プレミア王者・岡崎慎司の満たされない心。奇跡のレスター優勝を「嬉しくて悔しい」と語る日本人FWの矜持

(写真:アフロ)

「嬉しくて悔しい」

1884年に創設されたレスター・シティが、実にクラブ創設132年にして成し遂げたプレミアリーグ初優勝。「奇跡の一年」と称される2015-16シーズンを、岡崎慎司はそう表現した。彼がこの一年を振り返る著書のタイトルに冠した言葉は「未到」。「未だ到達できず」との思いが込められている。

6月20日にファンを招いて開催された『未到 奇跡の一年』の発売イベント、岡崎慎司はファンの前でも「悔しい」という言葉を何度も用いた。

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「こんにちは。今日はお越しいただきありがとうございます。正直なところ、トークイベントは慣れていないのですが、この本ができて、プレミア優勝というすごいシーズンですが、個人的には達成感のない悔しいシーズンで、嬉しさとともに自分の中ではその悔しさが残っていて、来シーズンに向けて思うところもあるので、そういった話も含め、楽しんでいってください」と、冒頭でファンに挨拶。司会者から「レスター・シティのプレミア優勝で変わったことは?」と問われると「あまり声をかけられることがなかったんですが、最近はわりと声をかけてもらうことがあるので(笑)、レスターに感謝しています。レスターのおかげでこうやって声をかけられるようになったなと思います(笑)」と答え、会場の笑いを誘っていた。

――プレミア優勝から日本の活動へ、オフはどう過ごしていますか?

日本代表戦の終わり方が悔しい結果(キリンカップでボスニア・ヘルツェゴビナに1-2で敗北)だったので、気持ち良くオフには入れないところもありました。長いシーズンを戦ったことで得た経験があって、その経験を伝えたい思いもあって、子どもたちに会ったり、お世話になった人に会ったり、わりと忙しいですね。家族はまだイギリスにいるので、帰ったらゆっくりしたいです。子どもとシーズン中も長く居られなかったので、子どもと一杯遊びたいですね。

――あらためて今回の『未到』について。奇跡の一年と題されていますね。

チームが残留を目指すようなチームから、上位争い、優勝争いをするチームに変貌していって、自分もレベルを上げていかなきゃいけないという中で、自分のことだけを考えるようになって。悔しさとか、そういうエネルギーを持ってやっていたんですが、気づいたらチームが優勝して、(ジェイミー)バーディの家で優勝を迎えた瞬間はとても嬉しくて。ただ、あとは悔しい、達成感のないシーズン、悔しいシーズンだったなという一年でした。

――チーム設立132年目にして初優勝でしたが、それでも達成感がなかった?

普通に優勝を感じたかった。損な性格なのかもしれないですけど、だからこそ一年間、貪欲になれたというか。ゴールを追い求めて、毎回60分、70分で交代させられながら、悔しい思いをしながらも戦えたのかなと思います。

――自分に厳しい岡崎選手の生き様の詰まった1冊になっていると思います。

高い目標は常に持った上で、自分の現状を見つめているので、毎日の練習、試合をエネルギーをもってやるというのが自分の特長なので。長いシーズンでしたが、そういう意味では充実した一年でした。

――発売一週間で5万部を突破してるそうです。

素直に嬉しいです。レスターというクラブに移籍して良かった。いいチームメートに恵まれた。そういうことに興味を持った人が読んでくれたと思うので。自分を知ってもらういい機会になると思うので嬉しいです。

――こういう結果になると予想していましたか?

いや、もう全然。上位争いをしていたタイミングでこの本のオファーを頂きましたが、優勝するとは思っていなかったし、もともとは残留を目標にするようなチームなので、こういう結果は予測していなかったです。

――本著の中でも、監督も終盤の終盤まで、優勝という言葉を口にしなかったと書かれていますね。

緊張感のある試合なのに、どうしたらこんなにリラックスできるんだってくらい、直前までリフティングをしてたりするので(笑)。自分が一番緊張していたんじゃないかなというくらいです。そういう意味では、普段通り、一年通してずっと“レスターらしく”できたなと思います。

――レスターのチームワークの良さが優勝につながったということですかね。あらためて、どんなチームですか?

チームメートが本当にいいヤツで。プライベートを中心にお互いを尊重、尊敬し合っていて、元気がなければ声をかけたり、食事中でも「お茶いる?」とか、みんなで声をかけるようなヤツらの集まりです。プレーの時は、それぞれが自分のやれることを最大限にやるチームで、チームワークというと、「みんなでチームになろう」と思われがちかもしれませんが、レスターはみんなが自分のやらなきゃいけないことを理解してやっていて、(クラウディオ)ラニエリがそれをまとめてチームになった、という感じです。チームのモットーはシンプルで、“毎試合レスターの戦いをしよう”で、ラニエリはいつもそれだけを言っていて、チームがそれをやり抜いた結果の優勝だったのかなと思いますね。

――一番仲の良い選手は?

ギョクハン・インレルです。来た当初はスイス代表のキャプテンで、とても経験のある選手で、いつも僕を気に掛けてくれています。冗談を言ったり、僕が笑顔を見せるだけで大爆笑したりして、逆に「何がおもろいんやろ?」って(笑)。彼のおかげでチームに溶け込めました。一緒にタイのパレードにも行ったし、「チームのボーナスっていくら入るの?」なんてことをメールしたりしました(笑)。

――著書では「ロッカールームでは濡れた靴下が飛んでくる」とも書いてありましたが……。

いたずら好きが多くて(笑)、特にバーディー、(クリスティアン)フクツ、(キャスパー)シュマイケルとかが、いたずらをしてくる。練習中とはテープをしてるとき、それを投げてきたり、濡れた靴下を投げてきたり、それを見てみんなが爆笑する。すごい勢いで飛んでくるので、たまにキレたりすることもあります。「Hey!」って。(言葉の問題もあって)こういうキレ方しかできないんですよ。僕は本当にキレているのに、それがまた笑いになったり……損だなーと(苦笑)。

――日本代表でも“いじられ役”というポジションになっているようですが(笑)。

立ち位置がそうなってしまいますね、どうしても(苦笑)。自分からいくというよりは、何かをされて反応すると笑いに変わる。「いじられてんな」と思ってます。年下とかにいじられたときは、これでえんんかなーと(笑)。まあ、それでチームが和むならいいかなと。

――SNSでもそんな動画が上がっていますね。

写真と見せかけて動画を撮ってるとか…何がおもしろいかなと(笑)。(長友)佑都とか。たまに本当にキレたりしますけど、みんなはまってますね。いつもネタを探しています。

――長友選手はSNSで本著のPRをされていました。

してますね、長友さん。その点に関しては感謝しかないですね。僕よりもフォロワーが何倍もいる、香川真司”さん”とか、長友佑都”さん”とか、そのおかげというのがあります。感謝しかないです。

――長友選手からの評判は?

実際にその後には会ってはいないのでわからないですけど、「いい本だね」と言ってくれてるはずです(笑)。

――日本代表で仲の良い選手は?

一番を決めることができない性格なので、まんべんなく仲良くやってますが、バスでは自然と(吉田)麻也が隣にいて、麻也がいつもバスの音楽の選曲でめっちゃ汗をかいてて、それを手伝って僕も汗だくになってますけど(笑)。海外組の選手と話すことが多いですね。国内組だと、滝川第二高校の後輩、金崎夢生もいて、僕は(高校当時)キャプテンだったので高校時代は話したことがなくて、恐れられていたはずなんですけど、今はため口で頭もばしばし叩いてきたりして(苦笑)……OBは夢生のことを怒っているはずです。

――日本代表のなかで流行っていることは?

SNSもはやってますし……あとは、(長友選手の)アモーレとかね(笑)。天の邪鬼なんで(そう)言おうか迷いましたけど、みんな「流行語大賞狙えよ」みたいになってます。

――今回の“熱愛”は知っていた?

ニュースになる前に報告してくれて。部屋まで言いにきてくれて、意外に義理堅いんや、いい奴やなと(笑)。

――“結婚の先輩”である岡崎選手が今のお二人にアドバイスするなら?

僕自身も、結婚をしてからサッカーにより集中できるようになって、家族も支えになっていますので、ぜひしてほしいなと思ってます。ただ、この勢いでは結婚してほしくないなと。佑都の性格もわかっているから、突っ走っちゃうタイプなんで。特に理由はないんですけど、落ち着いて考えて、慎重に結婚してほしいなと。すみません、真面目で(笑)。

――ワールドカップのアジア最終予選はどんな気持ちで臨まれますか?

強い気持ちを持って、W杯に出ることが夢ではないけど、その先の夢のためにも出なければいけない、出て結果を出さないといけないので。前回、ボスニアに負けたときも、簡単に失点したり、負けるべくして負けるところもあるし、決めるところを決めないと、突き詰めて、いい準備をして予選に臨みたいと思います。

――初戦がUAE、因縁の対決のような組み合わせです。

UAEが初戦なのは僕の中では嬉しいです。リベンジというか、あのとき(2015年1月のアジアカップで日本は敗北)の悔しさは今でも忘れられないので、因縁を感じるし、結果を出せれば自分たちがW杯に行けるという自信になる。

――レスターでの経験をこんなふうに生かせるというのはどんな部分ですか?

選手がチームメートをリスペクトするのはもちろんですが、それだけじゃなくて、選手一人ひとりが自分のことをまず考えて、自分がまず何ができるのかを一人ひとりが考えることで特長が出せる。それが自然と、“勝ちたい”とまとまったときに、すごいエネルギーが出せるということを実感したので、チームワークと言っても一人ひとりが小さくまとまるのではなく、それぞれがそれぞれの特長を出せるようなチーム、それが結果として大きい塊になっていくんじゃないかと、レスターでの一年を経て感じています。言葉で伝えるのは苦手なので、とにかくプレーで伝えたいです。

――岡崎選手のゴールでの勝利を期待されているファンも多いと思います。あらためて理想とするFW像を教えてください。

何が何でも、どんな内容でもゴールを獲ることができるFWはチームを救うし、それが自分のストライカー像です。ゆえに、未だ到達しなかったという思いがあるので、来シーズンは日本代表も含めて、いろんな戦いの場がありますし、どんな状況でも結果を出せる選手になっていきたいと思います。

――代表通算50ゴールが目前です。

目標にしていることだし、その積み重ねが自信になるので、ゴールを積み重ねたいです。

続いて会場のファンからも質問が飛んだ。

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――ドイツとプレミアのDFの違い、プレミアのDFでやりにくかったことは何ですか?

まず、レフェリーの基準が全然違うなと。ファウルの基準が“甘い”というか、ドイツならファイルなのがプレミアだとファウルにならない。その基準に合わせたDFがプレミアには多くて、ガンガン手も使ってきて、それでもファウルを取られないからフィジカル勝負が増える。ブンデスのときよりも相手の体が強いし、手で押さえられたときに身動きがとれなかった。ボールをうまくコントロールをしなきゃと考えさせられました。プレミアは強くて速いDFが多いですね。

――大切な試合の前に思い出す言葉は?

そこまで(具体的なものは)ないんですけど、追い込まれたときなんかに出てくる言葉で、「たかがサッカー、されどサッカー」というのがあります。ちょっと楽になれるおまじないというか、たかがサッカーだし、これで人生が終わるわけじゃないんだから、と自分に言い聞かせたときに、すごく楽に試合に入れる。いやなことがあったときとか、使いますね。

――今まで見た景色の中で忘れられない場面、景色は?

ヘディングしているせいか、そういう景色は忘れてしまうことが多いんですけど(笑)、嬉しかったことより悔しかったことのほうが覚えていますね。エスパルスの天皇杯、ナビスコカップの決勝で負けたとき、重要な優勝争いで負けたとか、W杯のコロンビア戦で大敗した試合とか、悔しい試合のほうがいつも頭にあって、だからこそ頑張れるというのがある。覚えているとしたら悔しい場面がほとんどです。

――今後、インスタグラムを始める予定は?

ちょっと相談してみます(笑)。

――昔、髪を伸ばして侍ヘアにすると言っていましたが?

したいんですけどね、辛い質問です(笑)。

――(レオナルド)ウジョア選手、(エンゴロ)カンテ選手が一緒に英語を習っているそうですが、一番上手なのは誰ですか?

僕が加入したときには、ウジョアが既に勉強していて、3カ月くらいで僕らのコースからいなくなったので、ウジョアですね。カンテと僕は同じくらいです。今はカンテと一緒に英語のレッスンを受けているんですが、カンテはフランスなまりで、何を言ってるかたまにわからなくて、なんとなく笑って返すしかないみたいなことはよくありますね(笑)。そういう、レッスン中のハプニングはちょいちょいあります。ただ、徐々に上達していますよ。

――緊張したりストレスもあるかと思いますが、どんなふうにリフレッシュしていますか? 好きな音楽は?

自分の中で、サッカーのことをよく考えてしまうので、一人でいて克服するには考え抜いて、「たかがサッカー」じゃないですけど、急にシンプルな考えに至ったときに楽になる。楽になるまでとことん考え抜くことが、いつもやっていることですね。サッカーから遠ざかるところといえば、家族がいてリラックスできているなと感じていて、それがサッカーを忘れる瞬間ですね。音楽もよく聴きますし、聴きながら寝ることも多いです。ケツメイシ、湘南乃風、GLAYとか、日本の曲を聴いてリラックスすることが多いですね。

――来シーズンのチャンピオンズリーグで対戦してみたいチームはありますか?

プレミアでやっていて、ヨーロッパリーグやチャンピオンズリーグをテレビを見ていて思うのは、スペインのチームとやったことがないので、スペインで頂点にいる、レアル(マドリー)、バルサとやってみたいですね。

――清水エスパルス所属の時に日本代表になれるイメージはありましたか?

入った当初は正直、プロでもやっていけるか自分でも心配になるくらいでした。それこそ、ユーキャンで保育士の資格の資料を取り寄せたこともあるんですけど(苦笑)。やっぱり自分にやれることをコツコツとやっていたら、気がついたらオリンピックに出て、そこで“海外でやりたい”という強い目標ができたときに日本代表にも呼ばれたので、(やれるという)イメージはすぐに湧いたわけじゃないですけど、コツコツとその状況をクリアしていくことで、自然と日本代表にたどりついたところはあると思います。

――自分の子どもがサッカーをしています。親から言ってほしい言葉、言われたくない言葉はありますか?

印象に残っていることで言うと、苦しいときなんかに親から「次があるよ」とか、そのポイント、ポイントでポジティブな言葉をかけてもらったことは覚えているし、「あきらめたら」と言われたらあきらめていたかもしれない。いろいろなことを言われていたとは思うんですけど、重要なのは、タイミングというか、それ以外のタイミングで言われたら「うるさいな」って頭に入ってこなかったかもしれない。悩んでいるときに元気が出るような、ポジティブな言葉をかけてもらえると嬉しいと思います。

――今日は茅ヶ崎から来ました。(6月19日に『イオンスタイル湘南茅ヶ崎 岡崎慎司フットサルフィールド』グランドオープン記念イベントを開催しましたが)なぜ一番最初に茅ヶ崎 でやろうと思ったのですか?

僕は兵庫県出身ですが、いろいろなところで子どもたちに教える活動もしたいと思っています。海外ではその辺にグラウンドがあって、そういう文化というか、スポーツが身近にあることに衝撃を受けました。日本のどこにあっても子どもにいい影響はあるだろうし、グラウンドがあればスポーツを中心に地域が盛り上がることにも繋がるし、たまたまそこでサッカースクールを知り合いがやっていたり、そこに自分が関わっていたので茅ヶ崎に作ろうと思いました。自分の希望としては、どこでもいいけど、環境を作って子どもたちにやってもらおうという思いがありました。

――今、一番手に入れたいモノは何ですか?

あんまりないんですよね。欲がないというか、モノではないですが、言っちゃえば、ゴールをいっぱい獲りたいなと思います。W杯優勝もそうですし、物質的に欲しいモノは特になくて、自分がやっていること、優勝や得点王とか、自分の中で自信になる賞は欲しいです。

――緊張を和らげる方法は?

教えてほしいですね(笑)。どんな試合でも緊張するので、緊張を解く方法を見つけていない。でも、だからこそ、一生懸命やればいいのかなと考えています。開き直れているというか。「こんなの緊張する、だからやろう!」と思えばいいのかなと。「何で緊張するんだ」って悲観的にならなければ、緊張はだめなことじゃないのかなと思います。でも、方法を見つけたら教えてください(笑)。プレミア1年目の1試合目でも、練習試合でも、なんでも緊張してしまいますね。

――(先ほど話に出た)ボスニア戦でも、フィジカルがものすごく強い相手と戦いました。フィジカルの強い相手と戦うときに大切なことは?

フィジカルが強い相手とやるときに、それを怖がって戦わないのが一番だめなので、自分たちが受け身にならないこと、「負けないよ」という強い気持ちが必要。戦い方は監督が決めることだけど、一対一、一人ひとりの意識は自分たちが解決できることだと思うので、W杯最終予選でもフィジカルの強い相手はいるので、気持ちの強さもそうだし、相手の体が強いからって球際にいかない、とかではなくて、勝ったり負けたりの争いに挑戦していかなきゃいけないし、その部分で一人ひとりが高い意識を持ってやることですね。

――10月にイギリスに行く予定です。レスターの素敵な場所、オススメはありますか?

街で散歩することがなくて、僕が教えてもらいたいくらいですが(苦笑)、レスターの大聖堂とかは綺麗な場所だと思います。1、2時間で街を制覇できるので、まず歩いてみてほしいです。レスターというチームのこともわかるのでおすすめです。

――今まで対戦して、一番強かった国は?

やっぱりブラジルが強かったですね。コンフェデレーションズカップ(2013)で0-3で負けたけど、あんなに圧倒されることはなかったなと。あとは、W杯(2014)のコロンビアも強かった。強い国がたくさんあるので、頑張ります!

ファンとのつかの間の交流を楽しんだ岡崎は、最後にこう語り、イベントを締めくくった。

「皆さんの顔が見られて嬉しいです。これから頑張るエネルギーになりました。本当にありがとうございます。皆さんが自分に期待してくれていると思いますので、これからも期待に応えられるよう頑張りたいと思います。新シーズン、たぶん厳しい戦いになると思いますが、チャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、日本代表でのW杯予選と、すべて全力で、そして常にゴールを取れるように強い気持ちをもって頑張りたいので、これからも応援よろしくお願いします」

さらにイベント終了後、岡崎はメディアの取材に応じた。

――今日のイベントの感想は?

こんなに歓声が上がることはあんまりないんで、本当に嬉しかったです。皆さんが、いろんな人が、自分の気持ちを知ってくれたというのが嬉しいです。

――「未到」という本にはどんなメッセージを?

優勝の舞台裏で自分が何を考えたのかというのを、本当に事細かに一試合一試合、一日一日、感じたことを記しています。見ている人からしたら“優勝”だけかもしれないけど、自分にとっては悔しかったり、怒りだったり、嬉しいときもあったし、その感情の起伏を理解してほしいし、どういうふうに考えたかっていうのを、読んだ人に知ってもらいたいと思います。

――オフはリラックスできましたか?

まず、子どもたち、サッカースクールなど、そういうイベントをやっていて、子どもたちの笑顔や喜んでくれる姿を見たくて自分たちから会いに行ったというか、すごくリラックスできましたし、エスパルス時代の大事な人にも会えました。

――特に応援してくれる人、“おばあちゃん”には会われましたか?

おばあちゃんにも会いました。「優勝おめでとう」ということは言ってくれましたが、おばあちゃんも来シーズンを見据えていましたね(笑)。「人生とは」ということを一生懸命話してくれたので、自分も勉強になりましたし、これからのサッカー人生に生かしたいと思いました。

――かけてもらった言葉で印象に残ったものは?

92、3歳のおばあちゃんの年齢からしても、毎日“頑張る”のはきついとは言っていて、それでも「コツコツとやれることをやっていく」という言葉の重みはあるなと感じました。アスリートではないですけど、人生の先輩として、自分も頑張らないとなと。人生の先輩ですし、一番の僕のサポーターだと思っています。メールとかでも、おばあちゃんだけは「まだまだこれじゃ満足しちゃいけない」と、他の人とは違う言葉を贈ってくれるので、すごく力になります。

――ゴール数ではよく目標を聞かれるかと思いますが、本の販売部数では?

もともと、これを知ってほしいという思いがありましたが、自分が次のシーズンに生かせるよう、自分のために作ったというのもあるので、結果はどういうふうになるかわかりませんが、いろんな人に見てもらって、岡崎ってそういう人間なんだって知ってもらえたら嬉しいです。「結果ではなく、ここは内容」で。

――去年は夢のような一年だったと思いますが、来シーズンはどんな年に?

“夢のようなシーズン”だったかもしれないですけど、それが逆に悔しさと怒りの一年間でもあったので、そういう意味では「未到」の文字通り、満足しないで、次のシーズンは自分が一つでも、一試合でも満足できるような試合を増やしていきたい。ストライカーとして海外で戦っていきたいという思いがあるので、ゴールを獲り続けて、自分の価値を証明できるようなシーズンにしたいです。

――リオ五輪世代の選手に向けて、ご自身も五輪を体験して世界観が変わったかと思いますが、今の選手にどういったことを感じてほしいですか?

自分の、自分たちの持てるすべてを出してほしいなと思います。その上で、できることとできないことがあると思うし、結果が付いてくるかどうかはわかりませんけど、すべてを出し尽くさないと自分の成長にはつながらないので。日本人としてはメダルを期待してるし、メダルを取ってほしいと思います。

――ご自身は北京五輪を経験しました。

世界を経験するという意味では、そこで試合をしたことで「海外に行きたい」という明確な目標が持てました。そういう転機にもなることは間違いないと思うので、自分たちの全力を、すべてをぶつけてほしいなと思います。

――A代表もW杯予選を迎えます。

(キリンカップで)ボスニアに負けてしまって、いわゆる自分たちの課題というものがまた見えたと思うし、もちろん負けたのは悔しかったですけど、いい意味で負けた教訓を次に生かしたい。W杯の切符を取りにいきたいです。

――課題や不安要素はありますか?

不安要素がない状態で予選に向かうことがベストです。練習試合もない状態なので、みんなと話し合うことが大事だと思うし、戦うことに迷いが出ないよう、みんなで解決していきたいです。

――エスパルス時代に経験したことで、今回のレスター優勝に生かされたことは?

本当にいいチームで戦って、悔しい思いを何回もしたので、その思いが自分のエネルギーに変わったと思いますし、エスパルスとしてはタイトルを取ることができなかったですが、そこでつらかった6年間、そこでの経験があったからこそ、今回の優勝につながったと思います。

――最後に、この本を通じて岡崎慎司のこういうところを知ってほしいという部分を教えてください。

自分の、こっそり何かやっているというのはあまり知られたくないというか、どんなときでも隠すタイプなんですけど、でもこの本では、あまり包み隠さずに公表しています。そういう考えを持っているんだとか、リアルな自分というか、とくに一年間、考えが変わる瞬間での思いなども書いてあるので、そういう、今の本当の岡崎慎司を知ってもらえたらと思います。

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「今の本当の岡崎慎司」を記したという同著の最後を、岡崎はこう締めくくっている。「僕の挑戦の日々は続く。」と。

「満足してしまえば楽だけど、それでは未来がない。今シーズンは果たせなかった、プレミアリーグでの2桁ゴール。その目標を達成するため、チームを勝たせる選手になるため、そして、世界一のストライカーになるために――」。譲れない矜持を胸に、岡崎慎司の挑戦は続く。