【森友学園問題】 佐川氏の証人喚問 真相は解明されず

証人喚問された佐川宣寿氏(写真:ロイター/アフロ)

後味の悪い証人喚問

 国民が知りたかった“真相”は、最後まで明らかにされなかった。森友学園の国有地取引をめぐる公文書改ざん問題について3月27日に開かれた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問は、なんとも後味の悪いものだった。

「刑事訴追の恐れがあるので、答弁は差し控える」

 4時間余りの衆参両院の証人喚問の中で、佐川氏は50回以上もこの言葉を繰り返した。

 午前9時半に参議院から始まった証人喚問は、まず金子原二郎予算委員長の総括尋問で始まった。

「証人はこの決裁文書の書き換えを知っていたのか。仮に知っていたのなら、誰がどのような動機で、いつ、誰に書き換えを指示したのかを示してください」

 この2点は今回の証人喚問の最大の焦点だが、これについて佐川氏は「私は告発を受けている身で、本件決裁文書の書き換え問題についても捜査を受けている。刑事訴追を受ける恐れがあるので、答弁を控えさせていただく」と、最初に答弁を拒否した。

「責任は私にある」と言ったものの

 だが金子委員長はこう述べて、佐川氏の答弁拒否を牽制している。

「資料要求に対して書き換えた決裁文書を提出するなど、財務省の本委員会への対応は、不誠実の極みと言わざるをえない。この結果、国会審議は混乱し、国民が求める予算委員会の論戦の機会を失うことになった。答弁を拒否するとのことだが、理財局長の職にあった者として、こうした事態に対する責任をどのように感じているのか」

 これには佐川氏は、「当時の担当局長として、責任はひとえに私にある」と神妙に述べて頭を下げた。だがこの後は、肝心な点についてのらりくらりと逃げている。トップバッターの自民党の丸川珠代参議院議員は、「安倍総理からの指示はありませんでしたね」「昭恵夫人からの指示もありませんでしたね」と、佐川氏の答弁を誘導するかのような質問を重ねた。それは責任を財務省に押しこめたい官邸の思惑に応えているようにも見えた。

 これに呼応するように、佐川氏は国有地貸付に昭恵夫人の影響はないと明言した。また決裁書を書き換えた時、なぜ昭恵夫人の名前を削除したのかについて佐川氏は答えなかったが、まるで議院証言法が保障する証言拒否権を行使して、昭恵夫人を庇っているかのようにも思えた。

解決にはほど遠い実態

 「佐川氏は自民党あるいは官邸と連絡をとっているのではないか」

 これは証人喚問が行われる前に、永田町で囁かれた話だ。佐川氏の補佐人を務めた熊田彰英弁護士が小渕優子元経済産業大臣の地元事務所の政治資金規正法違反事件や甘利明元経済再生担当大臣の斡旋利得処罰法違反事件を手がけた人物であることも、自民党との関係を推察させた。

 一方で野党は、時間切れを狙って証言拒否権を使う佐川氏を追いつめることができなかった。もっとも厳しく追及するはずだった共産党の小池晃参議院議員の質問も、2度にわたって中断された。そもそも希望の会の森ゆうこ参議院議員や立憲民主党の福山哲郎参議院議員、無所属の会の江田憲司衆議院議員などの持ち時間は、往復(質問と答弁)で6分に過ぎなかった。これでは追及の前に終わってしまう。

 議院証言法は証人の虚偽答弁を厳しく罰する(1年以下の禁固あるいは10万円以内の罰金)と同時に、本人や一定の関係者が刑事訴追を受けるような場合には証言を拒否する権利を保障する。ただしそれを濫用する場合は、処罰の対象になることに留意すべきだ。

 佐川氏を追及しきれなかった野党は「さらに疑惑は深まった」として、昭恵夫人を証人喚するよう圧力を加えるつもりだ。また佐川氏の前任者で安倍首相とも近い迫田英典元国税庁長官や、昭恵夫人の「夫人付き」だった谷査恵子氏、そして谷氏の「上司」だった今井尚哉総理秘書官も、ターゲットに入れつつある。