「ロリータは砂糖菓子しか食べない」に耐えかねてロリータでラーメン!自身の「好き」をめぐって葛藤する少女を描くマンガ【書評】
おいしいものは人を幸せにする。一人で食べてもおいしいが、好きな人と食べると、もっと幸福度は増すだろう。『ロリータ飯』(岡野く仔/KADOKAWA)を読むと、そんな当たり前の幸せについて改めて考えさせられる。 【漫画】本編を読む
主人公・鈴木なつ子は、ロリータ服が大好きな20歳の女の子。「ロリータは砂糖菓子しか食べない」との思いから、ロリータ服を着ている時、特にロリータ仲間と食事する時は、かわいくて甘いものを食べるようにしている。パフェやクロワッサンはたしかにかわいいけれど、20歳の胃がそれだけで満たされるわけがない。空腹に耐えかねてロリータ服を着たままラーメン屋に入店。思いきりラーメンを食べるのだった。
その後もロリータ服でカツ丼やハンバーガーを食べるなつ子。そこにたまたま居合わせたのが、大学の同級生の田中ふゆ弥だ。彼の好みのタイプは「ご飯をおいしそうに食べる子」。なつ子の素晴らしい食べっぷりを見たふゆ弥は、自然と彼女に惹かれ「一緒にご飯を食べたい」と思うようになる。そしてふゆ弥からアプローチし、2人で一緒にご飯を食べるようになるのだった。
本作の見どころの一つが、なつ子の食べる姿だ。食べる所作が美しく、おいしそうに食べる姿を見ているとこちらまでお腹が空いてくる。「いただきます」と「ごちそうさま」をきちんと言い、食べる時にスマホを触らず、心底食事を楽しみ、おいしくいただく。できそうで案外できない。彼女の食べる姿を見て、ふゆ弥が好きになるのも納得だ。 本作ではロリータファッションが取り上げられているが、服装と食事との関係は根深いものがある。高級レストランではドレスコードを指定しているところもあるし、食事をする場所によっては、その場の雰囲気や格式にふさわしい服装を求められることもある。なつ子が「ロリータ服を着ている時はかわいいものを食べなきゃ」と思うのも無理はない(結局ラーメンを食べるけども)。