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参議院選出馬の辻元清美が、青春の地“高田馬場”で誓ったリベンジ

安積明子政治ジャーナリスト
東京選挙区に出馬の松尾あきひろ氏と共に高田馬場駅前で演説する辻元氏 著者撮影

思い出の地・高田馬場でマイクを握る

 強烈な夏の日差しも弱まり、太陽が沈みかけた7月4日の夕刻、立憲民主党から参議院選に比例区で出馬している辻元清美候補は高田馬場駅前でマイクを握っていた。早稲田大学で学んだ辻元氏にとって、高田馬場は青春を過ごした街といえる。

 昨年10月の衆議院選では、まさかの落選となってしまった。当初は「辻元清美は優位だ」と各メディアに報じられていたにもかかわらず、あれよあれよという間に落ちていき、比例復活すら叶わなかった。だが悔やんでばかりもいられない。その2か月後、辻元氏は大阪西成で介護ボランティアとして働き始めた。2002年に議員辞職した時、取得した介護ヘルパー2級の資格が役立った。

 そんな辻元氏のライフワークは、さしずめ世界平和と弱者救済といえるだろう。早稲田大学在学中には、草の根の国際交流を目指した「ピースボート」を立ち上げている。

「当時はあのジャズ喫茶の上に、(ピースボートの)事務所がありました」

 “ホーム”である高田馬場に立っていると、懐かしい思い出が次々とよみがえる。学生時代によく通った駅前のうどん屋のおじさんが、演説を聞きにわざわざ来てくれたという感動シーンもあった。そんな人情がうれしくて、そしてそんな人たちの生活を守りたくて、辻元氏は政治の道を選んだのだ。

支持者に投票を呼びかける 著者撮影
支持者に投票を呼びかける 著者撮影

反対する野党の重要性を強調

 だからこそ、国民を無視した政治の暴走は絶対に許さないと辻元氏は固く心に誓っている。前日の3日に青森県八戸市で「野党の話を政府は聞かない」と発言した山際大志郎経済再生担当大臣に対し、「三権分立の原則に違反している」と激しく批判。またウクライナを侵略したロシアを取り上げて、「ロシアには野党がないから、プーチン政権の侵略行為を阻止できなかった」と解説し、演説に聞き入る聴衆に向かって「野党の重要な役割は反対すること。もし政府や政治がおかしな方向に行こうとしたら、身体を張って止める。そしてみなさんの大事な税金の使い道をしっかりとチェックして、不正をただす。そのような野党の役割をしっかりと果たしたい」と語りかけた。

 しかしながら安定した戦いを見せる自民党や公明党などと比較して、立憲民主党の戦いは非常に苦しいものになっている。しかも辻元氏にとって、敵は自民党だけではないのだ。衆議院での自分の議席を奪った上、改憲勢力に加担する日本維新の会は、絶対に許せない存在だ。

日本維新の会は許せない

「すでに衆議院では自民、公明、日本維新の会で3分の2を確保しています」

 辻元氏が最も懸念するのは、ウクライナ問題で世界の空気が一気に変わった現在、日本の軍事国家化が進むのではないかということだが、心にあるのはそればかりではない。肝心の府政をなおざりにして東京進出ばかりに熱心な日本維新の会に対し、心底怒りを感じている。だから日本維新の会について語る時、辻元氏の舌鋒はいっそう鋭さを増していく。

「東京にも維新がちょろちょろ出てきているんです。大阪府の吉村(洋文)知事、大阪での物価対策もせずに何をのこのこ東京に来て、なにを演説しまくっているのか。大阪府民は怒っていますよ。東京都の小池(百合子)知事も問題はあるけれどね。でも大阪まで演説しに行かないでしょ。都内をちょろちょろしているくらいでしょ。自分の弟子(東京選挙区に出馬している荒木ちひろ氏)を通したいだけだから。でも維新はあきません。大阪でカジノや核シェアリングまで言い出した。年金をカットする法案も、自民党、公明党、維新が強行採決してきた。参議院でこの3党に3分の2を獲らせない。そのためにはまっとうな野党、強い野党を創る辻元清美と2枚目に書いてほしい」

当選を阻むもの

 聴衆の反応はかなり良いが、大きな懸念も存在する。新聞やネットでの選挙予想では、「辻元清美は当選圏内」と判断するものが多く、これがかえって辻元氏の足を引っ張っていることだ。

「めちゃくちゃ苦戦しています。自分では危ないと思っています。というのも、昨年の衆議院選で『辻元清美は大丈夫』と書かれて、私は落選したんですよ。だから『当選する』と予想されたら、半分以上は落ちるんです」

辻元氏の決意を示す「へこたれへん」 著者撮影
辻元氏の決意を示す「へこたれへん」 著者撮影

 警戒すべきはそればかりではない。辻元氏には当選を阻む「3つの壁」があるというが、これはそのひとつにすぎないからだ。

 あとの2つは、まず辻元氏には衆議院議員のイメージが強すぎて、参議院選に出馬していることが浸透していないこと。そして「全国区」で当選するためには「辻元清美」と名前を書いてもらわなければならないことが十分に浸透していないことだ。ただ2枚目に「立憲民主党」と書いただけでは、辻元氏の順位を上げることに繋がらない。

 6月22日に始まった参議院選は、本日(7月5日)を含めてあと5日を残すばかりだが、初めて全国区で戦う辻元氏にとって、これまでになく長く熱く、かつ印象深いものになったに違いない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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