まもなく40周年。プリムス「2243バーナー」が愛され続けるその理由
【理由②】市場の声に応え続けたアップデートの歴史
「発売して30年以上経ちますが、実はかなり細かいアップデートを重ねています。主に火力アップを目指した改良ですが、“単純に燃料の供給量を増やしたり、加工を大きくしたりすればいい”というものではないんです」(金牧さん) 「2243」といえばハイパワー。285個の炎口が生み出すブルーフレイムは3300kcal/hと高火力です。 「燃焼のためには燃料だけではなく、多くの酸素を取り込む必要があります。先ずはバーナーヘッドと燃料のOD缶をつなぐ管にあいた大きな穴から“一次空気”として空気を取り込み、燃焼に必要な約6割の酸素が燃料とミックスされます。この管を“混合管”と呼んでいます」(金牧さん) また、良く見てみると、バーナーヘッドの一部に炎口がありません。“火力を出すなら炎口を増やした方が良くない?”と素人目線で思ってしまいますが、これも実は高火力のために一役買っているのだといいます。 先ほどの混合管から燃焼に必要な6割の酸素が取り込まれるとありましたが、ヘッドの炎口がない部分は、残りの4割を得るためのもの。ここから取り込んだ“二次空気”から残りの酸素を得ることで、美しい青炎と高火力を実現できるのだといいます。 ずっと何のための穴なのかと思っていたけど、ここ空気孔だったんですね。 1985年に発売されて以来、実に10回以上の変更が行われていた「2243」。火力向上はもちろん、それ以外にもバルブのつまみの素材や長さといった使い心地に関わる部分まで、非常に細かい修正を繰り返されてきました。 常に市場のニーズに合わせて変化してきたわけですから、ロングセラーというのも納得です。 ちなみに「2243」のバーナーヘッド、他のバーナーにも使われてるって知ってましたか? 「大きいサイズのヘッドのため、火の広がり方が非常に優秀なんですね。高火力はもちろんですが、大型のクッカーにもしっかり火を当てることができるため、オートキャンプ用のバーナーにも採用しています」(金牧さん) このあたりからも、「2243」の完成度の高さが伺えます。 1970年代に登場して以来、その携行性の高さやメンテナンス性の良さから徐々に浸透していったガスシングルバーナー。それまで主流だったガソリン式のバーナーと比べて、その軽さとコンパクトさはかなり衝撃的だったと聞きます。 今でこそ、より小型で軽量なシングルガスバーナーが各社から発売されていますが、クッカーを選ばずに使える、安定感のあるバーナーは実はそれほど多くありません。そういうニーズを上手に拾っているのもここまでロングセラーな理由ではないでしょうか。
<取材・文/山口健壱>