「かかりつけ医に通う高齢者は必要なし」 マイナ保険証は本当に必要? 医師、薬剤師が徹底解説
「救急搬送時にマイナ保険証を活用すると6分以上余計に時間が」
政府広報には、 〈救急の患者にマイナ保険証の薬剤情報が役立った〉 との記述があり、現在、全国の消防本部では、救急搬送の際、マイナ保険証を読み取って役立てる実証実験を行っている。例えば、離れて暮らす高齢の親が急に倒れて救急搬送される際、健診や薬の情報を把握する手段としてマイナ保険証が役立つ場面はありそうにも思えるが、 「救急で心停止しそうになっている人の処置をする場合、血液がサラサラになる薬を飲んでいようがいまいが、やらなければならないことは決まっています。薬とか健診の情報を確認している暇などないはずです」(大阪府守口市にある北原医院院長で大阪府保険医協会副理事長の井上美佐氏) また、実証実験でも、 「救急搬送時にマイナ保険証を活用すると、しなかった時と比べて6分29秒も余計に時間がかかったというデータが出ています。救急車の中でマイナ保険証のデータを閲覧するのに時間を要したということですが、何をやってるの、という感じです」(同)
「なぜ保険証を廃止するのかが分からない」
やはり利点より難点が目立つマイナ保険証。すでにマイナカードを取得した国民の8割が保険証としての利用登録も行っていることについては前編で触れたが、今後、その「ひもづけ」の解除が可能になるという。 「10月からマイナ保険証の登録解除が可能になります。それぞれが加入している保険者に利用登録解除の申請をすると、ひもづけが解除され、代わりに資格確認書が交付されます」(同) 『マイナ保険証の罠』の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう語る。 「資格確認書は、ほとんど現行の保険証と内容が変わらないんですよ。だからこそ、なぜ保険証を廃止するのかが分からないのです」 とした上で、次のようにアドバイスする。 「12月2日以降は保険証の新規発行ができなくなるだけで、有効期限が切れていなければ今の保険証を最長1年間は使えますから、“保険証はもう使えないから捨てちゃおう”なんて思わない方がいいです」 また、マイナ保険証に切り替えた人に対しては、 「利用登録後、『資格情報のお知らせ』が郵送などで届きます。マイナ保険証が窓口で不具合などで使えない時のために、その『資格情報のお知らせ』も病院などに一緒に持っていくことをおすすめします」(同)