死にゆく場所ではなく生きる場所。TSURUMIこどもホスピスで幸せな生き方を考える
── 本当にお恥ずかしい話、寄付金で運営されていると聞いて「大変そうだな」と、浅はかにも思ってしまいました。 原 もちろん、大変な部分はありますよ。ただ、我々が参考にしたイギリスの場合、ホスピスや病院は、すべて教会から始まっている。だから民間セクターがケアや医療に関わるのが普通なんですよ。日本も、かつては私塾があって識字率が向上した歴史があります。民間主体で課題を解決したり仕組みを作ったりする発想が、だんだん失われてしまったのではと思います。 僕たちみたいに、純然たる寄付金だけで運営されている団体は特別視されがちですが、こういう民間セクターが日本でももっと成熟・発展していくべきだと思いますね。 高場 イギリスのこどもホスピスは、地域に不足してるものやニーズから、次の支援や仕組みが生まれていくのが特徴的です。「今、何が必要だろう」という意識が働いてる。けれど行政の制度に組み込まれてしまうと、そういう視点は働きにくくなってしまう気がして。 私達の取り組みは、子どもたちや家族に選ばれないといけません。選ばれるにはどうあるべきかを考え続けなければいけない。すべては子どもたちや家族に「『こどもホスピス』があってよかった」と思ってもらえない限り、成立しようがないからです。 日本の医療は制度化されて、治せる病気が増えました。ただ、その周辺にある取り組みまで制度化されてしまうと、その枠を超えにくくなってしまう。利用者に選ばれるという意識が生まれづらくなり、言われたことだけをやり続けるような場所になってしまうと思います。だからこそ、民間でやる意味があるんです。 ── 最近は、国内のいろいろな地域でも「こどもホスピス」のような場所を作りたいという動きが増えていると聞きますが、新しく作る際の一番のハードルは何だと思いますか? 高場 予算だと思います。行政の取り組みとして支援してほしいと考えられる方もいますが、私達は最初から寄付で運営しているため、「私もできる」と思ってもらえるような情報発信や活動をしていきたいですね。 原 「こどもホスピス」が立ち上がる上で、一番大事なのは病院との繋がりです。なぜなら、病院側に「こどもホスピス」のニーズがあるから。我々は、病院と一体になる必要があるわけです。 当時の医者には「こどもホスピス」のような選択肢が存在しませんでした。とにかく最後まで治療を続けることが最優先。だからこそ僕は医師として「こどものホスピスプロジェクト」を立ち上げましたし、大阪市立総合医療センターが小児がん拠点病院になり、そこに通っている家族や子どもたちが「こどもホスピス」を知って来てくれるような流れを作ることができました。