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【ついに東京都知事選出馬表明!】山本太郎が本当に狙うのは都知事選その後だ。

安積明子政治ジャーナリスト
勝ち目はあるのか(写真:つのだよしお/アフロ)

いよいよ山本太郎が出馬する

 れいわ新選組の山本太郎代表が6月18日告示・7月5日投開票の東京都知事選に出馬する。6月12日に同党の総会を開き、都知事選について「出馬の可能性はフィフティ」と言っていた山本氏だが、この時はほぼ決意が固まっていたに違いない。14日夜には「山本太郎がポスターを刷り始めた」と一報が入り、15日午後2時には参議院議員会館内で出馬会見を開いている。同日午後7時から新宿駅西口に舞台を移し、「街頭記者会見」を行った。

「総理大臣を目指すと言っていた人間がなぜ都知事選に出馬するのか、お話したいと思います」

 確かに山本氏は総理を目指すと言っていた。しかし山本氏が都知事選に出馬するのは、別に意外でも何でもない。というのも、かなり以前から「小池百合子都知事に勝てる有力な野党統一候補」として、山本氏の名前が挙がっていたからだ。山本氏は昨年の参議院選でひとりでれいわ新選組を立ち上げ、2議席を獲得した。比例区で得た個人票は99万1756票にものぼる。

意外と少ない都内の「山本票」

 野党が山本氏の瞬発力に期待するのも当然だ。だがよく考えてみれば、山本氏は東京でさほど得票していないのだ。

2013年の参議院選では、東京都選挙区で66万6684票を獲得し、定数5名のうち4位で当選した。2019年の参議院選では、東京都内で獲得した個人票は20万6774票に過ぎない。

 都知事選で当選するには、東京都内で300万票近くを得る必要があるが、山本氏の過去の得票数はこれに遠く及ばない。さらに日本弁護士会元会長の宇都宮健児氏が出馬を表明しており、宇都宮氏は2012年の都知事選で96万8960票、2014年の都知事選で98万2594票を獲得した。後者では小泉純一郎元首相の応援を得た細川護熙元首相より得票数が多かった。また今回は宇都宮氏には共産党や社民党などの他、立憲民主党の支援が付く。3月と5月に山本氏と会った宇都宮氏は、「誰が出ようと降りない」と出馬の意思は強い。立憲票の積み増しを期待しているのか。それとも73歳という年齢ゆえに、「最後のチャンス」と感じているのか。

真の狙いは国政

 宇都宮氏に票を奪われると、山本氏の当選は難しくなる。それでも山本氏が都知事選に挑戦するのは、来年の都議選を狙ってのことだろう。地方議員は国政選挙の礎となる存在だ。自民党にしろ、公明党にしろ、共産党にしろ、これまで政党として続いてこれたのは、分厚い地方議員層があるからだ。政権を狙うなら当然、足元を固める必要がある。

 さらにいえば1年後に都議選を迎える都知事選は、その好機といえる。何よりも4年前に、小池知事がその手本を示ている。2016年の知事選での勝利で巻き起こしたブームを翌年の都議選に繋げ、自らが立ち上げた都民ファーストの会から55名も当選させたのだ(追加公認を含む)。

 よって、野党から都知事選出馬を打診された時、山本氏が「れいわ」に拘ったのは当然だ。れいわ新選組の公認候補が不可能なら、確認団体の名称を「れいわ東京」にしたいと申し出ている。「れいわ」という言葉を世に浸透させ、自らの存在感を示すことができるなら、たとえ当選しなくても都知事選出馬はその価値がある。れいわの候補は国政に限ると規定する党規約第4条に反するとしても、だ。

2014年の都知事選のパターンか?

 さて実際に山本氏はどのくらいの票を獲ることができるのか。おそらくは2014年の都知事選のパターンになるのではないかと思われる。「本命」の舛添要一氏はかつて自民党に所属した参議院議員で、厚生労働大臣も務めたが、2009年の衆院選で自民党が大敗後に「自民党の使命は終わった」と批判して離党した。自民党では芽が出ないと都知事に転じた小池知事の立ち位置と似ていないわけではない。その舛添氏に宇都宮氏や細川護熙元首相らが挑戦した闘いだ。

 この時の都知事選では、舛添氏が211万2979票を獲得し、98万2594票の宇都宮氏や95万6063票の細川氏は及んでいない。ただし野党の票がまとまってもう少し伸びていれば、勝負は変わった可能性はある。

 ここで留意すべきは細川元首相の存在だ。政界を退いて20年近くなるために、さすがに名前の浸透度は落ちたものの、小泉純一郎元首相が全面的な応援などが話題になった。しかし票は伸びずに3位に終わっている。

山本太郎は勝てるのか

 もっとも「原発廃止」だけを叫び政策に具体的内容を示せず、機動力がなかった細川元首相と、山本氏を同一視できない。15日に山本氏が提示した「東京都8つの緊急対策」は都政の要所を掴んだもののように見えるが、全都民に一律10万円支給などの「総額15兆円で、あなたのコロナ損失を徹底的に底上げ」というバラマキ政策など、実現可能性に気になる点がある。何よりの懸念は「東京オリンピックの中止宣言」だ。猪瀬直樹都知事時代に作成されたIOCとの契約書によれば、IOCのみがオリンピック中止の権利を持ち、契約解除はIOCのみから行うことができるとしている。東京都から契約を解除すれば、それこそどれだけの賠償金を請求されるかわからない。中止が負担軽減になるとは限らないのだ。

 さらにいえば、山本氏は本気で都知事選に出馬しようとしているのか。出馬会見が都庁ではなく、永田町で行ったことも引っかかる。

 果たしてどれだけの都民が山本氏に投票するのか。そして山本氏の思惑を理解しているのか。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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