「力士の実母と祖母が部屋を匿名誹謗中傷」騒動、何が起きたのか 渦中の西岩部屋は「隆の里の鳴戸部屋」の系譜を引き、学生出身者を採らない厳格な指導で知られる
西岩部屋の序二段力士・幹希の里(19)が10月23日、部屋の公式サイトを通じて「SNS上での同部屋への誹謗中傷が自身の家族によるものだった」ことを公表し、〈醜態を3ヶ月間も目の当たりにし、家族と2度と会いたくない、縁を切ろうと思い、区役所へ行き分籍しました〉と綴った騒動。角界関係者の間でも衝撃が走っている。 【写真】溜席の着物美人として知られる女性のワンピース姿!溜席にはノースリーブで「えらい美人」と驚かれた女優・紺野美沙子の姿も
西岩部屋は元関脇・若の里の西岩親方が田子ノ浦部屋から独立し、2018年2月に内弟子2人を連れて台東区内に部屋を構えた。西岩親方は15歳で元横綱・隆の里が師匠の鳴戸部屋に入門。部屋創設3年目の1992年春場所で初土俵を踏んだ。同期にはモンゴル出身の旭鷲山、旭天鵬、高校教師から転身した智乃花などがいる。相撲担当記者が言う。 「横綱・隆の里は“千代の富士の天敵”として知られ、並外れた忍耐力から『おしん横綱』と呼ばれた。その隆の里が育てた力櫻に続く2人目の幕内力士が若の里。弟弟子には稀勢の里(現・二所ノ関親方)や高安がいる。腕力が強く、組んでよし離れてよしという幅広い取り口で、幕内に上がると大関候補といわれていた。 初代若乃花と隆の里という2人の横綱を合わせて“若の里”の四股名をもらったが、ケガに泣かされた。それでも38歳まで現役を続け、19場所連続関脇・小結在位という史上1位の記録を持っている」
張り詰めた雰囲気の独特な指導
西岩部屋は浅草から徒歩圏内にある。新築された5階建てのビルの3階までを相撲部屋として使用。1階は稽古場、2階はちゃんこ場と大部屋、3階は親方の自宅で、関取が誕生した時はリフォームして個室にできる設計になっている。二所ノ関一門関係者が言う。 「稽古場の雰囲気は、師匠の鳴戸親方(元・隆の里)と似ていて独特です。鳴戸部屋は精神注入棒を持ってのスパルタ指導で、ピンと張り詰めた空気のなか、厳しい稽古が続いた。他の部屋との交流は禁止され、私生活も厳しく制限された。 今の時代なので体罰はないが、張り詰めた雰囲気には通じるものがある。他の部屋とは極力関係を持たず、マスコミの露出もほとんどない。鳴戸部屋出身者が師匠の田子ノ浦部屋(元前頭・隆の鶴)や二所ノ関部屋(元横綱・稀勢の里)も同じ匂いがする」 西岩部屋は鳴戸部屋の流れを汲み、学生出身者は採らず中学や高校を出た10代の子供を一から育てる方針を貫いている。親元を離れた力士にとって、親方が東京の父親、おかみさんが東京の母親になり、弟子とともに成長する────部屋を興した時の西岩親方はそう抱負を語っていた。