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パラスポーツの奥深さを体験! ~ゴールボール編~

荒木美晴フリーランスライター

2016年リオパラリンピック、そして20年東京パラリンピックに向け、多くの各競技団体が選手強化に力を入れている。同時に、競技人口を増やすための仕組みづくりも急務となっている。しかし、日本では指導者やスタッフの多くがボランティアとして関わっていることもあり、普及と育成のシステム構築が後手になっているのが現状だ。

各地で競技を盛り上げよう!

コートは18m×9m(バレーボールのコートと同じ広さ)
コートは18m×9m(バレーボールのコートと同じ広さ)

そんななか、3月29日に滋賀県守山市で「ゴールボール」の体験会が開催された。まずは一人でも多くの人に、どんな競技かを知ってもらおうという試みだ。主催者がフェイスブックなどを活用して参加を呼び掛け、市長をはじめ、県内外からのべ30人が参加した。

ゴールボールは1チームをセンター、ライト、レフトの3人で編成する対戦型競技。全選手が光を遮断するアイシェード(目隠し)を着け、音源(鈴)の入ったボールを投げてゴールを狙う。夏季パラリンピック正式種目で、12年ロンドンパラリンピックでは日本女子代表が史上初の団体金メダルを獲得している。

アイシェードは着用すると完全に見えないようになっている
アイシェードは着用すると完全に見えないようになっている

ちなみに、パラリンピックでは視覚障がい者のみが参加資格を持つ。だが、アイシェードを着用すれば誰もが条件は同じであることから、日本選手権などの大会では晴眼者も参加可能となっている。

「ロンドンで世界一になった直後は盛り上がりを見せたが、その火はシュッと消えてしまった」と話すのは日本ゴールボール協会の西村秀樹さん。とくに地方では、競技を実際に見る機会自体が少なく、十分な認知度があるとは言えない。普及については、これまで盲学校を中心に行ってきたが、視覚障がい者自体の数が減っていることもあり、一般の学校、とくに中学、高校に通う視覚に障がいを持つ子どもたちに競技を知ってもらう機会を増やす必要があるという。そこで重要になるのが、選手や関係者による講習会や体験会の定期的な開催だ。今回はその基盤づくりの第一歩という位置付けで、発起人である西村さんの地元での開催に至った。

究極の集中力が求められる奥深い世界を実体験

手や足でラインを触って自分の位置を確認する
手や足でラインを触って自分の位置を確認する

午前中にボールの投げ方や守備の基本を学び、午後からは男子と女子のチームに分かれ、それぞれ10分間のミニゲームが行われた。筆者も思い切って参加させてもらった。ちなみに取材経験はあれど、コートに立つのはもちろん初めてのことである。

アイシェードは真っ黒のゴーグルのようなもので、光も遮断し、当然何も見えない。それを着用した瞬間、自分がどこに居るのか不安になった。必死でゴールのポールとライン(テープの下にタコ糸が通されていて凸凹の感触で位置を把握する)を手で触り、心を落ち着かせる。味方同士の距離感がわからなくなることも不安になった。アドバイス通り声を出したり、手を叩いたりして自分の存在を知らせてみたが、焦ってばかりで必要のない場面でやっていたかもしれないと反省した。

最初はこのように近くにボールがあっても手探りの状態。それが慣れてくると、動きもスムーズになってくる
最初はこのように近くにボールがあっても手探りの状態。それが慣れてくると、動きもスムーズになってくる

プレーが始まり、ボールを投げてみる。ところが、相手ゴールにたどり着く前にサイドアウトのコールがかかる。え!? まっすぐ投げたつもりなんだけど! その後も何度かチャレンジするが、ボールは横にそれ、半分くらいはアウトになってしまった。ラインを確認し、自分のポジションから立ちあがってそのまま投球しただけのつもりが、身体は斜め方向を向いていたようである。

投球者の足のステップの音とボールの音を聴きわけろ!

一番右端が筆者。一人だけ反応できていない
一番右端が筆者。一人だけ反応できていない

相手の投球には横っ跳びして全身でディフェンスするのが基本。頭の中ではそれをイメージしているのだが、どうもうまく反応できない。前から転がってくるボールの音が、本当に自分の近くに来るまで分からないのだ。「き、来た!」と思って手を出しても間に合わず、ボールはゴールに吸い込まれる。慣れてくると、相手がコートのセンターから投げたとか、レフトからクロスボールを投げてきたということは分かるようになってきた。2度目のゲームではなんと1点を入れることができたのだが、「助走しないと!」とのコートの外からのアドバイスを実践する前に試合終了となってしまった。

とにかく、集中力とチームワークが大事だ。代表クラスの選手になると、ボールの音だけでなく、相手選手のわずかな足音からも投球の位置を把握するのだという。もちろん、筆者は足音で判断する集中力も余裕もなかったが、ブラインド競技ならではの奥深さの一端に触れることができたように思う。

体験会定期開催に向けて、貴重な第一歩に

ボールは転がすようにして投球する。スローボール、変化球、回転投げなどの技もある
ボールは転がすようにして投球する。スローボール、変化球、回転投げなどの技もある

県内在住の大学生の男性は参加したゲームを振り返り、「真っ暗で本当に音だけが頼り。ボールは思った方向に投げられていないし、いかに普段、視覚に頼っているかがよく分かった」と語ってくれた。この感想に筆者も同感。まさに、見ているのとやるとのでは全然違うことを体感したと同時に、この競技に取り組むアスリートのすごさを改めて感じた。

11歳のころの交通事故が原因で右目の視力を失ったという25歳の女性にも話を聞いた。ゴールボール歴は1年。「一般の中学や高校に通っていたけれど、体育は見学することが多かった。でもゴールボールは健常者も一緒にプレーできる競技なので、学校の体育にも取り入れたら壁がなくなるのではないかと思う」と自らの経験を絡め、競技の普及に期待を寄せた。

西村さんは、「初めての人ばかりとは思えないほど白熱した試合でした。楽しんでもらえたようだし、きっかけとしては良かったと思います」と笑顔。また、「これからが勝負」とし、「4月以降の定期開催に向けて、準備を進めていきたい」と話している。

ゴールボールに興味をもたれた方はこちらへ

■日本ゴールボール協会オフィシャルホームページ(リニューアル中)http://www.jgba.jp/

■日本ゴールボール協会フェイスブック https://www.facebook.com/goalballjapan

フリーランスライター

1998年長野パラリンピックでアイススレッジホッケーを観戦。その迫力とパワーに圧倒され、スポーツとしての障がい者スポーツのトリコに。この世界の魅力を伝えるべく、OLからライターへ転身し、障がい者スポーツの現場に通う日々を送る。国内外における障がい者スポーツの認知度向上と発展を願い、2008年に障がい者スポーツ専門サイト「MA SPORTS」を設立。『Sportsnavi』『web Sportiva』などスポーツ系メディアにも寄稿している。パラリンピックは2000年のシドニー、ソルトレークシティ、アテネ、トリノ、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオ大会を取材。MA SPORTS代表。

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