11位:蘇栄

元中国共産党江西省委員会書記で全国政治協商会議の副主席。2014年6月14日、党紀律違反により取り調べを受け、上場企業「方大化工」「方大炭素」「方大特鋼」などを傘下に持つ巨大企業「方大集団(グループ)」との癒着関係による腐敗関係が指摘されている。

第15位:魏鵬遠

中央行政省庁の一つである国家発展委員会管轄下にある国家能源(エネルギー源)局煤炭(石炭)司の元副司長。2014年5月、取り調べを受け、10月31日、最高検察院は魏鵬遠の家に人民元で2億元の現金があったことを突き止めた。2015年1月28日、起訴された。

クズ番付は100位まで続くが、一応、ここまでにしておこう。

◆今年は大陸のネット空間で削除されていないわけ

実はこの「中国人が選んだ中国人クズ番付」は2013年1月1日からネット空間に現れ始めた。2013年1月1日に現れたのは「2012年度、中国人クズ番付」で、一位はなんと、薄熙来だった。

2014年1月1日に現れたのは「2013年度、中国人クズ番付」で、周永康が2位にランクイン。

今年のクズ番付の1位が徐才厚であったことは、腐敗撲滅を推進する習近平政権にとっては非常にありがたいネットユーザーの声であったにちがいない。

なぜなら、中央軍事委員会の元副主席を逮捕することは、チャイナ・ナイン(胡錦濤政権時代の中共中央政治局常務委員会委員9人)の一人であった周永康を逮捕するのと同じ程度に、やはり聖域であったからだ。中央軍事委員会が管轄するのは中国人民解放軍。この軍隊を統率する副主席だった者が腐敗にまみれていたとなると、軍の信用が失墜する。

したがって人民の後押しがほしい。

現時点で中国大陸におけるネットユーザー(網民)の数は6.49億人。どんなに当局が管理削除しているとはいえ、ネット空間の声は「人民の声」と考えていい。

胡錦濤政権時代、胡錦濤の側近中の側近であった令計画が、実は反腐敗を叫んでいた胡錦濤の足元で腐敗にまみれていたなどというのは、もう「あきれた」を通り越して「こっけい」でさえある。救いようがない。その令計画が、きちんと「中国人クズ番付」の中で上位にランクインしているということは、習近平にとって、まるで正当性を与えられたようで、歓迎すべきことにさえなっている。

別の言い方をすれば、ここまで共産党幹部は腐敗しきってしまい、もう手のつけようがなくなっていることを物語っているということになる。だから、「人民の声」がほしい。

そのために、今年は初めて「中国人クズ番付」を削除しなかったのだろうと思われる。

裏話:実は小学館から2014年4月1日に出版した『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』を執筆し始めたころ、「2013年度、中国人クズ番付」が発表された。本来、この本の書名を筆者は『中国腐敗の構造と反腐敗』と決め、そのつもりで書き始めたのだったが、この「クズ番付」の出現により、出版社側が書名をどうしても『中国人クズ番付』にしてくれと言ってきた。絶対にダメだと反対したが、出版社側は譲歩しない。そこで妥協案として、出版されたような書名になった次第である。