777X、試験機のエンジン固定部品に不具合 ANAも発注
ボーイングが開発を進めている次世代大型機777Xの飛行試験機に不具合が見つかり、飛行試験を中断している。米有力航空メディア「The Air Current(TAC)」が報じたもので、ボーイングによると、エンジンを機体に固定する構造部品に問題が見つかり、飛行試験を当面中止するという。日本では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が発注しており、2025年度の受領開始や、サプライヤー各社への影響が懸念される。 【写真】折りたたみ式翼端を採用した777X試験機の機内 ◆3号機で発覚 問題が見つかったのは、7月から飛行試験に投入している777-9の飛行試験3号機(登録記号N779XY)。現在ハワイのコナ空港で試験を実施しているが、TACによると、飛行試験後の現地時間8月16日に不具合が見つかったという。航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、3号機は15日に約5時間31分フライトしており、この飛行試験後に発覚した。 ボーイングは、「定期メンテナンス中に、設計通りに機能していない部品が特定された」と説明。当該部品は2基あるエンジンに2つずつ使われており、冗長性を持たせているという。777Xの飛行試験機は4機あるが、TACは関係者の話として、ほかの試験機も稼働中の2機で「スラスト・リンク」に亀裂が見つかったと報じており、すべての飛行試験機で同様の問題が発生しているようだ。 スラスト・リンクは、エンジンを機体に固定する重要な構造部品。ボーイングは、2機の点検は計画されていたものだとしており、FAA(米国連邦航空局)や顧客にも情報を共有しているという。 FAAは、「ボーイングは先週の777-9の飛行試験後、損傷した部品を発見したとFAAに報告し、問題を評価するための措置を講じている」との声明を発表した。 ◆ANAも発注 777の後継機となる777Xは、メーカー標準座席数が2クラス395席の777-8と426席の777-9の旅客型2機種、最大積載量(ペイロード)118トンの貨物型777-8Fの計3機種で構成。開発は777-9から進められている。航空会社などへの納入開始は当初、2020年を計画していたが、エンジンの不具合やボーイングの品質問題などの影響で、2025年を予定している。 主翼が777よりも長くなったことから翼端を折りたためるようにし、777が現在乗り入れている空港に就航できるようにした。このため、全幅は翼端を展開時は71.75メートル、地上で折りたたみ後は64.82メートルとなる。737 MAXや787で品質問題が相次いでいることから、FAAは777Xの型式証明についても、従来より厳格な姿勢で挑んでいるため、今回のトラブルが納期にどの程度影響するかが注目される。 ボーイングの受注履歴によると、7月31日時点のキャンセルを含む777Xの総受注は540機で、受注残は481機。日本の航空会社では、ANAを傘下に持つANAホールディングスが777-9を18機、777-8Fを2機の計20機を発注済みで、777-9は2025年度から受領を計画している。 また、7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでは、737 MAXや787で度重なる不具合が発覚した影響で、777Xを含む民間機の実機出展をボーイングは取りやめたが、カタール航空(QTR/QR)が777-9を20機追加発注。カタールはこれまでに777-9を40機、777Xの貨物型777-8Fを34機発注しており、777Xの総発注数は94機に拡大した。ファンボロー初日の7月22日には、新個室ビジネスクラス「Qsuite Next Gen(Qスイート・ネクストジェン)」を777-9に搭載し、2025年に就航させると発表している。 ファンボロー開幕前日の21日には、ボーイングのステファニー・ポープ民間航空機部門社長兼CEO(最高経営責任者)が、品質問題が起きている737 MAXと787の生産レートを年内に戻すことを明らかにし、安全性や品質の向上に注力していることを強調。今回の不具合が、737 MAXや787の増産にどのような影響を及ぼすかも注目される。
Tadayuki YOSHIKAWA