馬とともに暮らす遊牧民たちのオリンピック「ワールド・ノマド・ゲームズ」を知っていますか
馬をよく知る遊牧民の競技大会
ノマド・ゲームズは、同じように感じた⼈々の思いから始まったのではないだろうか。 過去3回の⼤会がキルギスで⾏われたことから察せられるように、この⼤会の中⼼は、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンといった中央アジアの国々やアゼルバイジャンである。 遊牧⺠が多く、⾺の多い場所というと、極東アジアの⺠である私は真っ先にモンゴルを思い浮かべる。それは間違いではない。しかしノマド・ゲームズに限っては、世界の中⼼はモンゴルではなく、もっと⻄の中央アジアなのだ。 これらの地域に共通するアイデンティティは、⽂化の差異や宗教の違いなどはもちろんあるが、13世紀にモンゴル帝国に征服された、ユーラシア⼤陸の東⻄にまたがる広⼤な草原地帯(モンゴルはモスクワやキーウに⾄るまで征服した!)ということができる。 ノマド・ゲームズはモンゴル、オスマン、ティムール、ロシア、清といった帝国が通奏低⾳として響く⼤会であるといえるかもしれない。 文/星野博美
---------- 星野博美(ほしの ひろみ) 1966年、東京生まれ。『転がる香港に苔は生えない』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞、『コンニャク屋漂流記』で第63回読売文学賞「随筆・紀行賞」・第2回いける本大賞、『世界は五反田から始まった』で第49回大佛次郎賞受賞。 主な著書に『島へ免許を取りに行く』『戸越銀座でつかまえて』『今日はヒョウ柄を着る日』『愚か者、中国をゆく』『みんな彗星を見ていた──私的キリシタン探訪記』『謝々! チャイニーズ』『銭湯の女神』『のりたまと煙突』『旅ごころはリュートに乗って──歌がみちびく中世巡礼』などがある。 ----------
星野博美
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