神戸に無敗伝説を導くイニエスタの陰の努力とは?
雄弁に言葉を発するタイプではない。バルセロナ時代から、プレーを介して思いを伝えてきた。後半開始とともにピッチへ投入され、同31分にはプロ初ゴールとなる2点目を決めてダメを押した、ルーキーのMF郷家友太(19、青森山田高卒)はすでに何度もメッセージを感じている。 「前を向いてほしいとか、パスをリターンしてほしいとか、いろいろなパスが来る。僕にはショートパスであえて弱く出してくれるので、僕が周りを見る時間も作ろうとしてくれることも感じています」 そして、今シーズンから浦和レッズより加入した36歳のベテラン、DF那須大亮に対しては、イニエスタは胸中に秘めた熱き思いを打ち明けている。試合へ向けて前泊するホテルで食事する席が近いときなどに、イニエスタは「僕にはこのチームを強くする責任がある」と語ったと那須は明かす。 「これだけのキャリアがあって、これだけの成績を残した選手なのに。言うなればJリーグはヨーロッパの舞台(のレベル)から少し落ちてしまうというか。それでもこのチームを強くするという志がすごいな、と」 生涯2つ目のチーム、ヴィッセルを新たなステージへ導く。覚悟と決意を抱いて来日したイニエスタは2試合連続で決めたスーパーゴールで日本中に衝撃を与え、来日5戦目でついに一本のパスで味方を意のままに操る 「伝家の宝刀」も抜いてゴールを導き、2-0の快勝につなげた。 「本当に難しい試合だったが、目標であるACL出場を目指すためには、なんとしても勝たなければいけなかった。自分はゴールを決められなかったけど、一番大事なのはチームが勝つことなので、それを達成できて本当に喜んでいる」 控えめに語るイニエスタだが、先発した試合は3勝1分けと無敗が続いている。順位は4位と変わらないが、3連敗を喫した3位・FC東京との勝ち点差は4ポイントに迫った。残りは11試合。イニエスタがフィットするごとに輝きを増すヴィッセルが、終盤戦に入るJ1戦線の台風の目になりつつある。 (文責・藤江直人/スポーツライター)