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「環境問題はセクシー」と発言した進次郎氏は、「まさか」の坂を転げたのか

安積明子政治ジャーナリスト
第4次安倍再改造内閣の目玉である小泉進次郎環境大臣(写真:ロイター/アフロ)

地球規模の課題にメッセージを残すと明言したものの

 小泉進次郎環境大臣が国連での気候行動サミットに出席するために、ニューヨークに飛び立った。初入閣直後の初外遊だ。

「環境大臣の中でも、おそらく世界の中でも(私は)最年少でしょう」

「地球規模の課題に日本というのは不可欠なプレーヤーであると。そういうメッセージをしっかりと残します」

 飛び立つ前に成田空港で、進次郎氏は意気込みを語っている。

ところが到着早々、「ステーキが食べたいから」と秘書を引き連れてステーキ店へ。その様子をテレビカメラがとらえていた。

地球温暖化会議の前日にステーキを堪能

夕食に何を食べようが本人の自由だが、気候行動サミットの課題は温暖化対策だ。オーストラリアのシンクタンク「ブレイクスルー」が今年5月に出したレポートによると、人為的な温室効果ガスの排出量は2030年まで増加し、その結果、2050年までに気温が3度上昇するという。実際に今年7月の気温は過去最高を記録した。また日本にこれまでにない強力な台風が襲来するようになったのも、地球温暖化と無縁とはいえない。

原因となる温暖化ガスを排出するのは、工場や交通機関ばかりではない。食料となる家畜の育成には、1年に生成される温暖化ガスのうち約15%が輩出されるという。中でも牛肉は最も環境負荷が大きく、1kgを生産するのに二酸化炭素換算で14.8kgの温暖化ガスを排出する。これは鶏肉の13倍、ジャガイモの57倍にもなるものだ。

だからステーキを食べるなとは言わないが、翌日に国際会議を控えている以上は、せめて宿泊するホテル内で食するなど、カメラを避けることはできなかったのか。

翌22日に開かれた会議で進次郎氏は、「日本は1997年に京都議定書を作成したが、我々は十分なリーダーシップを発揮してこなかった。しかし今日から、我々は変わります」と演説。「環境の小泉」をアピールした。

気候変動問題はfunでcoolでsexy?

ところがその前の記者会見で「気候変動というような大きな問題(への取り組み)は、funでありcoolであり、sexyでなければならない」と述べ、ロイター通信などに報道された。このうち“sexy”は進次郎氏の隣に座ったコスタリカの外交官で気候変動枠組条約の第4代目事務局長を務めたカレン・クリスティアナ・フェゲレス・オルセン氏の主張である“Let’s make green sexy”をもじったものだが、人類を存亡の危機に陥らせるような重大問題を「funでcoolでsexy」と位置付けていいものなのか。

 もっとも初入閣で存在感を示したい気持ちは理解できる。環境大臣は進次郎氏自身が望んだポストだというが、その管掌範囲は限られている。たとえば原発問題だ。

 東日本大震災が発生して以来、進次郎氏は常に被災者に寄り添ってきた。党の青年局長時代には「TEAM-11」を発足し、復興大臣政務官も経験した。 

だからこそ被災地への思いが強い進次郎氏だが、17日に福島に入った時に記者から除染廃棄物の処理について具体的な質問を受けた。

 

“ポエム”で胡麻化す

この問題は原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当大臣を兼任する菅原一秀経産大臣の管掌で、環境大臣兼原子力防災担当大臣が扱うものではない。そこでとっさに進次郎氏の口から出たのが、話題になった“ポエム”ということになる。

意味不明の言葉を吐いてうやむやにするのは、父親である小泉純一郎元首相の受けうりだ。小泉元首相は勤務実態のない会社から厚生年金の受給資格を得ていた件で2004年6月2日の衆議院決算行政監視委員会で岡田克也民主党代表(当時)から追及され、島倉千代子のヒット曲をもじってこう述べている。

「社員はこうだと言いますけれども、人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろです」

 ただしワンポイントフレーズで様々な局面を逃げ切った小泉元首相に比べ、進次郎氏の逃げ切りはいまいちといえる。育休について批判された時も、「日本って堅い、古い」と反論したが、“将来の首相候補”と言われる自分の発言の影響についてきちんと認識していなかったとしかいえない。

 第4次安倍再改造内閣の「目玉」と言われる進次郎氏の初入閣だが、出だしから痛い洗礼を受けたことになる。「人生には“まさか”という坂がある」と述べたのは小泉元首相だが、進次郎氏はこれからその坂をいくつ越えなければならないのか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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