<近江・支える人>第96回選抜高校野球/下 武田弘和部長(42)、小森博之コーチ(40) 選手見守るOB2人 /滋賀
18日に開幕するセンバツに出場する近江には、部活と学校生活の両面で選手を支える2人の野球部OBがいる。武田弘和部長(42)と小森博之コーチ(40)だ。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 高校時代の武田部長は、多賀章仁監督から「練習はうそはつかん」と言われ、毎日始発電車で学校に来て、授業が終われば終電まで練習に励む「練習の虫」だった。しかし、高校最後の夏は県大会決勝で敗れ、甲子園の舞台に立つことはかなわなかった。 その悔しい思いを晴らそうと京滋大学野球リーグの強豪、佛教大(京都市)に進み、全国大会の舞台を目指した。一方で、部の仲間に誘われて教員免許取得を目指し勉強に励んだ。母校での教育実習で多賀監督から懸命さを評価され、2004年に非常勤講師となり、野球部のコーチに。その後教諭となり、18年からは部長として部を支えている。 部長の仕事はいわゆる「何でも屋」だ。監督、コーチ、選手のために常に先を読んで行動する。練習で使用する道具の発注や予定表の作成をはじめ、練習試合の調整や外部との連絡など多くの仕事を着実にこなすことが求められる。 その傍らで、教師として選手たちに「人生のレギュラーになれ」と説く。高校時代は控え選手でも地道に努力を続けた結果、社会人として成功する仲間を多く見てきた。「野球がうまくなくても人が見ていない部分で努力できる人は将来社会に出た時、絶対に人生のレギュラーになれる」。野球のみならず人間として成長してほしいと願い、選手と向き合い続ける。 小森コーチは高校時代に主将を務め、01年夏の甲子園準優勝を経験した。多賀監督をはじめ自分たちを導いてくれた人たちに「恩返しをしたい」という思いから05年にコーチとして母校に戻った。 グラウンドでは「粘りの野球」を特に意識して指導にあたる。甲子園は一度でも負ければ全てが終わる。球児時代は一投一打に悔いを残さないように練習から「真剣勝負」をモットーにチームを引っ張ってきた。選手にも声を出し気合を入れて勝負に挑むこと、つらくても最後まであきらめず、負けない気持ちを持ち続けることを求める。一方で、グラウンドを離れれば「人と人とのつながりを何よりも大切にすべき」と、選手のことをいつも気にかける兄貴分としての一面を持つ。 小森コーチは日本一に挑む後輩たちに「自ら逆境に立ち向かう姿勢」を持ってほしいと願う。「自分で道を切り開いてほしい。甲子園に立つと最初は不安に襲われるかもしれないが、こんなことで負けたらたまるかと乗り越えてほしい。それがこれからの人生にも生きるはず」とエールを送った。【菊池真由】