「黒川元検事長問題」と「西山事件」 結果的に問題の本質を隠してしまうマスコミ報道
民意の非論理的流動性
とはいえ、この問題は安倍政権を批判していればいいというものでもない。 官邸による検察の取り込み問題が賭け麻雀の話に変わったり、沖縄密約問題が記者と女性事務官とのスキャンダルに変わったりするのは、視聴率と発行部数に動かされるマスコミの問題でもあり、そのセンセーションを求める国民の問題でもあり、そこに現れているのは「民意の非論理的流動性」が政治を動かすという日本民主主義の欠点なのだ。また小選挙区制と内閣人事局の制度は、たしかに民意を反映しやすく、元に戻すのもおかしいが、ほどほどの改正が必要だろう。 検察定年延長に対する反対運動のエネルギーは、賭け麻雀で終わるべきではなく、マスコミと国民の自戒と、政治制度改革に向かうべきである。 そういえば沖縄密約の佐藤元首相は安倍首相の大叔父であった。そして密約といえば、祖父の岸信介元首相にもあったのだ。安保改定に賛成する見返りとして次の総理に大野伴睦を推すという密約で、岸はこれをあっさりと裏切って次の総理は池田勇人となったのである。 コロナも政治も「密」はあまりよろしくない。「信なくば立たず」というではないか。権力に固執するより潔い辞任の方が後世に評価が残るだろう。その点は大叔父より、祖父を見習った方が良さそうだ。 問題は、次の政権の在り方である。右から左、左から右へと揺れ動く船が危険であることは歴史が証明している。適度な復原力が必要だ。