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全米で映画版『BLUE GIANT』公開。北米プレミア上映会に上原ひろみさん登場

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) 2023 Blue Giant Movie Project

日本の人気漫画『BLUE GIANT』(ブルージャイアント/原作・石塚真一)。そのアニメ映画版(監督・立川譲)がついにアメリカにも上陸し、10月8日と9日に映画チェーン大手AMCを含む全米の映画館で一般公開された。

この公開に先駆け6日、ニューヨークで北米プレミア上映会が行われ、ファンが詰めかけた。関係者によると一般25ドル(約3700円)の映画チケットは3時間で売り切れるほどの人気ぶりだった。満員御礼となった会場では上映中、映画の世界に入り浸ったファンが時に涙、時に拍手喝采を送る姿が見られた。

上映後は、スペシャルゲストとして劇伴音楽のほぼ全曲の作曲と、演奏、およびサウンド・プロデュースをしたジャズ・ピアニストの上原ひろみさんがファンの前に現れた。

壇上で通訳なしで流暢な英語で受け答えをした上原さん。映画に携わる以前に漫画本を読み本作のファンになったという。映画の中では実際に曲の演奏も彼女自身が行なったわけだが(10代の無名ミュージシャンが主役のストーリーに合わせ)「なるべく下手に弾くのが難しかった」ようで「調律師に完璧にせぬようリクエストを出した」ことなど裏話を披露し、会場から笑いが漏れた。

同作から得たインスピレーションとして、人を動かす、感化させる動機には心と心の通い合いや響き合いの存在があるとも語り、人生のいかなる場面においても「挑戦し続けることの大切さ」こそが本作のテーマだとした。

上原ひろみさんが登壇しファンからの質問にも答えた。(c) Kasumi Abe
上原ひろみさんが登壇しファンからの質問にも答えた。(c) Kasumi Abe

ニューヨークはニューオリンズと並びジャズの本場の一つとされている街だ。本物を見抜く人が多いそんな土地柄においても、『BLUE GIANT』が観た者の心を掴み共感されたことは、海外における日本のアニメシーンにおいて新たなページを開いたと言えるだろう。

特にアメリカはコロナ禍以降、空前のアニメブームとなっており、その人気は(一時期元気のなかった)リアル書店復活劇の一助を担っているほどだ。7月には『THE FIRST SLAM DUNK』(ザ・ファーストスラムダンク)もカナダを含む北米で公開され、ファンの間で大きな話題となった。

NYマンハッタンの人気書店にて。店の「中央」に漫画コーナーが設置されている。(c) Kasumi Abe
NYマンハッタンの人気書店にて。店の「中央」に漫画コーナーが設置されている。(c) Kasumi Abe

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(c) 2023 Blue Giant Movie Project (c) 2013 Shinichi Ishizuka, Shogakukan 

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ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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