いよいよ早まった衆議院の解散。延命を狙う菅首相と自民党の様々な思惑

河井克行氏は辞意を表明した時も、議員バッヂを外さなかった(写真:Motoo Naka/アフロ)

法廷での辞意表明

 2019年の参議院選に出馬した妻の案里氏のために公職選挙法違反(買収)で逮捕された河井克行元法務大臣は3月23日、議員辞職を表明した。初公判から無罪を主張していた河井氏は、この日の被告人質問で一転して買収の罪を認めている。だがこの日も河井氏は胸に議員バッヂを付けて出廷し、その地位にこだわる様子を見せた。果たして本心はどうなのか。

 河井氏の議員辞職の意向は、すでに3月18日に伝わっていた。産経新聞によると、「複数の自民党関係者」が明らかにしたとしている。妻の案里氏も2月3日に議員辞職したが、時事通信は同日午前0時に「複数の関係者が2日、明らかにした」と伝えている。案里氏は1月21日に東京地裁で有罪判決(懲役1年4か月、執行猶予5年)が下されたが、「主張のうち一部が受け入れられず、大変遺憾」として控訴の可能性も匂わせていた。

二階幹事長は「他山の石」と切り離す

 いずれも本人たちは当初、無罪を主張しながら後に有罪を認めている。その背後にどうしても、なんとか「河井問題」を収めたい自民党の思惑が透けて見える。克行氏の辞意を受けて、「他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と述べた自民党の二階俊博幹事長もそうだ。案里氏は二階派に所属していたが、筆者が関係者に聞いたところでは、案里氏は二階幹事長を介して出馬したという経緯がある。克行氏があるメディア関係者を通じて二階幹事長にかけあい、広島県選挙区の「第二の候補」に押し込んだというのだ。にもかかわらず、この問題を「他山の石」というのはどういうことか。

 これは完全な“切り離し”だ。理由は解散総選挙に他ならない。すでに永田町では解散風が吹いている。菅義偉首相が4月上旬に訪米し、昨年11月の大統領選で当選したバイデン大統領と会談する。その時の“お土産”を成果として、解散を打つというシナリオだ。

党内で蠢く“次”への胎動

 解散権を握る菅首相として考えるべきポイントは、7月4日の東京都議選とオリンピック・パラリンピック、そして9月の総裁選だ。昨年9月の総裁選に出馬した石破茂元地方創生担当相と岸田文雄前政調会長の他、下村博文政調会長や稲田朋美前幹事長代行も狙っている。石破氏と岸田氏の2人は3月21日の党大会の後、マスコミに囲まれて取材を受けていた。印象的だったのは石破氏は比較的短時間ですませたのに対し、岸田氏はしっかりと時間をとったことだった。

 というのも、この日は山口県萩市で市長選が行われ、林芳正元文科相が推す現職の藤道健二氏と新人で河村建夫元官房長官の実弟の田中文夫氏が対決(21日夜に田中氏の当選が決定)。衆議院山口県第3区をめぐる代理戦争として注目されたが、同時に宏池会と二階派の戦いともいえた。さらに4月25日の参議院広島県選挙区の再選挙も、岸田氏の手腕が試される。案里氏の事件と衆議院広島県第3区の公認を巡る混乱で県連会長を辞任した宮沢洋一氏の後を受け、岸田氏は3月22日に3度目の自民党広島県連会長に内定(正式就任は27日の県大会)した。「緊急対応」とのことだが、派閥の領袖の再々登板は異例。次期総裁選への足固めともいえる。

菅首相の最大の懸念は小池知事

 菅首相にとっての最たる懸念は、東京都の小池百合子知事の動きだろう。1月2日には千葉県の森田健作知事、神奈川県の黒岩祐治知事、埼玉県の大野元裕知事を率いて西村康稔コロナ対策担当相に面会し、緊急事態宣言の発出を求めた。これを受けて政府は1月8日から4都府県に緊急事態宣言を発出したが、小池氏のリーダーシップを示す結果となった。

 もっとも黒岩氏が3月7日のテレビ番組で、再延長にいたる過程でも主導権をとろうとした小池氏の発言に“ウソ”があったことを暴露。これで小池氏が再度、3知事を従えて西村大臣に面会することはなかったが、事前にその動きを察知していた菅首相が3月3日のぶら下がりで、1都3県の緊急事態宣言の延長について異例にも言及した。解除に前向きだった菅首相の“小池潰し”だと言われている。

 もし菅首相が“小池潰し”を狙うなら、都知事としてまっとうしなければならない東京五輪の前に解散を打つに違いない。そのために訪米など着々と、筋書きが作られている。国民の命がかかったコロナ対策を優先するのか、それとも政治的延命か。残念ながら政治家の本心は後者にある。