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中田英寿の本気の“おもてなし”。「やっぱり僕は楽しそうにしている人の顔を見るのが好きなんです」

浅野祐介OneNews編集長
[撮影]三吉ツカサ(Showcase)

六本木ヒルズアリーナで開催中の日本酒イベント「CRAFT SAKE WEEK (クラフト サケ ウィーク) at ROPPONGI HILLS」。昨年、延べ7万6000人が来場した本イベントは今年、4月7日から4月16日(日)まで、10日間の開催。

昨年のインタビューに続き、このイベントをプロデュースした中田英寿氏に、日本酒に対する思いについて語ってもらった。

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ーー前回に続き、「CRAFT SAKE WEEK」を企画された意図を教えていただけますか?

日本全国を旅してきたなかで気づいたのは、これだけの歴史があり、日常的に和食に接する機会が多いにも関わらず、ワインなどに比べても日本酒は情報もブランディングもほとんどできていないということです。結果、日本酒をたまに飲む人たちでもなかなか10銘柄以上知っている人が少ないくらいです。最近では日本酒のイベントも多くありますが、「おいしいな」と思っても、あれこれ飲み過ぎると、どうしても銘柄や味を忘れてしまいます。だから本当に好きな日本酒を覚えてもらうために、このイベントは毎日「10蔵」限定にしました。楽しみながら知ることができ、日本酒の面白さが伝わる。つまり、ただお酒を“飲ませる”イベントではなくて、お酒について“理解してもらう”イベントにしたいと思いました。

ーー昨年の開催時期は2月。今年は桜をテーマに、4月の開催となりました。「千本の桜」が会場を彩るということで、準備も大変だったのでは?

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基本的に寒い冬に作られる日本酒。季節ごとに楽しみ方はあるものの、去年はまずお酒造りのイメージがある「冬」に、という思いがありました。たくさんの方が来てくれてよかったのですが、とはいえ2月の屋外は寒いと言う声もありました。なので次は、もう少し暖かい時期にしようと考えたときに「花見」がすぐに浮かびました。桜の華やかなイメージと日本酒を結びつけ、多くの人が持つ日本酒の“イメージ”を、よりモダンにより楽しいものに変えていきたいと思っています。

以前は、日本酒といえば安くて飲むと頭痛がする、と思っていた人もいたかと思います。しかしながら、このイベントにメインで来る20代、30代くらいの若い女性たちには、そんなイメージも全くないでしょうし、実際、料理にも使いますし、非常に身近なモノになっているのではないかと思います。美容にも良いといわれ、甘酒も人気がありますしね。

また、“桜”は日本の象徴でもあります。個人的には日本人なら日本酒を誇って良いし、知っているほうがCOOLだと思います。今や日本料理店は世界中にあり、必ず日本酒が入っている。世界中で知識を共有できたら楽しいですよね。知らないよりは知っていたほうが、人生はより楽しく豊かになると思います。

そのために、会場作りもデザインや音楽に至るまで、とことんこだわりました。裏方は大変ですが(苦笑)。

ーー日本酒のイメージや既成概念を変えて、ワインのように日本酒が認知されていくには、まだ時間がかかると思われますか?

これまで、延べ300蔵以上の蔵元を回りました。環境と蔵元の思い、地元での取り組み、味に結びつくまでの過程、そして“文化”としての日本酒。使われる酒器、工芸品や食べる物も含めて、僕が見たそれらを伝え、広めていきたいと考えています。堅苦しく「守らなきゃいけない」ということではなく、「楽しいもの」としての日本酒を。

どうしても認知には時間がかかってしまうものなので、自分が生きている間にやりきれるとは思っていません。ですが、20年前には日本料理店にワインはほとんど置いていなかったと思います。お寿司にワインが合わないと言われてきた時代もありましたが、いまや置いてない店のほうが珍しい。実は、日本酒も十分イタリアンでもフレンチでも合うと思っています。国内はもちろん、海外のイタリアンやフレンチのドリンクリストの中にも、日本酒が入っているのが当たり前になったらうれしいですね。

ーー今回のイベントは東京に先駆けて、まずは福岡でスタートしましたね。

もともと東京だけでなく、北海道や仙台、大阪や名古屋など日本各地で開催したいという思いがありました。僕の外国人の友達も、博多は好んで行く場所でもあります。だから国内外への「発信基地」にもなりうるなと。

九州といえば焼酎、というイメージもありますが、最近、特に九州の酒蔵がすごく面白くなってきています。毎日半数は地元の蔵に出展してもらうので、地域によって文化も味も違う日本酒の面白さを、ぜひ体験してほしいと考えました。

ーーでは最後に、来場者へのメッセージをお願いします。

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飲むだけのイベントではないということ、イコール「お酒好き」の方だけのイベントではありません。美術館でのインスタレーションを見るのと同じ感覚で、会場全体のインスタレーションも楽しめます。

料理もイベントの趣旨に共感いただいた日本を代表する各店に加えて、今回はスイーツも提供します。お酒や酒粕を使ったケーキもそう、パンも発酵食品。日本酒に合わないわけがないと思っています。お酒だけでなく、醤油・味噌・お茶など、日本には発酵文化があるので、「発酵食品」の良さを広めていき、いずれは日本酒を含めた「発酵フェスティバル」にしたいと考えています。

音楽にしても、僕の好きなジャズ系を中心にAvexのサポートの元、素晴らしいDJの方々に来てもらうので、きっと音楽好きも楽しめると思います。

通常の桜は散ってしまった後かもしれないので、東京で桜を見たい人はぜひ来てほしいし、どの面で切っても面白くて楽しめる。その中心にあるのが日本酒だよ、ということが伝われば、すごくうれしいですね。

やっぱり、楽しそうにしている人を見ているのが大好きなので、会場には毎日行く予定です。この環境を作ることによって、どれだけ大勢の人が楽しんでくれるだろう、と想像するだけでワクワクします。

インタビューの終了予定時間が迫り、時計を気にする担当者を横目に「まだいいじゃないですか」と笑顔で話し続けてくれたヒデさん。中田英寿が本気でもてなす日本最大の“日本酒ウィーク”を、ぜひ堪能してみてほしい。

OneNews編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長を卒業後、動画の領域でウォーカー、レタスクラブ、ザテレビジョン、ダ・ヴィンチを担当。2022年3月に無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」をスタートし、同年9月、「OneNews」創刊編集長に就任。

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