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缶バッチの次にくる『ウォーム・ボディーズ』の“ニコホル”は、ゾンビでもカワイイ~!

渥美志保映画ライター
ちょっと顔色悪いけど!ゾンビだからさ!

「オモシロ」を追求するあまり暴論が多く、しばしばちゃんとした大人から眉をひそめられるダメな大人、渥美です。

昨晩、遅まきながら「シャーロック」のシーズン2を見終わって、“大成するイギリス人俳優に必要な条件”を思い立ちました。「ゲイ」と「笑い」です。ここに「イケメン」がプラスされれば無敵でしょう。以前イギリス人から「寄宿学校に通っていたイギリス男の初体験は100%男だ」と聞いて、イギリス人のパンクな”やってみよう精神”にシビれたことがあります。イギリス人俳優はゲイネタは避けて通れません。ベネディクト・カンバーパッチ、見事にカバーしています。ヒュー・グラントもブレイクは『モーリス』でした。イアン・マッケラン、まんまです。時々ジュード・ロウみたいに、あまりにキレイなので笑いナシで上まで行っちゃった人もいますが、美しさに翳りが見えてきた今、あいつもハゲキャラで笑いを意識し始めています。

今回はそんなイギリス映画界の三位一体、「ゲイ」で「笑い」で「イケメン」という無敵の若手俳優ニコラス・ホルトをご紹介します。作品は今週末(9月21日)公開の『ウォーム・ボディーズ』。奥さん、ゾンビ役なのよ、人間をパクパクするアレ。なのにかわいいってどういうこと!

アンニュイなイケメン風、実は腹ペコおばかちゃん。
アンニュイなイケメン風、実は腹ペコおばかちゃん。

さて、まずは物語。舞台はゾンビ・ウィルスが蔓延したアメリカで、人間は塀に囲まれた都市で厳戒態勢を敷きながら生きています。当然物資は不足していて、時々若者の選抜部隊が物資調達に外の世界へ送り出されていくわけです。ヒロインのジュリーもそのうちのひとりですが、お仕事中にゾンビ軍団に襲撃され取り残されてしまいます。助けてくれたのは、ジュリーに一目惚れしたイケメンゾンビの「R」。ゾンビのたまり場、空港にあった飛行機=自分のお部屋にかくまうんですねー。よくわかんない状況ですが、まあこんな感じ。はい、どん!

女子とお部屋でほっこりという、ゾンビ界始まって以来の珍事。
女子とお部屋でほっこりという、ゾンビ界始まって以来の珍事。

映画は「R」の心の声、つまりゾンビ側の視点から描かれていきます。そんなもんあんのか!って怒っちゃいけません、あるんです、この映画では。

それによれば意外と思考は普通に働いていますが、いかんせん身体が言うことをききません。人間だった頃の名前は、最初の文字の「R」しか思い出せないし、ゾンビ友達と会話をするにも「…アー」とか「…ウー」とか言うのが精一杯。かろうじてできる普通の会話も「腹へた」「まぢ(街:人間がいるところ)」、じゃご飯食べに行こかと立ち上がる程度で、ゾンビらしさ満点です。いつもあまりに腹ペコなので、人間を見るとかぶりついてしまうんですが、実は人食いは気が重い。脳を食べてあげることはせめてもの償いです。こうすれば食べられた人はゾンビとして復活しないからです。

先頭の男、食べられる5分前。
先頭の男、食べられる5分前。

そしてもうひとつ、脳を食べるとその人の記憶が感情とともに入ってきて、人間だったころの感覚が一瞬、切なくも甦るんです。それがほしくて、「R」は脳を食べずに射られないんですねえ。この設定が上手い。実は「R」、ジュリーと出会う直前にその彼氏の脳を食っていて、その記憶が「R」の中に恋心を芽生えさせる説得力になっています。そのフラッシュバックする記憶が、すごくキレイでロマンティック……ま、脳を食ってるんですけど

恋心と腹ペコで葛藤するイケメンゾンビ。
恋心と腹ペコで葛藤するイケメンゾンビ。

でも「ゾンビ&ラブ」という無理めの設定を可能にした最大の勝因は、やっぱりニコラス・ホルトのかわいさ

彼が全世界から注目を浴びたのは『シングルマン』でしょう。ファッションデザイナーのトム・フォード(ゲイ)監督が彼に与えた役は、ゲイの大学教授の人生の最後に現れたピカピカの美少年役。トム・フォードはその年のコレクションにもニコホルを使っているし、映画には全裸シーンもあったりして、監督の職権乱用としか思えませんねえ。人間、権力もつとやることは誰でも同じです。

実はこれ以前にも『ウェザーマン』という作品で、おっさんカウンセラーにイタズラされる少年を演じています。要するに普通女子&オバさんのみならず腐女子&ゲイからもお墨付きのカワイさ

そのルックスは、個人的にはちょっとグンちゃんこと、チャン・グンソクに似てる気がします。黒目がちな小動物のような瞳、鼻と口が小さくて顔も極小、男性というより少年って感じの面立ちのくせして、背の高さは189cmって、デカっ!ひゃー、ズルいズルいズルすぎる~!と、頭のサイズが普通で背は極小という私はダダをこねるしかありません。

もちろん魅力は顔だけじゃありません。彼のデビュー作はヒュー・グラント主演の『アバウト・ア・ボーイ』というコメディ作品。つまり笑いのツボをきっちり押さえられる二枚目なんです。この作品でも、例えば、周囲のゾンビに馴染むよう過剰にゾンビぶるジュリーに、たどたどしく懸命に「…や、やりすぎ」と突っ込むところとか、逆に「R」が人間を偽装するためにジュリーにメイクされる場面の遊ばれぶりとか、ゾンビのクセして、思わず笑うかわいいシーンが目白押しで、それが「R」を愛すべきゾンビに見せているわけです。

女子に遊ばれる、オバカかわいいイケメン
女子に遊ばれる、オバカかわいいイケメン

この作品は細部の設定がすごく上手なのが印象的です。例えば、新たな設定として「ガイコツ」というゾンビの成れの果てを登場させること。最初からゾンビをウィルス感染としてるところも上手いんですよねえ。つまりゾンビは病気なので、治る可能性もあるのかもしれません~。さてゾンビ「R」の恋は成就するんでしょうか。映画館で楽しんでくださいねー。

9月21日(土)より、シネクイント他全国ロードショー

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映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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